朝寝坊教室の鍵を閉めることが多かった。
「それじゃ、お先。また明日な」
「こんぶ~」
「憂太、まだ残るのか?ああ、任務の報告書か。あんまり根詰めるなよ」
かばんを背負って教室を出ていく同級生達の背中を見送る。がらんどうになった教室にオレンジの光が落ちている。西陽で温まった室内は埃とワックスの匂いがしていた。
僕は頬杖をつき、机の表面の、さっき棘くんがが残していったノートの落書きを指で辿る。
「もう少し一緒にいようよ」とは言えなかった。遠慮ではない。毎日そう思っているので、呆れられるのが分かっているからだった。「また明日」……明日になったらまた会えると分かっていても、明日までのたった12時間ぽっちが、僕にとっては長かった。
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