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    nayutanl

    @nayutanl

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    nayutanl

    DONE月花Webオンリー展示
    年長者と強絆のゆるめの話です。
    アーサーの疑問から始まる四人のあれやこれやです。アーサーが外見年齢12~13歳くらいのイメージ。自分が絵で見たい話を書いた形かも。
    公式にない設定が一部ありますが、雰囲気でふんわり読んでください。書いた本人も雰囲気で押し切りました。
    9/9追記:追録書きました(https://poipiku.com/3138344/7470500.html)
    和やかな城 ある日の桜雲街、竜の住まう城の一室で青い目をした天狗の子どもが尋ねた。
     
    「スノウ様、ホワイト様。おふたりは大人なのにどうしてこのようなお姿なのですか?」
     
     この城でそのようなことを尋ねるのはこの子―アーサーだけであろう。スノウとホワイトは一度顔を見合わせてからふたりしてにっこり笑った。
     もう随分長く生きている彼らはこの城の主である。今でこそオズに譲るが強い力をもち、気が遠くなるほど昔からずっと竜族の頂点に君臨している。ここ近年は「早く隠居したい」が口癖で、どうにかオズかフィガロを後継者にしようとしているものの、ふたりにその意志はなく聞き流されてばかりだった。そんなものだから、このところはオズが助けて以来この城にホームステイしているアーサーが後継者になってくれたら……とオズに牽制をかけているが、本気ではないと思われているようである。とはいえ、アーサーが後継者に向いているという直感と竜の住まう城の主が天狗でよいかどうか、そしてアーサーの実家である天狗の一族の事情はそれぞれ別の問題なので、スノウもホワイトも食い下がったり押し付けようとしたりといったことはしない。ただ、隙さえあれば隠居したいと思っているだけで。
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    DONE紫陽花見ながら話してるホワイトとフィガロの話
    ホワイトから見たスノウとフィガロのこととか、フィガロから見たホワイトのこととか
    ほんの少し生きた心地がしないけど、気のせいかと思うくらいのあったかさはある つもり
    あと、文末に話に関するちょっとしたことが書いてあります。
    ハイドランジアの幽霊師匠と植物園を散策―などといえば聞こえはいいが、実のところは連れ回しの刑である。フィガロは曇り空のもと美しく物憂げな色彩の花を咲かせるハイドランジアに目をやりながらこっそりとため息をついた。
    ホワイトがやってきて「ハイドランジアの花が見頃だから出掛けよう」と誘われたのだが、あまり良い予感がしなかったので一度は断ったのだ。断ったのだが、今回の誘いはこちらに選択権がないものだったらしい。有無を言わさず連れてこられてこのとおりである。

    「そなたら、また喧嘩したじゃろう」
    「喧嘩とはいえませんよ、あんなの」

    少し先をいっていたホワイトが戻ってきて、ごく自然に手を繋いできた。こんなことをしなくても今さら逃走なんてしないのにと思ったが、これは心配性なのではなくて物理的な束縛だ。都合の悪い話をするつもりなのであろうことは断った後の出方で何となく察していたが、切り出されるとやはり身構えてしまう。いいことでも悪いことでも、心に叩き込むようなやり方はホワイトの得意とするところなので、分かっていてもわずかに寒気がした。
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    DONEパラロイのフィガスノ
    前回(https://poipiku.com/3138344/6911602.html)の続きらしい話で、こちらはスノ→フィの気持ちの話です。
    書きたかったのはフィガロが寝てからスリープモードに入ることにしてるスノウだったんですが、フィガロのお世話したり色々になりました。
    寝ても覚めてもスリープモードは負担がかかるというのは、完全に眠っているのではなくてうたた寝程度の状態だからである。
    人間でいえば、うつらうつらとしている状態のことだ―とファウストが言っていたのを思い出しながら、スノウは椅子の上で寝かけているフィガロをつついた。
    とっくに退勤していまは自宅だが、忙しいフィガロは家でもラボにいるときと大して変わらないことをしている。かろうじて、食事と入浴は済ませて人間的生活は保ったにしても、いただけない。

