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    Henanananhe

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    Henanananhe

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    kbdnワンドロ_183
    お題『両片思い・すれ違い』

    両片思いセキュリティ万全のマンションの玄関にキバナは一人立っていた。流石に合鍵は持っていないから正面玄関にあるオートロックでダンデの住む部屋の番号を押す。
    寝ていたら出てくれないかもしれない、けれども
    しかしたら出てくれるかもしれない。少ない望み
    かけ待っていれば、マイク越しにダンデの声が聞
    こえてきた。
    「キバナ...。なんでキミが。」
    「具合悪いんだろ?様子見にきてやったんだよ。
    ロック解除してくれ。 」
    「キバナにうつったら大変だ。だから「大丈夫だ
    って、オレさまそんな柔じゃねえから。」
    キバナの言葉に圧倒されたダンデは、渋々マンシ
    ョンのロックを解除しキバナを招き入れてやる。
    フフンと鼻歌でもでそうなキバナは颯爽とマンシ
    ョンに入り、ダンデの住む最上階へ行くため、エ
    レベーターに乗り込んだ。両手いっぱいに抱えた
    スーパーの買い物袋からは新鮮なネギが顔を出し
    ていた。





    「おじゃまします。」
    「すまない、あまり綺麗にしていないんだ。」
    「別に気にしなくていいって。」
    キバナはダンデの住む部屋に入ると、直ぐ様キッ
    チンに向かった。キバナがダンデの住むマンショ
    ンを訪れたのは今回が初めてではなかった。過去
    に数回ネズも含めて遊びにきたことがる。キバナ
    は、手にしていた大量の食料や飲み物を置き、側
    にいたダンデに日を移動させた。
    普段のパッチリお目目は何処へやら、ダンデの顔
    は赤く、息苦しそうにしている様子が伺えた。
    「熱計ったのか?医者は?薬は?」
    心配すぎて捲し立てるようにキバナが聞けば、ダ
    ンデはへへっと笑ってみせる。多分きっと医者に
    も行っていないだろうし、薬も飲んでないな。
    「はぁー」
    キバナは小さくため息をつき、ダンデの額に手を
    添えた。
    「あちぃな、熱あんだから寝てろよ」
    「でも」
    「でもなんだよ」
    素直に返事をしないダンデを見れば、キョロキョ
    ロと目を泳がせていて、何か言いたそうに口をも
    ごもごと動かしている。まさかと思い、キバナは
    目を細めながらダンデに問いただした。
    「仕事してた?」
    キバナの言葉にダンデの顔は一瞬真顔になり、口
    を一文字に引き伸ばした。
    図星だったか。キバナは再び小さなため息をつい
    た。
    「休むのも仕事なんだよ、馬鹿。んなことしてっ
    とお前ともうバトルしてやんねえから」
    「そ、な、わかった、ちゃんと休むぜ!だからバ
    トルはしてくれ。 」
    必死な形相でダンデはキバナにグイッと近寄
    り、見上げてきた。
    そんなダンデに「かわいい」なんて思いつつ、キバナは咳払いをした後ダンデの肩を掴み身体を反転させた。
    「じゃあ、言うこと聞け。 」
    返事の変わりにダンデは領くと、渋々寝室へ向か
    って歩きだした。

    いつもより元気のないダンデの背中を見ながらキ
    バナはキッチンに置いておいた袋をガサガサと漁
    り、ダンデの為に美味しいスープを作ってやろう
    と腕捲りをした。

    キバナはダンデに長い間想いを寄せていた。何年
    も片想いをし、地味にアプローチはかけてきたつ
    もりだったが、ダンデは自分の気持ちに気づいて
    く れていない、と、キバナはずっとそう思ってい
    た。ライバルで親友。良くも悪くもない立ち位置
    にいる限り、自分の側からダンデがいなくなるこ
    とはないだろうと思ってはいたけれど、いまより
    もう少しアピールしてもいいかもしれない、なん
    て最近は悩んでいた。そして今日本当はダンデを
    ご飯に誘うためシュートにやってきたのだった。
    体調の良くないダンデを放ってはおけないし、寧
    ろ世話をして少しでも自分を意識してくれたら。。なんて下心丸出しのキバナは、口をフニャ
    ッっと緩めながらダンデの為にスープを作り始め
    た。





