龍が逢いに来る。小さい頃から目に見えないものに守られていた様に思う。
巨大な龍の影が、『影だけ』が僕の影ごと飲み込み野を駆けていく、頭上を見上げど天に姿はなく子供の頃はよく首を傾げていた。
近頃では滅多に逢う機会も減り…いや、姿が見えないのに逢うと言うのは可笑しいかもしれない。
ただ自分に会いに来てくれていたのだと、不思議と確信めいた自惚れがすっと心の中にあったのだ。
ーーー
「龍だー!龍が落ちてきたぞ!」
穏やかな昼下がりに似合わぬ怒号轟音に辺り一面静まり返る。
『龍の落下、目撃者多数、その実体無し。』
集団で見た幻覚だと、白昼夢だと、各々納得いかない顔で飲み込むしか無かった。
ーー
「悪いが案内してくれないか」
酷い怪我をした大柄な男に掴まれた腕。
憔悴したさまなのに、追い詰められた獣のような気迫が身に刺さり動けなくなる。
「驚かせて申し訳ない、どうしてもアマト以外に頼れる人間が…」
違和感のある言い回しに、疑問を持つ間もなく男と目が合う。
自分より高い目線をこちらに合わせ、できるだけ怯えさせないよう柔らかく言ってみせたのだと、その瞳の理性に少し緊張の糸が解けた。
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「そう言えば、どうして僕の名前」