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    るび@ポイピク

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    良秀EGO実装おめでとうネタ(?)のメモ
    いつも通りイサンと良秀

    T-02-43***



    『■■■■■■■1、T-02-43へ本能作業』



     ピリリと響く電子音にはっと気が付くと私は大きなモニタの前に立っていた。手には端末とバインダーを持っている。恐る恐る端末とバインダーを見比べると『T-02-43』なるものの資料と、それに対する『本能作業』の指示であった。『T-02-43』。『蜘蛛のつぼみ』。

    「管理人からの指示が出ています。至急管理室に向かってください」

     何故か煤けたコートを翻したその人は立ち竦んだままの私を見ると移動を促した。私は訳が分からないまま、部屋を出る。

     足の赴くまま進んでいるととある扉の前でぴたりと止まった。扉の札は『T-02-43』。ここだ。正面に丸い硝子窓が付いているが、中は真っ暗で見えない。廊下から漏れるわずかな光で『何か』がうごめいていることだけは何となくわかった。

     本能作業。本能作業とはいったい何だろうか。

    「すいません」

     またも立ち竦む私に声を掛けるものが現れた。ぎこちなく振り返るとそれは数多の赤い目がぎょろぎょろとこちらを見つめるコートを羽織ったスーツの男であった。ぎょっとして身体を強張らせると、彼は苦笑した。手には大きなワゴンを引いている。

    「あなた、T-02-43の本能作業を頼まれた…イサンさん、ですよね?コントロールチームのチーフからあなたが作業に必要なもの持って行かずに行っちゃったってフォロー頼まれて…」

     そういって男はワゴンを私の手前までガラガラと引き寄せた。

    「俺、教育の■■■■って言います。よろしく。…ああ、それで作業なんですけど…」

    ぶっちゃけ出来そうです?と小声で彼は言う。私はゆっくり首を横に振った。男は気遣うように笑った。

    「はじめのうちは皆そうなんですよ。教育チームはそんな方をサポートするために居ますので…えーと」

     そういって端末を弄り始めた、教育チームの男はどうやら私の情報を探しているらしかった。数人の(知らない)顔が映った後、ついに私の顔が現れた。

    「イサンさんはー…ああすごいな。T-02-43の作業では知恵がこれだけあれば心配することはありません。ただ、勇気が心許ないようですね。だから本能作業を指示されたのでしょう」
    「知恵…勇気」
    「ええ、ご存じの通り、このL社で美徳とされる4つの資質のうちの二つです。この資質のランクによって幻想体の反応が変わる事があるんです。本能作業は幻想体に近づいたり触れたりする必要がありますが、T-02-43は注意さえすれば大変大人しい幻想体ですから問題なく管理出来ますよ」

     簡単な管理方法と注意事項、最後に一言応援を付け加えて男は去っていった。私は改めてバインダーの資料とワゴンの上のものを見る。

     『T-02-43 蜘蛛のつぼみ』。子グモを潰さないようにさえすれば何もしない幻想体。本能作業はこの幻想体へ食事のような生理的欲求を満たすことが目的らしい。ワゴンの上には、元が何だったかよくわからない肉塊が積まれている。人間で例えれば2人分くらいだろうか。

     言われた通り隔離室を開く。扉を開けてすぐには中に入らない。隔離室のドアが開いたことで光が差し込み、入り口付近にいた影がさっと奥に引っ込むのが見えた。懐中電灯をつけて自分が触ったり踏みたいところを照らしながらワゴンを進める。隔離室のドアがしゅんと音を立てて閉じると、持っている懐中電灯頼みになった。ここの電気系統は幻想体がダメにしてしまうため、使えないらしい。
     懐中電灯をワゴンから己の足元に向けるとワゴンの上の肉がしゅるりと糸に巻かれ天井の方へ引き上げられた。わっと無数の小さな影が肉に群がり、ぷちゅぷちゅと何かの音がする。私は服の中に子グモが入りやしないかと、しきりに懐中電灯を己に向けた。
     視線の先には暗闇の中でも赤く光るものがある。資料で見た通り、幻想体の本体…母蜘蛛とも呼ばれる蜘蛛のつぼみであろう。太い糸でぶらりと吊り下げられた『なにか』…卵嚢にも見えるそれはあちこちに赤い大きな目玉をぎょろぎょろとさせていて、おおよそ私の知る蜘蛛の姿ではなかった。

     子グモたちが肉に群がる間、私は何をしていいのかわからず視線を肉とつぼみの間でふらふらと彷徨わせた。いつになったら出ていいのだろう。まだすることがあるのだろうか。
     ふと、先ほどまでこちらを見ていた赤い瞳の様子が変わっていることに気が付いた。先ほどまでの卵嚢のようなものにへばりついた大きな瞳ではなく、丁度人間ぐらいの大きさの目がこちらを見ている。先ほどまでもあったのだろうか?
     慌てて資料を見返す。子グモを踏みつけたものを繭にしてしまうという話は乗っていたが、幻想体が人の形をとるという記述はなかった。彼の者もまたこの幻想体の管理を任された社友であろうか?もしかしたら繭から逃げ出したのかもしれない。それにしては様子がおかしい。その目はまだ私を見ている。何となく、笑っている気がする。私の目はその視線に釘付けになった。

