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    ヤタガラス兄のやつ
    ファンタジー
    仏教も神道もごちゃまぜ宿儺の居ない世界、呪術高専に通う悠仁と神の使いの脹相の話
    ある程度まとまったら直して支部に上げようかな
    (すみません、元々情報過多でSNS疲れ起こすのでちょっとこちらに引き込もるやもです)

    ヤタ兄(仮)三千世界の烏を殺し主と朝寝がしてみたい





    脹相は肩で大きく息をしながら背中の傷を庇うように自分の身体を抱きしめた。
    もう空は飛べぬ神託も聞こえぬ哀れな民も導けぬ幸いなことと言えば、もう同胞が死ぬ音も聴こえない事だった。
    今は住み慣れた迷家の布団に横になっている。ここも何れ消えてしまうだろう。
    早く逢いたい、瞼の裏に想い人が映る。
    俺は自由になった、と伝えたい。







    悠仁は幼い頃に二、三日の間神隠しに遭ったことがある。父母はすでに居らず、身寄りは祖父だけだったが祖父や近しい大人達が総出で山を捜したが見つからなかった。あの時は本当に肝を冷やした、と祖父が蒸し返す度悠仁はそんな大層な話だったか?と肩を竦めたものだった。
    悠仁にとっては神隠しに遭っていた間の記憶が朧気で、祖父と山菜採りに行った山の中で祖父と逸れ眠くなってウトウトしていて気付いたら家に帰っていたくらいの出来事だった。
    ただ、ウトウトしている間に夢を見た。季節は春先だったから暗くなるのも早く、辺りには闇が迫っていた。歩き疲れて眠たいし、寒くなってきたので目に付いた一番大きな木の洞に寄りかかろうとしたところだった。ばさ、っと頭の上で強い風と音がして体が抱え上げられた。

    「危ない、見えないのか?あの洞には溜まっていたぞ」

    悠仁の軽い身体は声の主に抱き上げられ宙に浮いていた。

    「誰?飛んでるすげー!」

    ぶらぶらと足を揺らすと後ろの大人が、暴れるな、と窘めた。またふわりと身体が浮いた気がして顔に冷たい風を感じる。背の高い針葉樹の高い部分にある枝に(といっても幹のような太さだった)ゆっくり身体を下ろされる。そこで初めて自分を抱えていた大人を見上げた。
    目の前の大人を見上げるには祖父を見上げる時よりも首を仰け反らさなければならなかった。彼は高い一本歯下駄を履き見慣れない着物のようなものを身につけている黒い髪は高い位置で二つに結われ悠仁を見下ろす目は少し眠た気だった。そして一番目に着くのが背後の大きな黒い翼。

    「なにそれ、本物?お兄ちゃん飛んだの?すごい!」

    悠仁は身体を傾げて彼の背後の羽根を覗こうとする。だが場所が場所だけに、悠仁の身体はまた抱き上げられてしまった。今度は正面から抱えられる。少し前まで祖父がそうやって抱き上げてくれたように。
    お前は危なっかしい、と近くなった顔が眉を顰める。悠仁は尚も目を輝かせまだふくふくとした手で男の顔に走る一文字を撫でた。

    「なに、これ?お兄ちゃん人なの?妖怪ってやつ?」
    「質問ばかりだな…俺は妖怪じゃない、人でもない」
    「じゃあ神様?」
    「まあ、それが近いな。今度は俺の番だ、お前は何処から来た?この森は危ない場所だ、方角が悪い、よく溜まるんだ。名前は?いくつだ?」
    「えっと、虎杖悠仁、5才です、えっとじいちゃんと一緒に来たんだけど…」
    「そうか悠仁、俺は脹相だ。」

    ちょーそー、と良い慣れない響きを繰り返す悠仁に脹相がほんの少し目尻を下げる。

    「で、お前の祖父は何処だ?」
    「分かんない」

    迷子なの、言葉にすると悠仁は途端に泣き出したい気分になった。すん、と鼻と目頭に力が入りそうになる。泣いてはいけない、男だろ、とまた祖父に叱られてしまう。
    脹相はそんな悠仁の表情にふ、と口角を上げた。

    「悠仁は強い子だな。」

    脹相は悠仁を抱き上げたまま背中の大きな翼をはためかせた。そのままふわりと体を浮かせて子供を抱えたまま空へ飛び上がった。

    「飛んでる!どこ行くの?」
    「早池峰に用があった。悠仁も行こう、面白いものを見せてやる」

    早池峰山は悠仁の住む街から北にしばらく行った場所にある霊山だ。悠仁はそんなことを知る由もないがワクワクする気持ちと高い場所が恐ろしいという気持ちを交差させながら目の前の身体にしっかりと掴まったのだった。





    気がついたら家の前にいた。最初に悠仁に気付いたのは近所のおばさんで、おばさんは血相を変えて祖父を呼びに行き、家から出てきた祖父が警察を呼んだりその後病院に行ったりと忙しなかった。
    結局神隠しに合っていた間の記憶は悠仁には残っておらず、祖父が他界するまで不思議な出来事として語られたのだ。




    悠仁が呪術高専に入ってしばらく、かつて祖父と住んでいた街付近の呪霊を祓うため再び懐かしい場所へと訪れた。

    「昔じいちゃんと来たな」
    「へえ、道は分かるのか?」

    級友の伏黒が山道を歩きながら尋ねる。

    「うんにゃ、分からん」

    県道から外れてしばらく歩く。
    山の管理の為にある、人が通るような小道を入って行くが呪力も残穢も感じない。

    ーあの洞には溜まっていたー

    ふと、悠仁の頭に懐かしいような声が聴こえた、ような気がした。

    「こっちだ!」

    悠仁が道を外れ草を掻き分け尾根を下る。
    慌てて伏黒も追いかけるものの、平気で山肌を駆けていく悠仁には追い付けなかった。

    やはり、と悠仁は立ち止まる。かつて自分が迷子になり神隠しに合った場所だと思い出した。
    あの樹、確かあの大樹の洞で休もうとしたのだ。その時に確か。

    ばさ、と悠仁の頭上で音がした。美しい濡場色の羽が目の前を舞う。悠仁が空を見上げるとその人がいた。

    「おや、見覚えのある髪色だな」

    彼はふわりと地上に降り立つと両手を交差させ百斂と呟き、次いで小気味よい音を立て両手を合わせ前に突き出すと赤い光線のようなものを放ち洞に居た呪霊を祓ってしまった。

    「脹相」

    悠仁が彼の名を口にするとあの時の記憶が蘇った。彼に連れられ早池峰を旅したこと、いわゆる呪霊でも神でもないこの世にいて人では無い者達と会ったこと、およそ人が作り出せないような不思議なものを見聞きしたこと。

    「こんな場所は危ないと言っただろう?」

    彼は変わらぬ姿で目の前で微笑んでいた。と言っても僅かに口角が上がっただけだが。

    「思い出した、俺……」
    「ああ、記憶を消していた。大きくなったな悠仁。」

    脹相は嬉しそうに目を細める。白い着物に真っ黒な羽根や髪が映える、この世のものではない美しさだ。

    「脹そ、」
    「友人が来るぞ」

    彼は音もなく羽を動かすとふわりと浮かび上がった。ゆっくり上空へと浮かび上がっていく脹相に悠仁が叫ぶ。

    「また、会いたい!」

    脹相は今度は微笑んだと分かるほど口角を上げてみせ、大きく頷いた。末端の長めの羽根を1本抜くと悠仁の元へ落とす。悠仁が慌ててそれを拾っている間に脹相は消えていた。
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