    ガチャ

    寝ているダンデを起こさないよう、キバナは静か
    に寝室の扉を開けた。閉めきった遮光カーテンは
    外の明かりを遮り、ほんの僅かな光さえ塞いでい
    た。お陰で部屋は薄暗く、キバナからはダンデの様子が分からなかった。耳を凝らせば聞こえてくるダンデの寝息。ちゃんと寝てる事を確認し、食事は後でいいかと思ったキバナは寝室から出ようした。

    「キバナ。」
    足を一歩踏み出すと同時に、ダンデの掠れた小さ
    な声が、キバナの耳に届いた。
    普段からは想像もつかないくらい元気のないダン
    デの声に、キバナの心配は募っていく。
    暗い部屋の中、ぼんやり見える大きなべッド。
    キバナは静かに歩みを進め、ベッドの端に腰をかけた。
    「食欲ある?」
    「少しだけなら」
    「オレさまが作ってやったんだ、ちゃんと食え。
    あと薬は?どっかにねぇの?」
    「たぶんあるかもしれないし、無いかもしれない」
    「なぁんだそりゃ。まぁいい、とりあえずスープ持ってくるから飲め。腹の中空じゃ薬飲めねえだ
    ろ。」
    キッチンに行こうとキバナが立ち上がろうとすれ
    ば、服の裾をダンデに掴まれてしまう。そう強くない力でキバナは引き止められた。
    「どした?」
    一層優しい声でキバナは問いかける。
    掴んできたダンデの手を握ってやれば驚く程熱くなって、冷えたタオルなんかも持ってきてやろうとキバナは思った。

    「キバナの手.......ひんやりしてる。」
    「手が冷たいと心が温かいんだと、この前マサ
    ルが言ってた。」
    「...心が温かいのか。」
    「そ、だからオレさま超優しいだろ?お前が体調
    悪いって聞いて、わざわざ見舞いにきてやったん
    だから。」

    握っていたダンデの手を、キバナはソッと離した。
    これ以上触っていたら手に汗をかいてしまいそう
    だし、心臓がバクバク煩くてしょうがなかったか
    らだ。
    ダンデが心配でいてもたってもいられなかったな
    んて言える箸もなく、わざとらしく恩着せがまし
    い言い方をしてやった。

    「......の...」

    そろそろスープでも持ってこようとすればダンデ
    がか細い声で咳いた。あまりに小さすぎる声に、
    キバナはダンデの方に身体を寄せ「聞こえねぇ」
    と言ってやる。
    「なんだ。なんか食いたいもんで「だれにでもこんなことするのか?」

    思ってもみなかったダンデの言葉に、キバナの
    脳は一瞬フリーズした。食い気味に投げられた質
    問。まさかそんなわけない、ダンデ以外にこんな
    こ としてやるわけがない。そう思いながらキバナ
    はダンデの額に手を当てた。
    「....なんでそんなこと聞くの。」
    「...ただ気になったんだ。キミだって暇じゃな
    いだろうに、オレの面倒なんかみてる時問がもっ
    たいないだろ。」
    「そんな事気にすんな。いいからお前は黙って看病されてろ。」
    「他の...違う誰かが具合悪くても、看病しにい
    くのか?」
    「いかねえよ。」

    まだ何か言おうとしているダンデの額をピッと軽くデコピンしてやったキバナは、部屋が薄暗くてよかった。そう思いながら緩む口元を押さえ、足早に寝室から出ていった。



    スープの入った鍋を湿めながらくるくる混ぜる。
    くるくるくるくる回るスープを見つめながら、キ
    バナはポケッとした表情を浮かべていた。
    自惚れてもいいのか。他の誰かにも同じことをし
    ていたらダンデは嫉妬してくれるのか。
    「いやいや 」
    だとしたらそれは少なからず脈がある証拠だ。ダンデ本人はその気持ちに気づいていない可能性は
    かなりあるが
    「ダンデだもんなぁ。」
    あまり期待してもしかたがない。キバナは温かい
    スープわお碗に丁寧によそっていく。木製のトレ
    ーには温かいスープが入ったお枕と、買ってきた
    スポーツドリンクを乗せ、ダンデのいる寝室へと
    運んで行った。



