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    空気な草

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    空気な草

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    疲れたので供養。
    何でも許せる人向け。
    ハッピーご都合ロ兄専預かりお兄ちゃんパロな脹虎。
    いちゃいちゃはしてない。
    展開がころころかわる。
    誤字はズッ友。

    BABUBUでもいいから聞かせて 悠仁が異変に気がついたのは宿題を終わらせさて寝るぞとベッドに横たわった時だった。いつもならあるはずのものがない。正確に言うといつもなら起こるはずの出来事が発生していない。
    「脹相からの電話がまだない……」
     今朝から任務で出張中の自称兄からの本日のラブコール……ではなく一日の出来事報告会がまだないのだ。脹相は毎晩必ず任務のない日は直接悠仁の部屋に乗り込み、任務があって悠仁の傍にいることが叶わない日は高専から与えられているスマホを使用して悠仁に話しかけてくる。内容は本日の天気から始まり任務内容、道端で見かけた草花について、いかに悠仁が美しく可憐であるかの説明等等。勿論話すだけではなく悠仁の一日の出来事も根掘り葉掘り尋ねてくる。  
     決して脹相のことが嫌いなわけではないが毎度最低三時間はあるその時間が小っ恥ずかしくて、心の奥がムズムズして悠仁は苦手だった。そんなに毎日話すことなどないだろう、とさっさと終わらせようと努力したのはいつのことだっただろうか。数回努力して悠仁は諦めた。アイツ弟のことなら本当に口が動き続ける、普段の無口はどこに出かけてしまったのか帰ってこい。
    『本当は昔のようにもっと話をしていたいが悠仁の睡眠時間を減らしてしまうのは良くないからな。睡眠不足はお肌の大敵、悠仁のツヤツヤすべすべお肌を害するわけにはいかない。お兄ちゃん我慢するぞ』
     脹相なりに我慢はしているらしい。我慢して三時間か、出来ればもう少し頑張って我慢してほしいと思うし口にだして伝えたがその瞬間この世の終わりかのような絶望顔を見せられたので悠仁は恥ずかしさを耐えることにしたのだ。ちなみに昔から〜という台詞にツッコミを入れたらキョトン顔されたので訂正も諦めることにした。
     備え付けられたベッドに身体を横にしてスマホの通知欄に目を通す。最後の脹相からの履歴は今朝、任務に出発する前に『悠仁からのいってらっしゃい♡』が欲しいと催促されたときのものだ。そこから日付がもう時期変わろうとしている今現在まで連絡が一切ない。もしや怪我でもしたのだろうか、実力のある男だが何が起こるかわからないのが任務だ。しかしそれなら一応親族扱いの自分に何か連絡が来るものではないだろうか。
    「いや別に、連絡こなくて淋しいとか悲しいとかじゃなくって、普段あるものがないから落ち着かないだけだし」
     己以外いない部屋で何度も履歴を確認する自分に言い訳をする。スマホがピコンと音を鳴らしたのはその時だった。
    「きた!」
     横にしていた身体を勢いよく起き上がらせ素早い動きで通知を押してメッセージアプリを起動した。文字を打つのが遅い脹相は普段なら通話なのだが流石に時間が遅いので文字にしたのだろう、そんなこと気にしなくていいのにな、と報告会が苦手だと自負しているとは思えない考えが浮かんだ。
    「なになに……『あしたの夜にはかえる。お腹ひやさないようにふとんをしっかり掛けてねむるように。愛してる、おやすみ』……は?そんだけ?もっとなにか無いの?こんな時間まで連絡してこなかった理由は何だよ!」
     悠仁は毎晩開催されている報告会を苦手だと思っている。本人がそう思っているだけで第三者からすれば毎回楽しみにしているけれど素直になれていないだけであった。
    「……『早く帰ってこいよ』……送信っと……」

