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    ymtwh2

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    最近書いてる恋人の🍊🌳(🍊🌳🍊?)小説の冒頭2000文字
    🌳さんと🍎🐉、🦈先輩の会話

    🌳さんの過去捏造
    🍊さんは出てきません
    同軸リバにする予定なので、左右固定の方は見ない方が良いかもしれません。

     ああ、今日もいい風呂だった。硬めのソファーに腰を下ろせば、この一週間も無事に終わったのだと、ふう……と深い息が漏れる。火照った身体の表面からふわふわと熱気が蒸発していく感覚。天井を見上げれば、うんと高い位置でクルクルと回るシーリングファンが冷たい空気をかき混ぜていた。

     ピ、ピ、ピ、と機械音。ビジネスバッグから取り出したビデオカメラの、小さな液晶モニターをタップする。手ぶれ補正はアクティブ、画素サイズは4K。音声ノイズ低減機能もオンになっている。バッテリーは……ヘタっているだろうが多分問題ないだろう。

     このカメラは5年ほど前、同僚兼友人の男から「アオキもVlog始めてみないか?」と誘われるがままに購入したものだ。当時、営業マンの仲間内でビデオブログが流行っていた。彼の誘いに素直に応じたのは至極単純な理由。休日を充実させられる趣味を探していたからだった。

     あの頃はうんざりするほど中身のない休日を過ごしていた。というのも、チャンプルジムに配属されるにあたって男遊びをピタリと止めたからだ。ぽっかりと空いたスケジュールを埋めるべく、新たに一人旅を趣味にしようと思い至った。くたびれた中年男のお気楽グルメ旅。旅行先で動画を撮り、気が向いたらポケスタグラムで友人に共有する。なるほど、これなら趣味にできそうだと思った──のだが、結局のところ仕事に追われ、それどころではなかった。

     ようやく仕事が落ち着いてきたかと思えば、流行が過ぎてなおVlogコミュニティに留まった人たちは、皆“意識高い系サラリーマン”だった。自己表現を目的に動画を撮る“社交的”な集団とは波長が合わない。申し訳ないが彼らと同類だと思われるのは勘弁願いたかった。そうして可哀想なビデオカメラは、つい先日まで埃まみれの旅行カバンの底に押し込まれていたのであった。

     それがまさか今日、こんな用途で使われることになろうとは。己の掌に収まるビデオカメラは手垢を拭き取られ、なんとも嬉しそうに輝いている。この子もお気の毒に。……まあ、ハッサクさんに撮影許可を取れればの話だが──

    「プリュ?」

     音に釣られたのだろうか。どこからか現れたアップリューは、ふよふよと飛びながら自分の肩越しにビデオカメラを見つめている。

    「……これが気になりますか」

     右手に持つ機械を指差し問いかけると、アップリューはリンゴの皮の翼を元気よくはためかせた。ビデオカメラなんてそれほど珍しいものでもないだろうに。……いや、どうだろう。今や安価なデジタルカメラよりも、スマホロトムで撮影した写真の方が鮮明に写るのだ。ビデオカメラを持っている人の方が稀かもしれない。
     ならば期待に応えてあげようと、バリアングル式のモニターを180度くるりと回す。レンズをアップリューに向けてやると、彼女はモニターに映る自身に驚いたのか、しきりに目をパチクリさせた。

     ガチャンと勢いよくドアノブが回る音。「フカフカ~」とリビングに入ってきたフカマル──フカマル先輩は、いつもと同じように、寝る時間になってもポケモン専用部屋に居ないドラゴンたちを探しに来たのだろう。
     彼はビデオカメラで遊んでいる自分たちを見つけると、キラリとつぶらな瞳を煌めかせた後、ブンブンと頭を振った。

    「……フカッ」

     寝る時間だぞ、とアップリューを戒めるフカマル先輩だが、その視線は自分の手元とアップリューの方向を行ったり来たりと忙しそうだ。……気になるんだろうな。あまりにも分かりやすい挙動に思わず口元が緩んでしまう。
     彼らの好奇心に富んでいるところも、生真面目であるがゆえに変なところで自制してしまう性格も、この家の主とよく似ていた。

    「あの、撮ったものを後でハッサクさんに見せようと思うんですが、フカマルさんも写っていきますか」

     “ハッサクさんに見せる”と言えば、フカマル先輩は「少しだけだぞ」というように、ぱかりと開けていた口を閉じると、とびきりの決め顔を披露してみせた。実は先程からカメラを回し続けているのだが、機械に疎いのだろう、ふたりは気付いていないようだ。それどころかフカマル先輩に関しては、きっと写真撮影と勘違いしている。

    「……撮りましたよ」
    「フッカ!」

     録画ランプが消えたのを確認したフカマル先輩は、作っていた表情を崩すと、ここへ何をしに来たかを思い出したらしい。こちらに向かって「スヤフカ~」と短い腕を大きく振った。

    「フカマルさん、アップリュー、おやすみなさい」
    「プリュ……」

     リビングに入ってきた時より数段ご機嫌になった彼は、まだまだ遊び足りなさそうなアップリューを連れて、ポケモン専用部屋へと去っていった。

     静かになった部屋で一人、ごろんと寝転がり目を瞑る。脚を伸ばしてもまだまだ空きのある四人掛けのソファーは、金曜日の浴後、ハッサクさんが風呂から上がるのを待つ自分の定位置だ。
     それにしても、このソファーもなかなか生地が柔らかくなってきたと思う。これの前にあった若葉色のファブリックソファーは、自分が初めてこの家に招かれた時に粗相をして汚してしまった。




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