    「うわっ……なんですか、ちょっと」
    「我にシャットダウンを迫る前に、自分がちゃんと寝てみせて欲しいのう」
    「……この間のこと、根にもってるんですか」
    「別に?」

    フィガロが言っていたことは理解しているし、あの日はフィガロの手によって何事もなく目覚めて、おはようからおやすみまでスケジュール通りの一日を過ごした。不安に思っていたことなど、なにも起こらなかったのだ。
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    DONE【十五夜の魔法使い】企画に提出したものです
    担当は北、スノウとホワイトでした。ふたりがフローレス兄弟を出会い頭に誘ってお茶会をする話です。
    とっておきのお茶、自慢の手作りお菓子、特別な時間。おおよそそんな感じ。
    ムーンナイトティーパーティー 談話室から戻る道すがら、ルチルとミチルは廊下でスノウとホワイトに出くわした。
     夕食後から少し経ち、そろそろ自室に戻って自分の時間を過ごして寝支度をという時間だったが、スノウとホワイトは絵の中ではなく昼間と変わらない姿でいる。抜け出る気になれば出てこられるとは言っていたので、それ自体は不思議なことではないのだが、意外な時間に意外な場所で出会ったものだから、兄弟はふたりして少なからず驚いたのだった。
     
    「スノウ様、ホワイト様。こんばんは」
    「こんばんは! こんな時間に、どうしたんですか? お腹空いちゃったんですか?」
     
     ルチルとミチルが挨拶をしてから尋ねると、双子はにっこり笑ってそれぞれふたりの腕を抱くようにして捕まえた。その様子は、一見すると幼い子どもが年上の相手に甘えているように見えるが、スノウとホワイトがただ甘えるような仕草をしているだけではないことにルチルは何となく気づいていた。ふたりは、なにか明確に用事があってこうしているのだと。
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    DONE物理的にめちゃ近距離感のオズとホワイトの話
    精神的にはオズが一方的に少し遠さを感じているような。
    これ(https://poipiku.com/3138344/6044179.html)の続きというか分岐という感じです。先に読んでおかないとちょっとわからないところがあるかも。
    キスをするけど親愛のそれです。でも、見るひとの感覚によってはわからないです。
    雪解けのキス 秘密はいつでも夜にあって、守られていた。朝になればそっとしまいこんで、スノウとフィガロの前では知らん顔をしてみせる。それでも同じ場所で暮らしていて気づかないわけがないから、見え透いた茶番のようだっただろう。
     しかし、それも昔のことだ。あのころよりもずっと大きく広い『家』のようなこの魔法舎で、多くの魔法使いと暮らし始めてからはあのころのようなことはなかった。互いに厄災の傷を負っている身であったし、それ以前に必要がなかったのだ。一人寝のできない子どもではないし、眠れなければその場でやり過ごせるだけの娯楽的要素が自室にはある。それゆえに、必要だけでなく機会も失われていた。
     けれども、何事も不意に起こり突然動き出す。オズは、膝のうえに乗ってきたホワイトを見やり、思った。遠すぎる過去を振り返ってみたが、やはりあのころのホワイトはこんなことはしなかった。彼もスノウも年長者の顔をして保護者気分で接してきていながらも、確かに君臨していた。たまに何ともいえない若作りしたようなことを口走ることはあっても、こんな幼子のような真似などしなかった。少なくとも、自分の記憶のなかには同じ光景はない。そんな気がした。忘れているだけであるという可能性も残っているので、断定するにはもう一手欠けるといったところなのである。
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    DONE昔、北師弟で四人暮らししていたころ(という設定)のなかでのホワイトとオズの話。
    これも昔の話と今の話ですが、結構強い幻覚なので気を付けてください。なお、例の🥄発売以前に書いた話を前提としているので、フィガロの話し方が結果的に捏造かも。

