中等部の入学式。
体育館と兼用の講堂に折り畳みのパイプ椅子がずらりと並べられていて、この春から中等部一年になる生徒達が座っている。
自由に席を取って良いという事だったが、すでに仲良い者同士が近い席を取ってしまっており、まばらに余った空席の中からでしか席を選べなくなっていた。
特定のグループに属している訳でも、特別仲の良い友達が居る訳でもないアラスターにとっては、どこに座るかなんてどうでもいい事だったが。それにしたって、このままではなんだか決まりが悪い。
世の中早い者勝ちだなんていうけれど、後から来た者にだって選択の自由は必要だ。
アラスターは空席の横に座っている生徒を無理やりどかして、そこに座る事にした。
「ちょっとあんた、どういうつもり?」
「先生は自由に席を取って良いとおっしゃってたので。その通りにしたまでですよ。ほら、そこ、席が空いてますよ、座ったらどうです?」
アラスターに席を取られた生徒は、不服そうにしながらもアラスターの言う通り空いている席の方に座った。当然だ、入学式の座席なんて普通はどうだっていいのだから。
ああ、またあの子か。変わってる。
クスクスと笑う声が体育館の高い天井に響く中、アラスターはいつも通りの張り付いた笑顔で壇上を見ていた。