水鏡に言 友人で、なくなってしまってもいいと思った。そんなのは、鏡にでも向かって言ったら良かった。
観る人のために整えられた広い石畳ではなく、ミナキの白い革靴は古い景観のジムを囲む裏手の砂利道を踏んでいる。ざくざくとした音が耳を刺し、血ののぼった頭を痛める。
いいんだよ、僕のことは。昂った脳が先の会話をリフレインして、再生されたマツバの声にびくりと思わず足を止める。足音がやむと耳元に血の音が際立った。どっどっと刻むリズムに夕暮れの町内放送が和する。
──次回、大講堂での講演はジムリーダーを招待し──
五時を告げる割れ気味の鐘と、単語を区切った人の声。地元のイベントの報せが入る。今日話したのはこの件だった。
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