    蛇足がついてるので、「いる」って何だ? と感じたら下まで読んでみてください。
    愛の才能「「ただいま我が家!」」
     少しばかりの留守の後、現在の我が家に帰ってきたスノウとホワイトに弟子たちが駆け寄ってくる―などといったことはありはしなかったが、自分達の姿を確認し彼らがわずかばかり表情を変えたことには少なからず教育の手応えを感じた。教育とはいえ真似事にすぎないのだが、これでも試行錯誤を繰り返してきたし、総合的に見れば上手くいっているとは言い難い有り様なので、少しでも変化があると報われたような気持ちになってしまう。何年生きてきても単純なところは単純らしい。
    「おかえりなさい。ご無事で何よりです」
     フィガロが見本のような言葉で迎えるその傍らで、オズは唇を結んだまま佇んでいるだけだが、姿を見せるということは自分達の動向に少なくとも興味を持っているということなので、スノウとホワイトは外出の疲れも癒されるような思いで破顔した。
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    DONE『SEE THE WORLD』向け展示だったものです
    直してもらった後のホワイトと、仮眠明けのフィガロのお喋り
    フィガロが自分の科学者としてのルーツ(※捏造)を振り返りながら今やこれからのことを少し考えたり、ホワイトが甘やかしながらも言うことは言ったりしてる
    傷から始まった変化と、求めていたものの話。
    空想科学少年 なぜ科学者を志したのかと、以前はよく訊かれたものだった。インタビューにおける鉄板であるし、配信番組においては話のフックとして丁度いい。それゆえ尋ねられることは明らかだったので、フィガロはそう訊かれたときには決まって家で飼っていたペットロイドの話を出していた。
     しかしそれは大衆向けの答えである。嘘というわけではないが、決め手となった出来事は然るべき年頃に然るべき経験をして、学んでおくべき場面で失敗したことだろうか。そのときの傷がきっかけのひとつだった。もしかすると家庭環境も影響していたかもしれない。でもいまとなってはよく分からないし、そんな些末なことはもうどちらでもよかった。
     大事にしていたペットロイドはもうとっくに壊れてお別れしてしまったし、好きだったあの子に至っては名前も顔も思い出せない。
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    DONEミス晶
    晶を誘ってマナエリアへ行ったミスラの話
    話しているうちに、相手のことを知りたい、応えたいと思うようになっていく二人。思いあってはいるけど付き合ってはいない。
    自分の気持ちにうっすら気づきつつある晶と、その感情をきっと恋というのだとまだ分からないミスラ
    心の在り処 なんとなく連れてきてみたくなって、ミスラは晶を湖に誘ってやってきた。天候はというと、雪は降っているが風はなく上々である。湖面も凍っていない。けれども、北の国の冬としてはまだまだだ。少し落胆しながらミスラは小島を過ぎた辺りで櫂を動かすのをやめた。舟はしばらく惰性で進んだが、やがてゆっくりと動きを止め波に揺られるのみとなった。
    「湖面が全部凍るほど寒くなれば、いいものを見せてやれるんですけど。今日は駄目でしたね」
    「でも全部凍るくらいっていうと、死ぬほど寒いんじゃ……」
    「そうですね。相当強めの魔法をかけないと、きついかな」
     魔法でもかけないと、こうして少し話すのに口を開いた瞬間体内に冷気が入り込んできてたちまち凍えるし、口を閉じていたって外から凍える。この程度の寒さならまだ死ぬことはないが、『あれ』が見られるほどとなると晶の言ったとおり死者が出始める。そうやっていくつもの集落がなくなっていった。
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    DONEアサ晶
    魔法舎の自室においてあった招待状をもってバーへやって来たアーサーを待っていたのは……
    少し遠回りしながら気持ちを伝えようと頑張る晶と、まだなにも知らないアーサーの話。
    余談というかこれがサビなんですが、ミモザのカクテル言葉は『真心』、ミモザの花言葉は『秘密の恋』です。きっと魔法舎では(公然の)秘密の恋。
    告白の作法 魔法舎の廊下を一人歩くアーサーの手には、マスタードイエローの封筒が一枚。夕食後、自室に戻ると机の上に置いてあったのだ。差出人の名前が書かれていなかったが、魔法舎に住まう誰かが置いたことは間違いないだろうと開けてみれば、中に入っていた便箋には『今夜、バーで待っている』という旨のことがたった一文で書かれていた。所謂招待状である。
     誰が書いて、誰が置いたものだろうか。書いた人物と置いた人物が同一人物だとは限らないし、バーで待っているのは一人ではないかもしれない。
     場所にバーを指定してくるということは、シャイロックだろうか? それとも、よくバーに出入りしている誰かか。西の魔法使い達や、酒を愛するひと、考えられる線は複数あるが、アーサーは推理をするでもなく、ああかもしれないこうかもしれないと思いを巡らせながら、うきうきとした足取りでバーに向かっていた。
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    MOURNINGけだふれで出そうと思ってた本だか展示だかネップリだかのために書いてたけど手が回らず埋もれてたのをサルベージしてきました。
    診断メーカーのを書いたものです。

