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    seekfreezestar

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    seekfreezestar

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    メモ帳の底からハルスグみっけた
    これを見ながらスランプ脱却したい

    いつか本にするかも

     ハルトは壊れ物みたいに、俺に触る。硝子細工でもなければ、精密機材でも、それこそ赤ちゃんでもないのに。
     大丈夫だよ、信じてほしい。そう何度も伝えようと思っても、ハルトは淡く微笑んで、大切にしたいと口にする。


     耳の裏あたりがなんだか擽ったい。首をよじると、ぱ、とそれは離れた。羽音に近い囁きが、鼓膜に触れる。
    「ごめん、起こした?」
    「ん……」
     寝返りを打つと、背中の服の縁あたりの寝汗が冷たくずれる。
     少しだけ意識が覚めて、扇風機の乾いた回転音が脳を駆けていく。彼の少し慌てた目に、なんとなく、ハルトが俺に触れていたんだなあ、とわかった。
     心の内側が擽ったいような、甘ったるい飴が喉からとろけ落ちてくるような、この感覚を一言にしてはいけない気がして、いつもしない。さびしいと愛おしいって、なんだか似ている。
    「んーん……」
     同じ微睡みへと招くように、浮いたその手を捉えて、絡めた。俺は熱くて、ハルトのは少し温い。わずかに揺れた指は、俺の体温と溶け合って、なされるがままになってくれる。
    「ん……、もうちょっとさ、寝よー……」
     ハルトのTシャツに顔を埋める。彼の匂い、肌の柔らかさ、肋骨の硬さ。構成上は自分と同じパーツなはずなのに、全部好きだ。眠りにふやけていく意識の中、酷く不器用な手つきが、俺の背中をそっと包んだ。
    「うん……」
     途方もない満足感が押し寄せてくる。眠いからかな、傲慢な願いが、なにも悪くないように浮かぶ。未知を怖れない、他人に臆さない、困難にも手を伸ばす、かっこいいハルトの、臆病なところ。
     俺しか知らなかったらいい。
     呼吸とともに、い草と香取線香の匂いが俺達を満たしていく。夏の夜を吸った渋い香りは、揺り籠みたいに俺達を取り囲んで、やさしく夜を進めてくれる。俺を抱きしめたハルトが、俺の大切なこの家に抱きしめられている。こんな刺激を受け取るものだから、今日はなんだか、ことさらに特別な気もして、同時に永遠な気がする。ゲームの中みたいに、この一日が続けばいいのに。朝バス停で会って、あちこち回って、そうしてまた、夜が来る。
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