苺竹長く続いた入院生活が終わるという頃。
文字通り路頭に迷っている僕に、苺原は「わたしの家に住む?」と声を掛けた。
「自分で言うのもなんだけど、部屋は綺麗だし、立地もそれなりだし、料理の出来にも自信あるよ」
確かに、思い返してみれば苺原の包丁遣いは普段から料理をしている人のそれだった。話を聞いていても、規則正しい生活をしていることは容易に想像がつく。この言葉に誇張はないのだろう。しかし、そう語る様子に自信はなさそうだった。目を泳がせ、指先を擦り合わせて遊んでいる。
「自分の住まいぐらい、自分で見つけられる」
目線を逸らして吐き捨てると、苺原は自分の座っている丸椅子を持ち上げ、僕のいるベッドの傍に寄せてくる。
「わたしが蓮くんと一緒にいたいんだけど、ダメ?」
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