ワンライ お題:世界が終わる日 聡実からの好意をのらりくらりと躱すのもそろそろ限界なのかもしれなかった。待ち合わせた駅前で顔を合わせた時も、食事中も、彼はひどく思い詰めた顔をしていた。狂児が他愛ない会話に誘い込もうとしても、いつも以上にそっけない返事を寄越して、そのくせ何か言いたげな目でじっとこちらを見ていた。
食事を終え、駅へ向かう道すがらも聡実は黙りがちだった。元々おしゃべりな性質ではないし、沈黙が苦痛になる間柄でも無いが、今日の無言は意味のある無言に感じられて、狂児は密かに身構えていた。だから「ほな、またね」と言い置いて立ち去ろうとした時、引き留めるようにスーツの袖口を掴まれても驚かなかった。
「狂児さん、まだ覚悟決まりませんか」
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