    以下結果↓
    今日のカインとアーサー
    ゲームセンターに行ってみる。ふかふかの食パンクッションふたつが1000円でとれた。ラッキー!帰ったら二人でサンドイッチになる。
    今日のカイアサ《フォ学 #1》 学校帰りにふらっと寄った複合商業施設内のゲームコーナーをみていると、気になるUFOキャッチャーの台を見つけた。
    「助けてください……発注ロットを間違えました?」
    「すごくたくさんあるってことだな」
     張り紙のされた台の前で、アーサーとカインは立ち止まり中を見ていた。よくあるタイプの台だが中にはカプセルが入っていて、落とすことができたら係の者に渡すと景品がもらえるらしい。しかし張り紙に書いてある通り担当の者がいわゆる発注ミスをして在庫過多になっているため、通常より取りやすい形で提供しているとのことだった。
    「景品は、食パンのクッションだそうだ」
    「面白いな! やってみるか」
     台を飾っているポップを興味深そうに見ているアーサーの横で、カインは丁度財布の中に入っていた500円玉を投入した。500円玉を入れると、100円で一回のところ6回遊べるのである。
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    DONEカイアサWebオンリー【気高いあなたにふれる朝】専用新婚さんお題です。
    指輪をなくしちゃったアーサーと、なくしもの慣れしてるカイン。

    #けだふれ_アフター
    #けだふれ_お題
    指輪がない……と言い出したのは、意外にもアーサーの方だった。
    カインの両親、特に母は料理の時にはずしてそのまましばらく見つけられなかったといったことが何度かあったことや、カイン自身片付けが苦手な自覚を持っているのもあって、初めて指につけたその瞬間からなくさないように彼にしては神経質に注意を払っていた。
    それでもなくすことがあるとすれば絶対に自分だろうと思っていたが、どんなものでも、誰の持ち物でも、なくなるときはなくなるということをいま目の当たりにしている。

    城の自室のあちこちをひっくり返しながら、アーサーは迷子になっていることに気づいた子どものようになくした指輪を探している。カインも話を聞いてから手伝っているが、心当たりがないので探す場所にもまず迷う。ひとまず、アーサーの邪魔にならない位置で床に這いつくばって家具の下を中心に探してみたものの、埃らしいものさえ見当たらなかった。とすると、清掃後になくしたか普段と違う場所にしまっておいたのを思い出せなくなったか―考えを巡らせながら、カインはアーサーに向かい励ますように言った。
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    MOURNING本当は今日の展示は一日の時間経過を追った連作になる予定でした
    故あって全部ボツにしましたが、一個サルベージしてきたのでふわっとご覧ください

    突然始まって続きそうな感じで終わります。続く予定だったんです…無念。
    ひねもすカイアサ《7時》 久しぶりの共寝も目覚めはあっさりとしたもので、二人とも睦合うのもそこそこにベッドから降りて身支度を始めた。
     ゆっくり過ごしたい気分ではあるのだが、揃って遅起きをするわけにもいかない。まだ少しばかり残る夢見心地を惜しむようにゆっくりと着替えながら、ふたりは顔を見合わせて面映ゆそうに笑みを浮かべた。
     
     身だしなみを整えて、互いに確認し合う。自分自身では見られないところを特に確認するのは、そのまま自分が気になる箇所だからだ。
     誰にも言ってはいない関係なので誰も知らないはずだが、何も言わなくても気づかれていることというのは不思議とひとつやふたつではない。相手への感情に後ろめたいことなどありはしなくとも、どちらかといえば他人には知られてない方がいい―おさまりの悪いところもある。しかし、おおっぴらに「つきあっています」だなんて言って回れるかといえばそんなことはまったくないので、こればかりは仕方ない。秘密。そういうことにしている。
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    DONE本日の新作ですが、もうひとつ書きあがらないので途中までですが置いていきます……!
    夜のうちに最後まで書けるはずなので……どうかまた見に来てください……すみません

