カゼと結託「ふぇっくしょん」
身体に似合わない可愛らしいくしゃみは昼休みの屋上に響く。
「どうした?凪、そんな可愛いくしゃみして」
「昨日暖かかったじゃん」
風呂に入ったらさらに暖かくなり、寝間着を着るのもめんどくさくなり、布団もかけずにTシャツにパンツで寝こけてしまったらこのザマだと。たしかに心無しか声もいつもと違う。
「風邪か?熱は?」
「熱は無いんだけど鼻がやばいかも」
よしよしと頭を撫でて、顔に目をやる。いつもより微かに腫れぼったい目。もごもごと動いては噤む何か言いたげそうに向ける口。鼻をかみすぎたせいか少し荒れている鼻の下はなんだか痛々しい。
「ちゃんと暖かいパジャマあんのか?」
「うん、昨日はホントにめんどくさくなっただけ」
ならいいけどと両手で包み込んだ頬は暖かな日差しを浴びているにも関わらず冷えていて、ひゅーと音を立てて吹き荒む冷たい風に怒りすら湧いてくる。
「レオ、顔掴まないでよ」
「やっぱりまだ寒いんじゃないか?」
「そんなことは、」
言いかけた凪の唇は次の言葉を吐き出す前に止まり、小さく息を吸ってから俺の目を覗き込む。
「うん、ちょっと寒い」
理由ができた俺は凪の体を抱きしめて、ふかふかとしたパーカーの中の空気を潰すように体を押し付けて。凪の腕も力無く、ちょっと面倒くさそうに俺の背中に回るから、これ以上暖かくならないでくれと先程まで怒りを向けていた北風に結託を持ちかけた。
end