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    sekkakunara

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    ※サイラスの生い立ち捏造。フォロワーさんの話していた『実は幼少の頃に両親を亡くして知人に引き取られていたとしたら(超要約)』というネタを許可もらってベースにしています。強めの捏造ですが基本的にオルサイが仲良くしてるだけです。

    ##オルサイ

    【オルサイ】彼の歴史を知った日八人と一匹での旅は、常に自分に都合がいいとは限らない。自分の目的のために仲間に合わせてもらうこともあるのだから当然だろう。そこが本来なら足を向けたくない場所だとしても、仲間のためなら赴くことは厭わない。オルベリクがそうであるように、他の面々もまた同じように考えているはずだ。
    一行が足を踏み入れたのはフラットランド地方最大の都市、アトラスダム。フロストランド地方へと向かうため、中継地点として選んだ街だ。ここなら交易も活発で雪国用の装備も整え易いだろうし、休む宿の確保も比較的容易いと言える。

    「じゃあ、まずはちゃっちゃと雪国装備の調達ね」
    「不用品もあるから、一緒に処分したいところだな」
    「そうね、持ち歩くのも邪魔だし。アーフェン、調合素材はどう?」
    「補給しといたほうがいいかもな。素材は良し悪しもあるし、自分で選ぶぜ」

    いつものように不足しているもの、反対に余っているものをトレサが手早く取りまとめてゆく。普段ならそこに割り込んで嬉々として話を広げそうな男は、珍しく黙り込んでオルベリクの影に隠れるように歩いていた。ちらりと視線をやっても、学者のローブをしっかりと着込みフードを目深に被ったサイラスと目が合うことはない。
    サイラスは事実上の国外追放を受けアトラスダムを発った身だ。不用意に立ち寄ればまた要らぬ疑惑の火種を生むかもしれないとこぼしていたが、結局この街を訪れることには反対しなかった。代わりに、街にいる間は顔を隠すことにしたらしい。

    「いつものように役割分担しましょ。まずは宿を確保する人、それからあたしと装備の調達をする人、あとはアーフェンと消耗品の調達をする人ね!」
    「では、俺は装備の調達を手伝おう。荷運びには人手があったほうが良いだろう。お前はどうする、サ――」
    「しっ、名前を呼ばないでくれ」

    小さな声ながらも鋭く制され、口を噤む。尾行されていると知った時は泳がせると宣ったほど肝が据わっている男がここまで念を入れるのは、正直に言うと意外に思える。だが噂とはいえ一国の王女との恋愛沙汰ともなれば、自分の問題だけでは済まない話だ。神経質になるのも当然かも知れない。

    「……私は宿で部屋を確保しておくよ。ただ顔見知りがいるかも知れないから、出来るならもう一人同行してもらいたいところだ」
    「それなら、私が一緒に行こうかしら。あなたの代わりに視線を集めてあげるわ」
    「ああ、プリムロゼ君が一緒にいてくれるのなら心強いよ」
    「ではわたしは消耗品の調達のお手伝いをしようと思います」

    そうして役割を決めると、各々散り散りに動き始める。反対方向に歩いていくローブの背中を見送って、オルベリクはトレサの後を追った。

    ***

    日暮れ前には無事に装備や消耗品の調達を終え、一行は酒場で食事をとった。食事の最中もサイラスは顔を隠したまま口数は少なく、後はみんなでゆっくりしてくれ、と言い残して早々に席を立った。その『みんな』にはオルベリクも含まれていることは分かっていたが、それでも自分も席を立ち彼の後を追った。
    そして碌に言葉を交わすこともなく宿の部屋に入る。宛てがわれた二人部屋はそれなりに広く、壁紙や調度品の状態から見てもまだ真新しい雰囲気だった。サイラスは深くため息をつくと、ようやくフードを下ろしてその整ったかんばせを蝋燭の火のもとに晒した。

