ミカサ・アッカーマンから見た景色【side Mikasa】
口づけをしてしまったのは、咄嗟のことだった。理由があったわけじゃない。自然と体が動いて、そうしていた。まるで、エレンを送り出した時のように。
「……ミカサ?」
「ごめん」
目の前で自分のことが好きだと宣った男は、ポカンとした顔で固まっている。さっきまでの逡巡を何もかも忘れてしまったかのような様子で。
私は急いで謝って、体を遠ざけた。
「謝ることねぇけど、いや、今のは、なんってか、その……」
ジャンが、ベッドに腰かけたまま俯く。あまりこういうことに耐性が無いらしく、口の中だけでゴニョゴニョと言葉をかき混ぜていた。
かくいう私だって、慣れているわけじゃない。
さてどうしたものかと、しばらく無言のままジャンを見ていた。
7346