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    海(うみ)

    @Pk_umi_

    成人済。スグアオ固定中心
    スアオの妄想ばっかりしているやかましいチキン。
    どちらかというと文書き側
    落書きとラフと練習と肌色は大体こちら

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    海(うみ)

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    なんかよくわからんですが健全(?)にお風呂一緒に入る成長スアオの話です。しぬほど短い

    #スグアオ

    (何で、こんな事さなったんだ…)

    偶然と言われれば、あまりにもこの状況は酷ではないのか、と誰に届くかもわからない愚痴を俺は脳内で零した。
    同時にその脳内で最近覚えたてのパルデア図鑑を上から数えつつ、できるだけ自分の膝に視線を固定してただただ時が過ぎるのを待つしかない。

    「流石に、狭いね」

    ちゃぷん、と揺れる水音に今しがた数えていたポケモンがどこまでか飛んでしまった。
    ええと、確かリククラゲ。そう、そうだ、それで次は──

    「…ごめんね、嫌だったよね」
    「いや、嫌とかじゃ、なくて…その…」

    明らかに落ち込んだアオイの声が耳に響く。
    最早パルデア図鑑は頭の彼方へ飛んでいってしまった。1から数えるのももう諦めた方がいい。
    背後からまたちゃぽ、と水が揺れる音がして胸の奥が震える感じがした。

    事の始まりは、パルデアに引っ越してきて暫くたった頃。
    キタカミのようにとはいかないけど、パルデアでも祭りはあるんだよとアオイから教えてもらった研修終わりの時間、2人で目を輝かせて。
    今度は私がスグリを連れていってあげるね、と後日2人で参加した祭は、はっきり言ってカオスだった。
    よく確認してなかったお互いにもきっと落ち度はあったと思うけれど、どうやらパルデアではトマトを投げ合う祭りというものがあるらしい。
    初っ端からその祭りのど真ん中で洗礼を受けた俺達は、最初こそベタベタになった事に爆笑こそすれ、それが今に繋がるとは微塵も思っていなかった。

    「まさか、備え付けのシャワールームに押し込まれたと思ったらドアが開かなくなるなんて誰も思わねえべな…」
    「そ、そうだよね…何というか、漫画みたいだよね…」

    もぞ、と身じろぎしたらしいアオイの細っこい肩が俺の背中に当たる。もうやめてくれ、これ以上は何も気を紛らわす事なんて考えられないのに。
    そう、祭り会場にはシャワールームがあった。そこまではいい。が、これだけ人が密集するとアオイを見失うのも当然の事で。
    何とか身体を捩じ込んで入ったところには真っ赤になったアオイがいて。それで。
    パニックになった俺とアオイで、とりあえず俺が出ようとドアノブを回して───どれだけ回しても、出られなくて。

    どうするとなっていた時に、アオイが小さく可愛いくしゃみをしたから、先に入るよう促した。
    優しいアオイは絶対頷かなくて。俺も風邪を引くからと、要は、その、一緒に入る、という事に決まった。
    決して、最初から一緒に入る気なんかなかった。
    でも、俺の服の裾を引っ張って、いいからと言われてしまえば、もう脳がわやになるしかなかった、という訳だ。
    背中合わせとは言え、正直もうやばい。何がやばいかって。

    (ずっと好きな女の子が、振り向けば裸。俺も、裸)

    加えてお互いの動きで揺れる水面の音が俺の理性を全力で崩してくるのが憎い。
    学園時代から心の底から好きだったし、今でもパルデアにまで来るくらい、アオイの側にいて、仕事の色々を支えてあげたいと思う。
    そのくらい大事に思ってる女の子だ。
    だから、付き合ってもいないお互いの為に何も間違いを起こす訳にはいかない。

    「…ねえ、スグリ。こういうの、キタカミでは裸の付き合いって言うんでしょ?」

    だから、正直に言うから聞いてね。
    と、どこか緊張したようにアオイの声が震えた。

    「今日、お祭りに誘ったのはね、オモテ祭での2人の思い出がとても大切なものになったから、パルデアのお祭りもスグリとの特別にしたかったの」
    「特別…」
    「そう、えっと…だから、こんな状況で、言うことじゃ、ないんだけど。スグリの笑顔が見れて、嬉しくて、私。スグリの事が」
    「待って」

    もごもごと消えていくアオイの声につい振り向きそうになって、慌てて顔を自分の爪先に戻す。
    ああ、だめだ。俺の笑顔が見たかったと言う彼女が死ぬほどめんこい。めんこすぎる。
    こんな時に、本当にこんな時に言う事じゃないが、そこから先は、俺が言いたい。

    「今、顔見たらきっと耐えらんねから…許してな。アオイが思ってくれてる気持ちと俺も同じ。いや、きっとそれ以上に、ずっと好きだった」
    「そ、それ以上って…」
    「ん、アオイが思ってる以上にアオイの事見てたから」

    出会った頃からずっと。
    長年しまっていたはずの想いは存外、自然と口から滑り出ていた。
    本当はもっと一人前になって、ちゃんとした場所で、ムードのある時に言いたかった。
    でも、無理だ。アオイにここまで言わせて、告白できないとなったら男が廃る。
    幼い頃から、いつだって女の事は男から行動するもんだぞ、と地元のにーちゃん達から躾けられてきた。

    「…そっかあ。そんなに、想ってくれてたんだね」

    私も、好きだよ。大好き。
    アオイらしい堂々とした声音に足の先から首までじわじわと熱を帯びてきて、心臓が祭り囃子のように賑やかに響いてくる。
    それは背中のアオイにも伝染してしまいそうで、俺は必死に胸を抑えた。

    「片思い歴なめんでね。それに…アオイじゃなかったら、きっとあそこまで執着なんかしてない」
    「私も、スグリじゃなかったら留学までして、会いにいかなかったよ」
    「…そっか。わや嬉しいな」

    今すぐアオイの顔が見たい。
    今、どんな顔をして、どんな風に言ってくれているのか。
    俺と一緒で、赤くなってんのかな。心臓、うるさくなってんのかな。
    そう考えただけで、どんどん愛おしさが重なっていく。
    でも、本当に理性が飛んでいって彼女を心のままに求めてしまうだろうから、今はアオイの顔を我慢するしかない。
    だから、後で俺の感情がどれだけアオイに占められているのか、耳元でずっと囁いて、抱きしめたい。
    だから、今は、耐えろ、けっぱれ、俺。






    その1時間後。
    実は物凄く恥ずかしがっていたらしいアオイがのぼせてくたりと気を失ってしまって、彼女を抱き上げて大慌てで助けを呼んだ。
    救護室に無事運ばれたのはいいものの、時間差で俺も意識を失う羽目になり、後日研修先に散々からかわれ、暫くアオイに合わす顔がなかったのは、ここだけの話だ。


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