    コンッ

    「入るぞ」
    軽いノックをしつつ寝室に入れば先ほどまで暗くなっていた部屋には窓から暖かい日差しが入っていた。
    起きているのも辛いだろうに、ダンデはベッドに
    座って、カーテンを開けてくれていた。
    キバナは手に持っていたトレーをベッドのサイド
    テーブルに置き、お碗をダンデに渡してやる。
    「食えるか? 」
    気だるそうなダンデの目をみて聞けば、ダンデは
    首を横に振るだけだった。
    「いらねぇ?味は悪くねえんだけどな。 」
    ダンデのためにせっかく作ったスープ。もったい
    ないけど、無理矢理食べさせるわけにもいかな
    い。トレーにお碗を戻そうとした時ダンデがちょ
    んちょんとキバナをつついてきた。
    何か用かとダンデを見れば、小さく口を開いたダ
    ンデがキバナをジーっと見つめていた。
    「食べさせろって」
    そんな訳ないだろうと思いながら間いてみれば、
    ダンデは小さく領くだけだった。
    あーん。なんてそんな可愛らしいことを要求され
    ると思っていなかったキバナは、一度悩んだ末、
    ダンデにスープを飲ませてやることにした。
    持ってきていた大きめのスプーンをトレーから取り、静かにベッドの端に腰をかけた。スプーンで温かいスープを少しだけすくい、ダンデが火傷しないようキバナはフーフーと冷ましてやる。
    普段の半分程しか開いていないダンデの目は黙っ
    てキバナを見ていて、特別何かを言うこともなか
    った。
    「ほら。 」
    冷ましたスープをダンデの口に運べば、ダンデは
    ちょっとずつ、スープを口にした。
    「........うまいな」
    「当たり前だろ」
    嬉しくて、照れ隠しな返事しかしてやれない。好
    きな奴が目の前にいて弱々しい姿をしている。早
    く元気になっていつものダンデに戻ってほしい。
    ただそう願いながら、キバナはダンデにスープを
    飲ませてやった。



    「ごちそうさま。ありがとう。」
    「気にすんな。それよか薬飲まなきゃだろ、お前
    いつも何処にしまってんだよ。 」
    「そこに棚があるだろ?救急箱があるんだ、中に
    薬があるかは忘れたけどな。」
    「あれだな。ちょっと中見てみるか。 」
    食べ終えたお椀をトレーに戻すと、キバナはゆっ
    くりと立ち上がりダンデが指を差す方に向か
    って歩きだした。棚の何処かにあるはずの救急箱。
    「ここかな」
    木製のシンプルに作られている棚は、上段が本棚
    になっていてポケモンに関するほんがズラリと並んでいる。下段は引き出しになっており、六つ
    の収納スペースがある。
    この中の何処だろうかとキバナは悩みながら一つ
    ずつ引き出しを引いていく。
    「ここじゃねーな。 」
    それらしき箱を見落とさないようきっちり引き出
    しの中を確認していく。必要最低限の物しかしま
    われていない引き出しの中。四つ目の引き出しを
    引くと、白い箱が入っているのが見えた。
    「これかな。」
    救急箱のような箱を見つけ、キバナは何の疑いもなくその箱を取り出した。
    鍵もなにも付けられていない何の変哲もないただ
    の箱。片手で器用に持ちながら蓋を開けると中に
    は薬とかかけ離れていた物がしまわれていた。
    「??」
    薬の類かなにかしらが入っていると思っていたその箱には、綺麗に折られた紙が数枚しまわれて
    いる。特別な折り方をされているわけではないそ
    の紙をキバナはソッと手に取った。ダンデの私物
    を勝手に見てはいけない、そう思う気持ちと、ち
    ょっとなら大丈夫だろ。なんて思う気持ちが行き
    交いする。

    「キバナ薬あったか?」

    忘れていたわけではなかった。今同じ部屋にダン
    デがいることを思い出したキバナは、普通にびっくりしてしまい掌から白い箱を床に落としてしまった。
    「やべっ」