     悠仁がさらなる異変に気づいたのは次の日の夜、今夜は来るであろう脹相を今か今かと待ちわびている時だった。たまたま喉が渇いていたので湯呑みにお茶を注ぎ、たまたま小腹が空いていたのでお手製のツマミも用意して座布団の上に正座し扉じっと見つめてノック音が鳴るのを待っていた時だった。 
     スマホを立ち上げると画面に大きく映し出される時刻二十三時五十九分……であったのが次の瞬間午前零時に更新された。
    「……来ねぇじゃん!なんなん彼奴!」
     スマホをベッドに向かって投げ飛ばした。ただ時刻を表示しただけで何も悪いことをしていないスマホはボフン!と一度悲鳴をあげてそのままベッドに沈み沈黙した。
     悠仁は激怒した。本人は認めていないが楽しみにしている毎晩の報告会を二度もサボった自称兄にそれはもう腹を立てていた。
    「帰ってきてるって伊地知さん言ってたのに……なんで来ないんだよ……」
     やはり脹相の身に何か問題が発生しているのだろうか、怒りの感情がすぐに不安へと変化したところで悠仁は部屋で待つことを止めた。会いに行こう。脹相は任務後必ず家入の元で簡単な検査を受ける決まりとなっている。何か問題があるのならまだそこにいるだろうし、いないのなら脹相の部屋に突撃してやろう。机に用意していたお茶とツマミを素早く片付けてベッドに沈んでいたスマホをズボンのポケットに入れ部屋を出て鍵を閉めようとした時、スマホがピコンと音を鳴らした。
     通知確認すると脹相からのメッセージが届いていた。
    『にんむは無事おわらせてきた。だけどじゅれーの影響で風邪なってしまった。こんこんせきがでてる。頭もいたいぞ。とてもさむいぞ。うつすと良くないからしばらく会えないごめんなさい(なき)』
     悠仁は学業の成績は良くないと自分で認めている。教師に呼び出しをくらう程ではないがクラスの平均点を下回ることは多い。そんな悠仁でも瞬時に理解することが出来た。
    「嘘ついてんじゃねーよ!!あと漢字変換出来ないなら(泣)入れんな!」
     脹相のメッセージが嘘の言葉で作られたものだと理解することは悠仁にですら簡単だった。怒りから不安に変化した気持ちは再び怒りとなって悠仁の心を掻き乱す。
    「お前俺の心配はするくせに!自分が体調悪いとき隠すじゃん!『格好いいお兄ちゃんしか見せたくない』とか言ってるじゃん!そんなお前が!風邪ひいたとか!言うかよ!俺のこと舐めてんのかぁっ!」
     怒りで震えている手で無理やり鍵を閉める。ドシン!ドシン!と足音を鳴らして目的地へと向かう悠仁であった。

    カチャ……

    「あいつ本当、兄貴のことになると普段と性格変わるよな……」
     悠仁の怒りの声が最初から最後までしっかりと聞こえていた隣の住人、伏黒は辺りに誰もいなくなったことを確認するとひっそり呟き、直ぐに部屋に戻るのだった。