    「全く……あなたまで早く戻ることはなかったのに。私のせいで、食事時まで忙しなくさせてしまってすまなかったね」
    「いや、お前のせいではない。俺が勝手にしたことだ」
    「だが……それでも私を気遣ってのことだろう?」
    「それはどうだろうか」

    不思議そうに首を傾げるサイラスに歩み寄る。互いの間の距離が拳一つ分もないほど近付いても、サイラスは自ら退こうとはしなかった。無防備な彼の背中に腕を回して抱き寄せる。

    「……早くこうしたかっただけだという、身勝手な都合かもしれんぞ?」
    「ふふ。仕方ないな……そういうことにしておいてあげるよ」

    応えるように、オルベリクの背にも腕が回される。旅の中で二人は恋人となり、今や身も心も通じ合わせた仲だった。一人別行動を取らせるのが忍びなかったこともあるが、こうして触れ合いたかったというのもまた紛れもない本音だった。オルベリクの肩口に顔を埋めた彼の髪を優しく指で梳き、名残惜しく思いながらも一度体を離した。

    「さて、俺は剣の手入れでもするとしよう」
    「そうするといい。せっかく時間もあることだから、私も少し旅の出来事をまとめるとしようか」

    部屋に一対ある机と椅子はサイラスに譲り、オルベリクは寝台に座る。夜も長いのだから急いで事に及ぶこともあるまい。まずはそれぞれのすべきことを終えてから、就寝準備をすればいい。
    暫くはサイラスが紙にペンを走らせる音と、オルベリクが剣の手入れをする音のみが部屋に響いていた。手入れを終えてふと顔を上げると、サイラスは顎に手を遣り考え事をしているようだった。だからオルベリクは本当に何気なく、日常会話の延長線でその疑問を投げかけた。

    「……そう言えば、久々に生まれ故郷に戻ったんだ。実家に顔を出さなくていいのか? かなり急に旅立ったんだろう?」
    「ああ……顔を出す相手はいないからね。育ての親ももう十年近く前に亡くなっているんだ」
    「そ、そうなのか。……育ての親?」
    「おや、話していなかったかな。私は子供の頃、オルブライト家に養子として迎え入れられたんだ」

    さらりと告げられた言葉にオルベリクは目を白黒させた。仲間内でもサイラスとの付き合いは一番長いが、思えば家族の話をしたことはなかった。それは家族どころか故郷を失ったオルベリクを慮って触れないのかと思っていたが、もしかするとサイラスにとっても話し辛い話題だったのかもしれない。
    内心動揺するオルベリクに対してサイラスは冷静だった。椅子をこちら側に向け、腕を組む。

    「……驚かせてすまない、隠すつもりはなかったんだ」
    「いや、俺の方こそ聞かなかったからな。……その、差し支えがなければ、俺が出会うまでのお前の話を聞かせてくれないか?」
    「ああ、もちろん。あまり面白くない話になってしまうかもしれないが、聞いてくれるかい?」

    頷くと、サイラスは柔らかく目を細めた。その優しげな表情を見て、少なくとも過去を嫌悪している訳ではないのだと分かりほっと胸を撫で下ろした。
    ――そうしてサイラスは静かに語り始めた。彼の生まれは確かにこのアトラスダムだが、生家はオルブライト家とはまた別だそうだ。両親は穏やかで、貧しかったが生活はなんとか回っていた。しかしサイラスが七歳になる頃、突然両親は他界した。大通りを走っていた馬車の暴走に巻き込まれた事故死だったそうだ。

    「そして両親の葬儀に現れたのが、母の遠縁にあたるクライヴ・オルブライト――後に私の養父となる男だった。ここまではいいかい?」
    「ああ。……その養父とは、どんな人物だったんだ?」
    「彼は若い頃に妻を亡くしたそうで、家には美しい女性の絵が飾られていたよ。愛妻家だったために後妻は取らないと決めていたが、跡継ぎがいないことを親族からかなりうるさく言われていたらしい」
    「なるほど。そこで遠縁とは言え、血の繋がりがあるお前に白羽の矢が立った……ということか」

