嗜みの舞台裏休日 暫く続いた秋雨も満足しましたと言わんばかりの快晴に誘われるようにタワーを飛び出した
少し冷たくなった風に背中を押され、サウスの大通りを駆け抜ける
日課のランニングをこなすセイジとハイタッチを交わし、路地裏の猫たちと挨拶がわりに写真を一枚
紅く染まり始めた街路樹を眺めながら顔馴染みのキッチンカーへ向かう
いつもありがとな、とトッピングがサービスされたホットドッグにかぶりつけば高く突き抜ける青空が眩しい
空腹を満たし、さてどうするかと時計を見れば正午を過ぎたばかり
午後はどうしようか とりあえずシャワーでも浴びながら考えようかとタワーへ戻る
ただいまを告げるもさすがに皆出払っている
忙しさも落ち着いてきたとはいえ、揃って休暇を取れるのはもう少しあ先になりそうだ
また小さなバカンスにでも行ければいいなと少し熱めのシャワーを浴びる
バスタオルで水滴を拭いつつキャビネットを見れば見慣れない小さなボトルが一つ
そういえば新しく香水が出ると言ってたのを思い出す 街中でも至る所に広告が出され、セクシーさを全面に押し出したビジュアルにファンたちがきゃあきゃあとはしゃぎながらシャッターを切っていたのを思い出す
撮影にも立ち会ったがイマイチ直視できなかったブラッドを思い出しながら無意識にボトルへと手が伸びる
ほんの少し、ワンプッシュにも満たないそれを手首に馴染ませればふわりと香りが立ち上がる
知らない筈が覚えのあるような香りに、何故か昨夜の情事を思い出す
平熱が低めのブラッドが自分に夢中になっている時のその香りによく似たそれに人知れず羞恥を覚えてしまう
手つきや言葉、温度 思い出してしまったそれらを振り払うようにトレーニングルームへと向かう
無我夢中でマシンを周回し張り合ったマリオンがマシンを壊してしまったことで二人揃ってジャックにお説教を喰らい、そんなに運動したいのかと今夜馴染みのホテルに連れ込まれることになるとは今のアキラは知る由もない