初恋の瞬間「遠征に出ていた訓練兵たちが、本日中に帰還予定だそうだ。」
書簡を淡々と整理しながら、先輩騎士がこともなげに呟く。
「そうですか。」
平静を装って返事をしながらも、ランスロットは内心浮足立つ心を止められなかった。
野営訓練も兼ねた長い遠征。訓練兵たちが王都に帰ってくるのはおおよそ半年ぶりだ。その中にはヴェインもいる。
幼い頃は毎日ずっとヴェインと一緒に過ごしていたが、ランスロットが黒竜騎士団に入団してからはそうもいかなかった。ヴェインが暮らす村は王都からあまりに遠く、手紙のやりとりすら一週間に一往復がやっとだったのだ。
数年経ち、ヴェインはランスロットを追いかけて王都へやって来たが、同じ騎士団所属といえど立場が違う。副団長と一兵卒では行動も居室も噛み合わない。特にランスロットは多忙で、せっかく顔を合わせたのに挨拶をするのが関の山、ということも少なくなかった。
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