    オルベリクが導き出した回答はサイラスにとって満足のいくものだったらしく、満点だと言わんばかりの明るい笑顔で頷かれた。

    「養父はアトラスダム王立学院に勤める学者だった。多忙なようで私の世話は殆ど使用人任せだったが、悪い人ではなかったよ。書斎に勝手に入って本を読んでいると怒るどころか、次の週には私のために背の低い本棚を設え、子供でも比較的読みやすい本を用意してくれるような人だった」
    「……大人でも苦労するような活字本を読み漁る、子供の頃のお前の姿が目に浮かぶようだな」
    「はは、昔から読書が趣味でね。もう想像はついていると思うが、私をアトラスダム王立学院に入学させ、学者の道を志す入り口を作ってくれたのが養父だった。尤も彼は口下手で、話術を学んだのは学院の教師からだったが……」
    「だが、その養父ももう亡くなっているのだろう? それも突然だったのか?」

    サイラスは小さく、首を縦に振った。
    養父は寡黙だったが関係は悪くはなく、そしてサイラス自身も持ち前の探究心を遺憾なく発揮して勉学に励んだ。そんな日々が終わったのは、二十歳を過ぎて数ヶ月後のこと。その別れもまた、サイラスにとっては青天の霹靂だったらしい。

    「……心臓発作だった。彼が倒れたと報せを聞き、駆けつけた時にはもう」
    「……すまん、辛いことを思い出させたか」
    「いや、いいんだ。あなたには聞いておいてほしかったから。……こうして、私は再び家族を失ってしまったというわけだ」

    淀みなく語られた話を聞き、オルベリクはサイラスと初めて出会った時のことを思い出していた。アトラスダムを発ち単身コブルストンを訪れたサイラスは、顔立ちだけではなく格好も小綺麗で立ち振舞も洗練されていた。それを見た自分は、都会の苦労知らずの坊っちゃんだという印象を抱いたのだ。

    (……そんなことを考えていた自分が恥ずかしいな)

    もちろん共に旅をする内にその考えは間違いだったと悟ることになるのだが、こうも複雑な生い立ちを抱えていたとは想像にも及ばなかった。
    オルベリクが黙り込んでいるとサイラスは腰を上げ、隣に寄り添うように寝台に座った。腰を抱き寄せると、まるで甘えるようにオルベリクの肩に頭を付けてくる。サイラスが時折見せる無防備な仕草には弱く、胸の辺りがそわそわして落ち着かなくなる。

    「……話してくれてありがとう。お前のことをもっと深く知ることができた」
    「そう思ってくれるのなら良かったよ」
    「……家族がいないことを、寂しいと思うこともあっただろう?」
    「そうだね。けれど同時に、そういう繋がりを持つことを怖いと思った時期もあったよ。いずれまた置いていかれるのではないかと思うと……」

    サイラスは顔を僅かに俯かせていて、その表情は窺えない。けれど物憂げな声色から、未だにその恐怖は彼の心に深く根付いているのではないかと思った。温もりを分け与えるように優しく背を擦り、語りかける。

    「……サイラス。知っての通り俺は頑丈だ。ちょっとやそっとのことでは、お前の傍から離れない」
    「分かっているよ。……あなたが絶対と言わないこともね。あなたはいざとなれば、私や仲間のために命を賭すことを厭わないだろう」
    「それは……すまん」

    全く以てサイラスの言う通りだ。置いていかないと言ってやれたらいいのかもしれないが、仮に目の前でサイラスに危険が迫っていたら、自分の命など二の次にして飛び出してしまうだろう。その場しのぎの誤魔化しを口にする気はなく、正直に謝るとサイラスは小さく吹き出した。

    「ふふ、謝らないでくれ。私はそういうあなたを好きになったから、今更変わってほしいと言うつもりはないよ。……それでも、少しでも長く傍にいてほしいと願うのはわがままだろうか」
    「そんなことはない。俺も……お前が許してくれると言うのなら、一緒に生きたいと思う」