     ガタッ

    しまった、と思う時にはもう遅く、白い箱は鈍い
    音を立てながら床に落ちてしまった。それと同時
    に箱の中身が散乱してしまう。
    「何か落ちたか?」
    「あ、いや問題ねえ。ちょっと手が滑って箱落と
    しちまった。直ぐ片付ける。」
    キバナは散らばった箱の中身を拾おうとその場に
    しゃがみこんだ。手にしていた紙を箱に戻し床に落ちている紙を捨うと、その下から数枚の写真が現れた。
    まだ幼い顔をした少年二人が何ともいえない表情を浮かべていた。
    「懐かしいな。これ、初めてダンデとバトルした
    時のやつか」
    今から十数年前、初めてファイナルトーナメント
    に進出した日、その日チャンピオンになると息巻
    いていたキバナはダンデという少年に敗れ、そ
    してダンデがチャンピオンになった日だった。
    拾い集めた紙と写真を白い箱には戻し、キバナが
    ゆっくりと立ち上がると、直ぐ真後ろにダンデが
    立っていた。
    「なにしてんだよ、熱あんだから横になっ「キバナ。 」
    フラつくダンデをベッドへ戻るよう促せば、突然
    ダンデがキバナに近づき、キバナの胸に静かに額を寄せてきた。あまりに唐突すぎるダンデの行動に困惑するキバナ。手にしている箱を落とさないよう、バランスを取るが自慢の長い腕は行き場を無くしたままだった。
    「その箱の中.....」
    今にも消え入りそうなダンデの声。意図的に見よ
    うとしたが、結果事故に近い形で拝むことになっ
    た箱の中身。
    「ごめん、 勝手に見たらまずかったよな。」
    謝罪の言葉以外に何か言うことがある筈なのに、うまく言葉が見つからない。どうしたものかとキバナが考えていると
    「オレの.....宝物なんだ。」
    キバナの胸から額を離し、ダンデは一歩後ろに下がりながらゆっくりと口を開いた。
    「キミとの時間はオレにとって全部宝物で、ずっとずっと大切なんだ。」
    熱で火照ったダンデの顔をキバナは静かに見下ろ
    した。苦しそうに呼吸を繰り返すダンデをベッド
    に連れていこうと肩を抱き、ゆっくり一歩ずつ歩
    いていく。
    思いもしないダンデの言葉は、キバナの耳に張り
    付いて離れることはなかった。

    自惚れてもいいのかな。

    ダンデの身体に負担がいかないよう、キバナはダンデを静かにベッドに座らせた。
    手にしていた白い箱をダンデの枕元に優しく置くと、キバナは再び救急箱を探しに戻った。
    救急箱を見つけ中から薬を取り出す。まだ使えるか確認した後急いでダンデの元へ戻り、邪薬をダ
    ンデに飲むよう促した。
    「薬あったぞ、さっさと治して今度キャンプいこうぜ。そんでバトルもいっぱいしよう。 」
    「うん」
    ダンデはキバナに言われた通り薬を口に放ると、
    スポーツドリンクで一気に胃へ流し込んだ。
    ごくごく鳴るダンデ喉。足りない水分を補うため
    少々多めに胃へと入れていく。
    変な間が、二人の空間にできてしまい、この空気
    を何とかしようとキバナはダンデの手を優しく繋
    いだ。
    「手あついな。冷えたタオルいるか?」
    「タオルじゃなくて、キバナの手がいい」
    「え、あ、そう。じ、、じゃあこのままいてやるからちょっと寝ろよ。寝たら治るだろ。」
    「寝てしまったら、キバナは帰っちゃうのか?起
    きたら居なくなっているんだろ。」
    「大丈夫勝手に帰ったりしねぇから。」
    「約束だからな。」
    トロんと蕩けた目をしたダンデはゆっくりベッド
    に寝転ぶと、繋いだ手を離すことなく静かに眠り
    についた。

    ダンデが静かな寝息を立てはじめたのを確認したキバナは白い箱を手に取り再び中を開けた。
    ダンデの宝物。
    この中には自分と写る写真がある。その事実を目の当たりにし、キバナはニヤける口元をぎゅっと手で押さえた。
    具合が悪いからか、なんだかダンデは甘えているようにもみえてしまう。かわいいダンデを見る
    と、好きな気持ちがどんどん溢れて止まらなくなってしまう。

    「まいった、まじでヤバい。」

    白い箱には入った紙を読んでもいいか悩んだ挙げ
    句、一枚だけならいいだろうと勝手に決めつけキバナは箱から紙を取り出した。

    カサッ

    折り畳まれていた小さな紙を開けば、キバナがま
    だ幼かった頃ダンデに渡した紙が入っていた。
    「誕生日おめでとダンデ。次のバトルはキバナさ
    まが勝つからな  」
    ずっと昔、ダンデに誕生日プレゼントを渡す際に添えていた小さな手紙だった。その事をキバナは思い出した。こんななんの変哲もないそこら辺にある紙にかいただけなのに、ダンデはそれをずっと大事に取っておいてくれてらしい。しかも一枚だけじゃなく何枚か入っている。

    前言撤回だ。

    「脈ありだよな。完全に。」
    嬉しくて堪らなくなる。
    ふにゃふにゃに緩む口元を押さえ、キバナはダンデの頬を優しく撫でてやった。
    ダンデが起きたら言ってやろう。
    「オレさまも、お前との時間は全部宝物だ。」
    って。
    ダンデが起きたら伝えてしまおう。
    「ずっと前から好きだった。」って。
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