    「むかつく……!むかつく……!むかつく……!」
     悠仁の部屋から家入のいる部屋までそれなりに距離がある。その距離を大股で素早く歩いてどんどんと縮めながらこの場にいない相手への苛立ちを言葉にしていく。普段の自分ならこんな幼稚な真似はしない筈なのに、相手が脹相であるだけで自分の行動はここまで変わってしまう。
    「俺のことベッタベタに甘やかしてくるくせに……!俺には甘えねーのかよ……!あー!もう!こんなこと考える自分にも腹が立つ!一発殴る!兎に角一発殴る!……ほんとに怪我してたら、今度にするけど……」
     大股だった足の振り幅が徐々に短くなっていく。ドシンドシン……ドスドス……スタスタ……ぽてぽて……ぴたり。足の動きが止まった。
    「俺、兄弟いねぇからわからんけど……お互いに助け合うのが兄弟なんじゃねぇの?俺が間違ってんの…………?ちょーそーのばか……きらいだ……っ!」
    「ーーっ!」
    「ん?……脹相……」
     息を呑む声が聞こえた気がして俯いていた顔を正面に向けるとそこには今の今まで会いに行こうとしていた人物がいた。頭上にそびえる二つの束ねられた髪から足先まで、上から下へとじっと観察することで悠仁は自分の考えがある程度は正解していたのだと確信する。
    「風邪ひいて、こんこん咳出て頭が痛くて寒くて辛いんじゃねぇの?元気そーじゃん?家入さんにもう治してもらったん?違うよな?連絡来てからまだ十分も経ってない。流石に早すぎるよな」
    「……」
    「怪我もしてなさそうなのは良かったけど……なぁ何があったの?」
    「……」
    「なんで俺にちゃんと教えてくれないの?昨日、いや一昨日か。一昨日何かあったんだろ?じゃなきゃお前があんな文だけで終わらせるなんて変だし。嘘ついてまで隠したいことってなんだよ?」
    「……」
    「俺が聞いてんのに教えてくんないんだ…………はぁ、いいや、もう」
    「!」
    (何メンヘラ彼女みたいなこと言ってんだろ俺。付き合ってるわけでもねぇのに。なんか、大丈夫そうな脹相見たら安心、ではないけど……すんげぇダサいことしてるな、て気づけたわ……)
    「意地の悪いこと言ってごめん、ちょっと頭冷やしてくるわ。任務お疲れ様、おやすみ……?」
     踵を返し来た道を歩き始めようとすると腕がぐいっと引っ張られる感覚。視線を向けると脹相の大きな手が悠仁の腕を掴んで引き留めていた。
    「何?離してほしいんだけど……」
    「……」
    「さっきからずっと無言でさ、なんなん?喋れない呪いにでもかかった?」
    「……ぶ……」
     脹相の口から声が僅かにだが聞こえた。喋れない呪い説もハズレのようだ。では一体何だというのか、昨夜から良くない頭をフル回転中の悠仁の頭はそろそろ限界で煙をあげてしまいそうだ。あげてしまいそうだったが、それは杞憂に終わる。
    「……ばぶぶ……ばぶばぶばぶぶばぶば……」
    「………………は?」
     脹相の謎の発言に煙を上げる前に悠仁の脳は緊急シャットダウンした。

       ※※※

    「歳相応の発言しかできなくなる呪い?」
    「ばぶぅ……」
    「脹相、お前は少し黙っていてくれ。私が説明する」
    「ばぶぶばばぶばぶぶぶぶばば!」
    「脹相、俺からも頼むわ何言ってるかサッパリわからん」
    「ばぶぶーー!!」
    「あ、今のだけ分かったわ。俺の名前呼んだだろ?じゃなくて!家入さん説明お願いします!」
     脳の緊急シャットダウンの後すぐに再起動をし動きを再開させた悠仁は脹相を連れて家入のもとに来た。家入も悠仁が来ることは予想していたのだろう。部屋に入ってきた悠仁に予め用意されていたらしい椅子を渡して座るように促し、脹相の身に起こっている現象について説明を始めるのだった。
    「祓った呪霊が消滅する寸前に呪いをかけたらしくてな、それに当たってからずっと『ば』『ぶ』しか発言できなくなったらしい。大笑いしながらこいつを連れて帰ってきた五条が言うんだ、間違いないだろう」
    「脹相って、百五十年は生きてるし、受肉元も大人じゃないの?」
    「受肉してから、のカウントなんだろう。つまり零歳だ。むしろこれだけ流暢にばぶばぶ言えることがおかしい」
    「ばぶばぶぶばぶばば!」
    「「煩い」」
    「ばぶぅ……」
     大好きな弟に煩いと言われて立派な髪の毛がみるみる萎れていく。悠仁はそんな脹相の様子を目の端で確認しつつ家入との話を続けていく。
    「脹相が『悠仁にこんな情けない姿見せたくない!』と筆談しながら暴れてな、なら自分で誤魔化しとけと言ったんだ。まぁ、メッセージ見させてもらったがあれで誤魔化せるとは思えなかったが」
    「そっすね……なんか、すんません」
    「気にするな、自然に治るのを待つしかない呪いだから私は何もしていない。もう夜遅い、早く帰って寝ろ。私ももう寝る」
    「うっす!ありがとうございました!脹相!帰るぞ」
    「ばぶばぶ」
     滞在時間数分の診断が終わり、二人が部屋から出ていく。ここでようやく家入の本日の業務は終了となり家入はふぅ、と盛大にため息を吐いたのだった。

