タイトル未定心臓は売り渡した。組の若である事実もじきになくなる。それでも俺が沢渡につくのは、こいつが信用できるからではない。
従属なんて、相手が自分より程度が高い場合に生き延びる方法だろう。
そんなのは犬か奴隷だ。寧ろ俺がこいつを利用してやる。
俺は爺ちゃんの死に納得を求めている。この怒りを放っておくべきではないと、自分の中で込み上げているのだ。
物語では復讐劇なんて特に使い古された要素の一つだろう。ではこの時代になっても作り続けられるのは何故か?
それは簡単、人が本能でそれを望んでいるからだ。
自分の近い場にいた人が殺される。人を殺したそいつは害であり、それはいつ誰に再度刃を向けるか分からない。ならば殺さなくてはならない。そいつを殺せるこの俺が。
それができるなら俺には何も要らなかった。爺ちゃんは俺の全てを作ったからだ。自我も、人格も、知恵も。
心臓は売り渡した。俺の身体は既に人ではないらしい。それでも心まで売り渡したつもりはない。