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    no8ki1

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    no8ki1

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    アグネスとアスシンのギャグ。
    種自由から数年後くらい。
    雰囲気で読んでね。
    アグちゃんがシンルナ破局に言及してます。

     オーブ軍との合同軍事演習は万事つつがなく進行している。折り返しを迎えた今日、アグネスは予定より早めに昼休憩に入ることが出来た。昇進して隊を率いる立場になってからというもの行程表通りに物事が進むこともなかなか無くて、部下に休みを取らせながら自分は調整役として奔走するなんてことはいくらでもあった。ひと息つける今は奇跡のようなもので、この演習の責任者による的確で余裕のある計画策定能力には頭が上がらない思いだ。
     ザフト兵にも出入りが許されているオーブ軍営食堂に向かう足取りも軽い。ここで出される地球産の魚や野菜がふんだんに使われたメニューはどれも美味で、プラント高官の娘であり舌の肥えたアグネスもすっかり虜になっている。月前線に配置されているギーベンラート隊へオーブとの合同演習に参加するよう指令が下ったときは気狂いを起こしたとしか言いようのない上層部の決定を恨みに思ったものだが、前線警備をよその隊に任せてこの昼食にありつけると考えればなかなか悪くないかもしれない。ザフトの月司令基地の食堂は正直イマイチなのだ。
     今日はどれにしようかな、とトレーを片手にメニュー表と睨み合っていると肩に軽い衝撃を食らう。
    「あ、すいませ…」
    「シン!?」
     アグネスにぶつかってきたのはアカデミー時代の同期で同じ隊で戦ったこともあるシン・アスカだった。アグネスの大親友のルナマリアの元カレでもある。
     田舎くさい子どものくせに周囲に認められて受け入れられるシンはアグネスにとって気に食わない人間だった。落ちこぼれのアカデミー時代から彼には何度も辛く当たって、シンもそんなアグネスに気後れしていたようだった。今は活動を停止しているコンパスで同じ部隊になった時もお互いに必要以外は接触せずにいたので直接的にはよく知らないままだ。コンパスへの出向を終えザフトに復帰したアグネスはその後のシンの動向をルナマリア経由でしか知らないし、数年前に彼らが別れてからは存在すら忘れてしまっていた。
     モルゲンレーテ社のジャケットを羽織ったシンは最後に会った数年前より少し背が伸びて男性らしい逞しい身体つきになっている。しかし相変わらずどこか垢抜けないまま、アグネスの琴線には少しも触れない。名前を呼んだまま声を発さないアグネスを怪訝そうに伺う瞳は真っ直ぐで、そこは変わらないかと思う。
    「……アンタもこれからランチ?付き合いなさいよ。積もる話もあるし」
    「え…っ!?………あぁ、うん」
     大袈裟なくらいにーミレニアムの副長だったアーサー・トラインには劣るけどー驚きの声をあげたシンを睨みつけると、彼は程なくして曖昧に頷いた。たしかにコンパスにいた頃までのアグネスならシンなんかを昼食の席に誘うことなんてなかっただろう。彼の反応はもっともだ。しかし今のアグネスにはどうしてもルナマリアの大親友として彼に問い詰めなくてはならないことがあった。
    ***
    「どうして?ルナマリアみたいな良い子逃したらあんたに次はないのに。なんで追いかけないの?振られるのが怖いの?」
    「いや…その…」
     席に着くなり始まったアグネスの口撃にシンはタジタジだ。あまりにも一方的な展開に周囲が聞き耳を立てていたのは最初のうちだけで、シンがあやふやな返しを続けているとアグネス以外はすぐに興味を失い、すっかり昼時の喧騒に溶け込んでしまっている。
    「あの子だってあんたにどーしてもって言われたら考え直してくれるわよ。そのくらい大きい器の持ち主だって知ってるでしょ」
    「う、うん…でも俺もう付き合ってる人いるから」
    「それも知ってるけど。妥協で選ぶ相手なんて碌なもんじゃないわよ。私が言うんだから間違いない」
     事情聴取がはじまって早数十分、シンが漏らした的を得ない証言を繋ぎ合わせて推測するとルナマリアとの別れの原因は今のシンの恋人にあるようだ。シンもザフトでそれなりに名を馳せていたのだし、ルナマリアと別れてまで付き合う相手ならそれ相応の立場や魅力のある者に違いない。しかしアグネスの決して狭くはない情報網にその相手はこれまで引っ掛かってこなかったのだ。それもそのはず、相手はどうやらオーブの人間らしい。シンはそのひとに付き合って先ほどまで併設しているモルゲンレーテの工廠に顔を出していたらしい。シンの纏うえんじ色のジャケットに得心が行く。
     おそらくメカニックだろう。ザフト屈指のモビルスーツパイロットのシンを射止めるくらいだからよほどの美人だろうし、頭脳もそれなりのものかもしれない。だが世界中どこを探したってルナマリア以上の女性はいるはずがない。それもシンなんかを相手にする度量の持ち主は。シンは騙されているに違いないのだ。
     先日会ったルナマリアは未練も無いようで新しい恋を探しているようすだったが、いつか裏切ったはずのアグネスに手を差し伸べてくれた通り情に篤い彼女のことだから今もシンを心配しているだろう。シンが女に騙され破滅に向かおうとアグネスにとっては知ったことではないが、きっとルナマリアは悲しむ。そんなことは到底受け入れられなかった。
