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    waha

    なんでも大丈夫な人向け夢とか/ぼそぼそ更新

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    waha

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    bjのお母さんとわたし

    故人 バイト先に新しく入ったパートさんと仲良くなった。おばさんは、明るくて優しくて、笑った時に見える犬歯がチャーミングな人だ。「娘が欲しかったのよ」と私を特別可愛がってくれて、私はすぐにおばさんのことが大好きになった。「娘が欲しかったのよ」が嘘か本当かは分からなかったけど、おばさんが良い人だということは確かだったからあまり気にしなかった。
     昨日のテレビの話だとか、私が大学の先輩に告られた話だとか、本当の親子みたいに何でも話した。実際に親子でもおかしくない年齢差だったし。どうやらおばさんには息子さんがいるらしいが、あまり話題に出ないので詳しくは聞いてない。
     バイトが休みの日、洗剤が安いドラッグストアに行くと同じくパートが休みだったおばさんに会った。少し立ち話をした後、昼食に誘われた。特に予定もなかったし、おばさんと話すのは楽しかったから断る理由もない。誰かとご飯を食べるのは久々なの、っておばさんは嬉しそうにしていた。その顔を見て私も嬉しくなった。
     団地というものに足を踏み入れたのははじめてだった。並んだ郵便受けも乱雑な自転車も、まるでコピペされたような単調さだった。おばさんの部屋は5階で、首筋に汗を光らせながらエレベーターが無いのを嘆いていた。スーパーで買った食事の袋を半分持って、コンクリートの埃っぽい階段を並んで歩く。
    「狭くてごめんねぇ」
    「いえ。お邪魔します」
     案内された部屋は少し暑くて、食材を冷蔵庫に入れるおばさんに頼まれて扇風機をつけた。他人の部屋に入るとどうしてもソワソワしてしまう。
     生活感のあふれる整理された部屋。仏壇にはカップ焼きそばが供えてあった。供物にしてはジャンキーだなぁと思いながら飾ってあった写真立て見ると、黒い長髪の男の子が犬歯を見せて笑っていた。はじめて見る男の子なのにもう何回も会ったことがあるみたい。目が離せなくなる。背後から私を呼んだおばさんが、私の様子に気付いて隣に立った。
    「息子なの。生きていたらあなたと同い年かなぁ」
     おばさんが何か言っているのをずっと遠くに感じて、不規則に脈打つ心臓の音がハッキリと耳元で聞こえる。私から生まれる駆け足のオーケストラは、きっと救いようの無い恋心の誕生を嘆いていた。
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