ゆえにあいゆえ 今日も気乗りしないインタビューの収録をどうにか乗りきって、やっとラボに帰ってくることができた。道中の記憶があまりないが、それはつまり何事もなかったということでもある。そういうことにして、フィガロは自分の研究室のドアを開けた。やっと気を緩めることができる。早く人間相手の笑顔の武装を解除して、甘やかされたい。そう思っていたのだが、目の前に広がった光景に息を詰まらせた。
室内の、主にデスク周りのスペースに自分の写真が貼られまくっているのだ。壁と機器の間に雑に留めたケーブルにもテープでぶら下げられていて、コマ送りのように並んでいる。古い映画にでも出てきそうな様子が逆に怖い。
「おかえりフィガロちゃん!」
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