    くすり。

     小さく笑う声が聞こえる。まるで女の声のようだ。私はまだ赤い眼から視線を外せない。人間のような赤い眼は徐々に私に近づいてきて、ついに輪郭がぼんやりと見え始める。
     一直線に切りそろえられたボブの黒髪、赤く光る眼。先ほどの教育チームの彼のように赤い眼をぎょろりとさせたコートに身を包んだ女性。…女性だ。見間違いではない。
     私はただぽかんと目の前の女性を眺めていた。女性は静かな笑みをたたえたまま私の頬をつうと撫でる。瞬間、糸が私の全身を縛り上げた。

     私は子グモを殺してしまったのだろうか?体は浮き上がり手からは懐中電灯が落ちて、カランと光をでたらめに照らした後床に落ちた。光に慌てた子グモたちがざわざわと走り回ったが、直に食事に戻った。女性は浮き上がった私を眺めてなお静かに笑っている。いや、実際には闇の中まで引きこまれてしまったためそんな気配がするというだけであった。四肢の自由は聞かないとはいえ顔は覆われていないためなんとか起き上がって前を見る。彼女の赤い瞳がぼんやりと光っていた。………彼女は私の目の前に顔を寄せている。吐息がかかるほど近くに。何をするでもなくずっと見ている。静かな笑みをたたえたまま。目と目が触れるほどに。甘ったるい匂いがする。杏が腐ったようなにおいだ。頭がガンガンする。彼女はまだ私を見ている。いや見ていやしないのかもしれない。彼女があまりに近いので、抱きしめられているかのような錯覚を覚える。彼女はまだ私を見ている。子グモたちは肉をすするのに夢中だ。果たしてあの肉の正体はなんだっただろうか?そんな事気にする必要があっただろうか?私は私がワゴンの上に乗せられてここまで運ばれる姿を夢想した。彼女は私をまだ見ている。彼女は私をまだ見ている。彼女は私をまだ見ている。彼女は




    『T-02-43、管理時間終了」




     はっと気が付くと私は隔離室のドアにもたれ掛かって座っていた。重い頭を振るとすぐそばに懐中電灯が落ちているのを見つける。かさり、と近くで何かが動いた気配に、慌ててそれを拾い上げ、全身に光を当てる。ここで失敗してはいけない。十分に気を付けてワゴンを引き寄せて隔離室を出た。振り返った闇の先には最初に見た卵嚢のような塊からぎょろぎょろと動く赤い眼があるのみだった。

    「お疲れ様です。うまく行ったみたいですね!」

     先ほどアドバイスをくれた教育チームの男が廊下に立っていた。まぁ蜘蛛のつぼみは暴れも脱走もしないですけど、とぼそりと呟く。低ランク職員の『後始末』は彼のような先輩職員が行うのだろう。私がはぁとため息をつくと、男は気まずそうに頭を掻いた。

    「ごめんなさい。あなたを信じていなかった訳ではないんです…作業の方はいかがでしたか?」
    「…生きし心地せざりき」
    「そのぐらいが生き残りやすいですよ、実際」

     男はワゴン等の備品の返却の仕方を説明して去っていった。スーツを払ってみるが、最後に座っていたことでついた糸以外は特に付着している様子はなかった。身体を縛り上げられたはずなのに。
     あれは幻想体への恐怖から見た幻だったのだろうか?言われた通りに備品を所定の位置に返し、コントロールチームの大部屋まで戻る。バインダーには私がいつの間にやら書いたと思われる観測記録が残っていた(筆跡はどう見ても己のものなのだ)。釈然としないままそれをチーフという女性に渡す。

     ふぅとため息をついて大きなモニタの前に立った。おそらく施設の全景と思われる図が表示されているが、なぜか全体の上部1/3程のみが明るく表示されている。稼働していないのだろうか。
     そのまましばらくモニタに流れる情報をぼうっと眺めているとぴりりと電子音が鳴った。私は自身の持つ端末を恐る恐る確認する。


    『■■■■■■■1、T-02-43へ本能作業』






    ***
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    るび@ポイピク

    MEMO多分シーズン1くらいに書いた7イサ良メモ。いつも通りの捏造。
    いつでも修正されることがあります。
    裏路地の夜***



     裏路地の夜。午前3時13分から午前4時34分の81分間。都市が眠りどこからともなく現れる掃除屋たちに全てが喰いつくされる時間。頭が定めた絶対的な禁忌で守られた、『居住スペース』内に居なければ1級フィクサーといえども命が危ういこの時間付近は路地裏をうろつく奴などいないだろう。私は今、そんな裏路地を午前2時48分に走っている。バディとして一緒に任務に当たる、良秀と共に。

     これというのも調査対象がこちらをかぎつけて追い回されているせいだ。向こうはここら一帯を縄張りとしているから、ここに追い込んで一斉にドアを閉めてしまえば私たちはあっという間に掃除屋の餌食という事だろう、巣へは間に合わず避難を受け付けてくれそうな事務所もこのあたりには、無い。良秀は私より5m程度後ろを走っている。大太刀を担いでいる分遅いというのもあるが、戦闘に長けた彼女が敵を引き付ける殿を請け負っているからだ。彼女が2,3人に囲まれていることは多く、彼女を狙う輩を私が弾くという戦い方が常態と化していた。結果、より多く消耗するのは良秀であり、さらに足は重くなっていく。―――間に合わない。私は何度もこのあたりの地理の情報を照らし合わせたが、あと15分程度で逃げ込めそうな所が見つかる算段が付かなかった。
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