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    xyuuhix

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    xyuuhix

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    ぱったか

    デートプラン デートに行きたいのは本当だがマジでノープランなんだよな。そもそも今日日の男子高校生ってなにが好きなんだ?おうちデートじゃダメ?こんなくそ暑いのに出かけるのめんどくさいじゃん……。
     ああでもない、こうでもない。百面相をしながら頭を悩ませているのは、「そんなにしたいなら、俺が良いと思うデートでも考えるんだな」などと挑発してきた年下の恋人のせいだ。つまり、立てたプランが合格ラインに達しない場合、デートは一生できないということになる。
     そもそも、それなりに目立つ身なりの教師と、それなりに目を付けられている生徒だ。例えば祭りに行けば「引率係」という無理やりな言い訳が成立するが、それ以外の場所は恐らく不可能だ。夏祭りはいいなと思ったのだが、近所の夏祭りの日は生憎と仕事が詰まりに詰まっていて、一番の目玉である花火大会にすら間に合いそうに無い。せっかく行くのならば恋人が浴衣を着る姿を見たいし、その準備をするとなると近場の祭りに限られる。案自体はおそらく気に入ってくれただろうが、銀八自身の都合で断念せざるを得なかった。
     次にとった行動は、それとなく恋人の友人――はっきり言ってムカつくので友人という認識をしたくない――に、それとなく好きそうなことを探る作戦に出た。
    「最近の170cmぐらいの男子高校生ってどういうデートスポットが好きなのかな~いや、別に特定の誰かとかそういうアレじゃないんだけどさ?映画とかプラネタリウムとか祭りとか、男子高校生って好きなのかな~とかさ?」
     屋上で休憩しているときにたまたま遭遇した、サボりに徹している生徒。まるで大人げない発言を、その男が真面目に聞いたのかどうかは分からない。だが翌日、再び遭遇した同生徒は、爆弾発言を落して屋上を後にしていった。
    「晋助はナマが好きだそうでござる」
    「……俺そんな事聞いてねェけど!?」
     一瞬世界に宇宙が広がったような気がしたが、揶揄われているのだと気づくのにそう時間はかからなかった。とにもかくにも、あれ以来話が全く進まない。もうあんな挑発を受けてから一週間が経とうというのに。一体いつまでこんなことを悩んでいるのだろうか。
     ふと、あの爆弾を反芻する。ナマが好き、という言葉が仮に本当だとしたら?いや男子高校生がスキン無しでヤッてんじゃねえよ、と注意すべきだろうが、疑問が沸く。
    (そもそも経験ありなのか?どっちの?もしかして非処女とか……!?)
     瞬時に銀八の思考は、恋人の性事情に乗っ取られていった。そもそも付き合いだしてたかだか一ヶ月で、部屋に招き入れることこそあれど、相手が高校生で自分の受け持つクラスの生徒であることを考えて、一切手は出してこなかった。週末は泊っていくことが多いため、風呂上がりの姿を見る度に塵ほどの理性を総動員して眠れない夜を過ごすが、教師と生徒というハードルが無ければ、いたって健全なお付き合いというものをしていた。世間様にバレれば一発アウトだが。
     そんな相手に、セックスの経験があるかどうかなど聞けるはずもない。最近の高校生は早いと聞くし、童貞は捨てているかもしれない。だがあの性格、及び生活スタイルでセックス経験があります、と言われると非常に怪しい。ならば男との経験は、いわゆるアナルセックスの受け身になるのはどうだ。ありそうで怖い。あったとしたら、その時ナマが気持ちよかったとか、そういう可能性もあるのだろうか。
     考えれば考えるほど、既に彼の最初の男ではない疑惑が浮上してきて、一人悶絶する。処女が絶対的に好きだとか、どうせなら本当の初物というものに手を出したいだとか、そういった気持ちが無いと言えばうそになるが、それは重要ではない、と必死に思い込んでいる部分もある。――しかし、この世に自分よりも早く高杉とセックスしている男がいるとしたら、そいつを殺さないと気が済まない。ここはひとつ、直接本人に確かめてはっきりさせた方が良い。
    「あ~もうラブホでよくね?セックスしてぇよ……」
    「そうか、ならあと七ヶ月はデートしなくていいんだな」
    「ヒッ」
     耳元に響く低い声に飛びあがり、慌てて振り向く。背後に立っていたのは、相変わらずの仏頂面の恋人、もとい生徒の高杉だ。
    「なんでそうなるわけ!?デートはするだろ高杉!」
    「手は出さないっつったのはお前だろ」
    「そりゃそうだけど、ってかラブホ行くなんて言ってねぇし!?」
    「さっきの言葉はなんだよ……」
     呆れたように吐く深いため息とともに差し出されたのは、一枚の紙切れだった。紙面に書かれているのは、比較的近くにある博物館の名前。カラクリなどが企画展示にあるらしい。
    「ほら」
    「へ?」
    「はなからテメェにプラン立てる能力なんざ期待してねェ。一緒に行くのか行かないのかどっちだ」
    「行く!行きます!行かせてください!」
    「はぁ……」
     本当に呆れているのだろう。年上のどうしようもない恋人に対してなのか、自分の担任教師に対してなのかはわからないが、とにかく、みっともない姿を見せていることには違いない。好きな子の前ではかっこよく居たい、というのは男の心情だと思うが、こうも上手くいかないと、挽回の機会について考えてしまう。
     しかし高杉がこういったものに興味があろうとは。喧嘩三昧の不良という印象はとても強いが、意外にも試験の結果は良く、足りないのは出席日数だけだ。そういう実態を考えれば、天地がひっくり返っても行かないだろうと思ったのに、などとは考えないが。いずれにしても、多少駅からの距離はあるが、中は涼しくゆっくりできて、かつ一緒に居ても「出席日数が足りない補習の代わり」と言い訳が利く。
     そんな風に恋人の提案を頭の中で吟味していると、やけにこちらを見ていることに気づく。なんだよ。そう問えば、なにやら悪だくみしているような笑みを深めた。
    「来月の誕生日、一八になったらセックスしてやってもいいぜ」
     その言葉に、フリーズする。一秒か、二秒か、数十秒か。あっけからんと放たれたそれは、揶揄っているのか、それとも本気なのか、そんな判断すら簡単にはつけられない。
     銀八はようやく口を開くと、自分に言い聞かせるように返事をした。
    「……いやいや、先生と生徒だから。ただの二七歳と一八歳じゃ無いからね俺たち。先生の理性を踏みにじらないで……」
    「ふぅん……まあ、テメェがそこまで言うんならいいけど。でも……」
    ――教師と生徒でヤレんのは今だけだぜ、センセ
     艶やかな、人を惑わす声。ああ、これはもうダメだ。降参。銀八は爪ほどの理性に手を振って別れを告げて、高杉に触れた。
    「……誕生日だけ、ラブホ行かせて」
    「だけ、でいいのか?」
    「あとは先生の理性総動員させるから。絶対卒業式の日までやらねぇ」
    「その日はすんのにかよ。……ま、精々搾りカスみてェな理性で頑張れよ」
     この年下の恋人に敵う日は来るのだろうか。まあ、ベッドの上になったら負ける気しねぇけど。などと考えながら、銀八は手にしたチケットを大事に大事に財布へしまった。
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