     そうしてアグネスがさらに口を開こうと前のめりになったときだった。
    「俺は妥協で選ばれたのか?」
     艶やかな甘い声が降って来て向かいのシンが顔を引き攣らせる。どこか冷たさを纏ったそれにアグネスも遅れて声のした方へ視線を移す。
    「げっ」
    「アスラン・ザラ!?」
    「割って入って申し訳ないが、シンがルナマリアを振ったんだ。こいつ、俺のことが大好きだからな」
    「えっ、嘘、マジで!?」
     頭を抱えたシンと、白い軍服に身を包んだ大戦の英雄アスラン・ザラとを、アグネスは何度も見比べた。まさかシンの相手がこの男だったなんて思いもしなかった。驚きに言葉を発せずにいるとアスランはその端正な顔に完璧な笑顔を浮かべながらアグネスに手を差し出した。慌てて立ち上がって敬礼してからその手を取る。
    「挨拶は必要ないようだな。アグネス・ギーベンラート大尉。今回の演習での活躍は耳にしている」
    「え、ええ……」
     物腰は柔らかく人当たりもいい。もちろん容姿もすこぶる良い。だけど。アグネスは手を握る力の強さにたじろいだ。女だから多少の加減はされてるのだろうけれどあまりにも悪意がありすぎる。すぐに放された手を背に回して払いながら「シン、あんたまた騙されてんじゃないの?」 とため息を吐く。
    「またってなんだよ…」
    「だって、おかしいわよ。ルナマリアみたいな最高の女からこんなガワは良いけど性根の悪そうな男なんかに鞍替えするなんて。振られたショックで頭沸いちゃったの?」
     口元に手を添え声を潜めてみるがコーディネイターは耳が良いのであくまでこれはポーズだ。やはり一言一句漏らさず聞いていたらしいアスランは皮肉めいた声色で呟く。
    「さすがシンの同期だな。切れ味が鋭い」
    「いや、俺だっておかしいとは思ってるよ!相手がこのアスランなんだって…」
    「えっ」
     呆れてみせたアグネスの言葉にシンは思わずといった様子でテーブルに勢いよく手を叩きつけながら立ち上がった。視界の隅でアスランの余裕の表情が崩れる。
    「でも、なんか、その…この人と会うたびに気になって他のこと手に付かなくなるし、会わないでいても思い出しちゃうし、最近特にもう駄目で…」
    「シン………」
     最初は威勢の良かったシンも次第にしどろもどろになり、いつの間にかすぐ隣に陣取ったアスランは優しい眼差しで彼を見やる。アグネスは薄寒い展開に両腕を抱き締めながら声を上げる。
    「それ変な洗脳とかじゃないの!?ほら、昔、ヤマト隊長が戦闘中におかしくなったことがあったじゃない!あれと同じよ!そうじゃなきゃシンがルナマリアを振るなんてあり得ないわ!シンに何したのよあんた!」
    「何をしたというかナニをしたというか」
    「あんたもう黙ってろ!」
     アグネスが詰め寄るとアスランは素知らぬ顔で言い放つ。今度はシンが声を荒げる番だった。
    「だいたい何しに来たんだよ!もう打ち合わせは終わっただろ!」
    「食事に誘おうとしたのにいつの間にかいなくなってるしようやく見つけたと思ったら女性と二人きりで親密そうにしてるし」
    「たまたま会った同期とメシ食ってただけですけど!」
    「シン、お願いよ、正気に戻って……ルナマリアの元カレで同期のあんたが今はホモだなんて私、気持ち悪くて吐き気がするわ」
    「お前も相変わらず差別と偏見が服着て歩いてるみたいな性格してるよな…」
     アグネスとアスラン、双方の主張にそれぞれ返してからシンはずるずると椅子に座り込んだ。大きくため息を吐いてフォークを手に食事を再開する。我関せずを決め込むシンを一瞥しアグネスは手入れの行き届いた人差し指をアスランに向ける。
    「とにかく、私は認めないから!」
    「きみに認められなくともシンは俺と添い遂げるが…」
    「うるさいうるさい!演習ではせいぜい背後に気をつけることね!」
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    no8ki1

    DONEアグネスとアスシンのギャグ。
    種自由から数年後くらい。
    雰囲気で読んでね。
    アグちゃんがシンルナ破局に言及してます。
     オーブ軍との合同軍事演習は万事つつがなく進行している。折り返しを迎えた今日、アグネスは予定より早めに昼休憩に入ることが出来た。昇進して隊を率いる立場になってからというもの行程表通りに物事が進むこともなかなか無くて、部下に休みを取らせながら自分は調整役として奔走するなんてことはいくらでもあった。ひと息つける今は奇跡のようなもので、この演習の責任者による的確で余裕のある計画策定能力には頭が上がらない思いだ。
     ザフト兵にも出入りが許されているオーブ軍営食堂に向かう足取りも軽い。ここで出される地球産の魚や野菜がふんだんに使われたメニューはどれも美味で、プラント高官の娘であり舌の肥えたアグネスもすっかり虜になっている。月前線に配置されているギーベンラート隊へオーブとの合同演習に参加するよう指令が下ったときは気狂いを起こしたとしか言いようのない上層部の決定を恨みに思ったものだが、前線警備をよその隊に任せてこの昼食にありつけると考えればなかなか悪くないかもしれない。ザフトの月司令基地の食堂は正直イマイチなのだ。
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