ハルトは壊れ物みたいに、俺に触る。硝子細工でもなければ、精密機材でも、それこそ赤ちゃんでもないのに。
大丈夫だよ、信じてほしい。そう何度も伝えようと思っても、ハルトは淡く微笑んで、大切にしたいと口にする。
耳の裏あたりがなんだか擽ったい。首をよじると、ぱ、とそれは離れた。羽音に近い囁きが、鼓膜に触れる。
「ごめん、起こした?」
「ん……」
寝返りを打つと、背中の服の縁あたりの寝汗が冷たくずれる。
少しだけ意識が覚めて、扇風機の乾いた回転音が脳を駆けていく。彼の少し慌てた目に、なんとなく、ハルトが俺に触れていたんだなあ、とわかった。
心の内側が擽ったいような、甘ったるい飴が喉からとろけ落ちてくるような、この感覚を一言にしてはいけない気がして、いつもしない。さびしいと愛おしいって、なんだか似ている。
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