    するとサイラスは伏せていた顔を上げ、穏やかな笑みを見せた。ただロイヤルブルーの瞳は落涙こそしていないものの、じわりと濡れている。その瞳の煌めきに吸い寄せられるように顔を寄せ、額を合わせた。――触れた素肌の温もりと、微かに感じる呼気が気持ちを落ち着かせてくれる。少なくとも、オルベリクはそう感じていた。
    静かに見つめ合い、やがて口を開いたのはサイラスの方だった。いつもなら凛と張っている声は僅かに震えていた。

    「……オルベリク、私の家族になってくれるかい?」
    「ああ、喜んで」

    うれしい、彼の唇がそう動いたのを見たらたまらなくなって口付けをした。この旅が終わったら――その先について口にしたことはなかったが、オルベリクはこの関係を終わらせるつもりは毛頭なかった。戯れで言ったわけではなく、本心から出たものだった。
    するとサイラスの瞳からはとうとう涙が零れ、柔らかな頬を伝い落ちる。美しくて、儚い泣き顔を見ていると胸を掻き毟りたくなるような焦燥感を抱く。泣き止ませてやろうとしっかり抱き寄せ、今度は頬に唇を寄せた。啄むようにキスを繰り返していると、白い頬は滲むように赤くなってゆく。

    「……ふふ、くすぐったいよ」
    「こうしたら泣き止むだろう?」
    「人を泣き虫みたいに言わないでくれるかな。……それに、どうせこれからまた泣かせるくせに」

    濡れた眼差しで挑発されては、黙っていられない。薄い体を寝台に押し倒し、形の良い頭を撫でた。

    「そうだな。お前を泣かせるのも、泣き止ませることができるのも俺くらいのものだろう」
    「うん。……だが、お手柔らかに頼むよ?」
    「どうだろうな」

    強引に迫られているのに、サイラスは無抵抗のままオルベリクを見上げている。その無防備な姿を見せるのが自分だけとあれば、愛おしさと同時に劣情が込み上げてくるのも仕方がないだろう。薄明かりの中、互いの体温を確かめるように抱き合い夜は更けていった。
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    2jsusk

    DONE🔥誕おめでとうございます〜!
    こんな良き日に頒布開始することになっております「表」につけた無配のコピー本です。ページ数の関係で中身ぎゅぎゅっと詰め込んだわかりにくい仕様になってますが、大正軸の人間🔥×ぽんじろのゆるゆる話になります。大正ってお誕生日にお祝いしないところからも矛盾が矛盾を呼んでます。
     ここしばらく見かけなかった大好きな後ろ姿を見つけてぴこんと耳が動く。すぅっと大きく息を吸って、その後ろ姿に声をかけた。
    「煉獄さーん!」
    「む、ポン治郎か!」
     声に反応して振り向いてくれた煉獄さんに全速力で駆け寄って、その胸に飛び込む。突進と変わらない勢いだったはずなのに、難なく受け止めた煉獄さんがぎゅっと抱き締めてくれた。
    「久しぶりだな! 元気だったか?」
    「はいっ! 煉獄さんもお元気そうで何よりです!」
     にっこり笑った煉獄さんに同じように笑顔で返すと、ぎゅむぎゅむと煉獄さんの柔らかな胸に顔を擦り付けて自分の匂いを移す。長期任務とやらでしばらく離れていたせいで、あれだけつけた俺の匂いはすっかりなくなってしまっていた。
    「わはは! ポン治郎は甘えただな!」
     くすぐったそうに笑う煉獄さんは俺のことをちっともわかっていない。けれどそれでも良かった。人間の煉獄さんは獣人である俺と番ってくれることはないだろうし、変に気持ちがばれてこうして匂いをつけることすらできなくなる方がきっとつらい。顔を上げて、今度は煉獄さんの首へと手を伸ばして逞しいそこをぎゅっと抱き締める。むわっと香る汗と煉獄 5759