    「ばぶぶ……ぶばばぶ」
    「何?ばぶぶ以外俺わかんねぇよ」
    「ぶば……」
    「だからわからんて……とりあえず俺の部屋行こ?お前一人にしておくのあれだし」
    「ばぶ……」
     薄暗い廊下をゆっくり二人で歩いている。行きはあれ程乱れていた悠仁の心は大分落ち着いている。
    「脹相、ちょっと俺今から勝手に喋るから」
    「ばぶ」
    「最初はさ、お前が毎日毎日俺の心配してるくせに俺には心配させてくれないのかよ!てすっげぇむかついたんだけど、今はそこまでむかついてないから。流石にそんな状況になったら隠したいって気持ちもわかるし。わかるけど、でもやっぱり教えて欲しいとも思っちゃうんだ。ちゃんと心配したいからさ、今度からは教えてよ。『兄貴』だからって、格好いいところしか見せちゃいけないとかないだろ、全部見せてよ」
    「!ばぶぶ……ばぶ……?」
    「……嫌いって言って、ごめん。聞こえてたよな?嫌いじゃないよ」
    「!!ば……ば……ば……!」
     あ、まずい。悠仁は悟った。これから起こるであろうことを。明日朝一で高専中の人達に謝罪しなくてはならなくなるであろうことを。止めなくては、と思っても止まらないことも同時に悟った。悠仁が今出来ることは両手を己の耳に当て、少しでも己の鼓膜を死守することだけだ。
    「ばぶぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!ばぶっ!ぶぶばぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
     高専中に響き渡る低い声の赤子の泣き声。先程のように『煩い』と叱らなくてはと思いつつも。
    「ふはっ!俺も好きだよ」
     何を言っているかわかってしまったので気持ちを返すことを優先させた悠仁であった。
    「『ばぶぶ』でいいからさ、昨日と一昨日聞けなかった分お前の声沢山聞かせてくれよ」
    「ばぶぅ♡」
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    空気な草

    DONE【脹虎】
    転生ネタ。いちゃいちゃとかはありません。
    ※原作に登場しないキャラが少し喋ります。※
    ※色々ご都合なので何でも許せる方向け。※
    最初の愛は私達から かつて呪霊と人間の混血として産まれた男がいた。九人の弟の兄として産まれた男がいた。友のような存在であった女性に『人として生きろ』と言われた男がいた。そしてその言葉通り、多くの闘いを経験した後、愛する末弟と残りの人生を過ごし数十年後に肉体の限界を迎えて死んだ男がいた。
    「いい天気だ、弟達よ!しっかり楽しみつつ、悠仁を見つけるぞ!」
    「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
     そんな波乱万丈な人生を駆け抜けた男は今、八人の弟達と共に動物園にいる。何処かで生きているであろう末弟を見つけ出すために。

     脹相は十歳の誕生日を迎えた日にかつての記憶、俗に言う前世の記憶を取り戻した。丁度ケーキに灯った蝋燭の火を吹き消す瞬間だった。『フーッ!』と勢いよく全ての蝋燭の火を吹き消すつもりが、数十年分の記憶、特に色んな意味で愛する末弟悠仁との記憶が蘇ったことにより『ゆうじー!!』と今世の両親からしたら全く身に覚えのない人名を叫びながらの吹き消しとなった。火だけではなく十本の蝋燭本体とケーキの上に飾られていた苺が全て吹き飛んだ。勿論全て残すことなく脹相は食べた。食べ物を粗末にしてはいけないと今世では両親に、前世では悠仁に言われたからである。
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