    追記>
    できました!(※現在4時52分)
    夜のうちにとか書きましたが朝になってしまい…すみません…
    なんか、ふたりに朝と夜の間の時間を過ごしてほしかった…!歯止めがきかない夜もあってほしい…!色々考えながら書きました。カイアサ尊い。
    まだふたりの夜が離れないから このところ、まだ暗いうちに目が覚めたり、寝つきが悪くやっと眠れそうな気配がしてきたころには空が白んできているといったことがある。そういった日は、報告を受けているときや会議の最中、果ては食事中に意識を落としそうになったと、アーサーは久しぶりに過ごす魔法舎で賢者にこぼした。
     昼食後、腹がくちくなって丁度眠くなる時間、たった二人の静かな談話室で揃ってうとうとしだしたときのことである。
    「もしかしたら、睡眠の質がよくないのかもしれないですね」
    「睡眠の質、ですか」
     ソファに沈みそうだった賢者とアーサーは、それぞれ話す体勢、聞く体勢をとり座り直した。声を出したことによって少しばかり目が覚めたような気はするが、瞼はやや重いままだ。抗いながら、二人は互いに向き直る。
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    DONE中央主従マンスリーお題、4月に投稿したものです。
    パラロイのカイアサ
    イベスト後、たまに会うようになった二人の話。抽象的な感情を明らかにしたい、理解したい、自分のものにしたい そんな話

    実は二人が会っていた日はアーサーの設定上の誕生日が近くて、ふたりで誕生日について話す場面もありました(※カットされました)
    カインの誕生日を海で祝おうとか。VRじゃない本物の海に行こうとか。
    いずれ書きたいです
    この感情に名前をつけて 今日のアーサーは青年の姿だった。歳の頃ならきっと自分と同じくらいの、以前会ったときと比べるとおとなびていて背丈も少し高くなっている。一瞬、自分よりも背が高いのではと思い焦ったカインだったが、至近距離に来てアーサーの方が目線の位置がやや低いと見て情けなくも安堵したのだった。
    「……この姿は、気に入らなかっただろうか」
    「えっ……何でだ?」
    「様子が少し、予想と違ったものだから」
     アーサーが言うことには、年格好を合わせた方が気兼ねなく接してもらえるのではないかと思ったとのことで、期待を裏切ってしまった形になったことに申し訳なく感じたカインは少し辿々しく先程の焦燥感をアーサーに伝えた。
    「よかった! 嫌なわけではなかったんだな」
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    DONEスノウとホワイトの街歩きの話です。距離感は近い
    息をするように不穏なことを言うけど、ふたりは仲良し
    余談ですが、カカオの花言葉は 神聖、親切、片想い だそうな
    chocolat et vanille 寒空の下、二人の少年が手を繋いで街歩きをしている。一目見ただけでは見分けがつかないほどよく似た姿のふたりの少年の内、ひとりは片手にカップを持っていた。街で人気のスイーツスタンドのもので、中にはクッキーを添えたアイスクリームが二個盛られていた。
     お揃いの服、色違いのマフラーを身に着けた愛らしい少年たちを、すれ違う人々は皆振り返るが二人は気にも留めない様子でてくてく歩いている。
     そうして、少年たちは川辺のベンチへやってきて二人してすとんと腰かけると、顔を見合わせ笑みを浮かべた。
    「「北国生まれなら、凍えそうな冬でもアイスクリーム!」」
    「粋じゃな」
    「粋じゃのう」
     二人の少年―スノウとホワイトは、中央の国で任務をこなした後に寄った栄光の街で長めの自由時間をもらい、久しぶりの街歩きでご機嫌だった。このところは依頼、訓練、調査ばかりであまり楽しい外出がなかったのだが、今日は運良く用事が早々に住んだので、少し遊んでいきたいと賢者にわがままを言って聞いてもらったのだ。賢者と今回同行した他の魔法使いたちも、今ごろは街のどこかでなにかを楽しんでいることだろう。
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