【カイオエ】生きて、元気に暮らせ カインがツリーナッツ類のアレルギーだったということは、周囲の大抵の人物が知っていた。ハイスクールの友人はもちろん、教師も寮監も直接関わったことがない近所のキオスクの店員も把握していたほどである。
ナイトレイ一家はカインが寄宿制学校に編入すると同時に、古い持ち家を売却して引越しをしているが、当時公立小学校に通っていたカインが、クリケット大会で振る舞われたパイ料理を食べ、隠し味に使われていたアーモンドペーストで発作を引き起こし、みるみるうちに顔面蒼白と呼吸困難に陥って救急車で運ばれたエピソードは、近隣では知られただったそうだ。
そうでなくとも、カインは有名な子どもだった。ごく平凡な家庭に生まれたが、常に恒星のような輝きを放っていた。運動神経がよく、あらゆるスポーツの代表になった。快活な性格で友人も多かったし、整った顔立ちで女の子にも人気だった。誰に対してもわけ隔てなく接し、いじめや不正を嫌った。人の上に立つよりは、人の中心に立つことに長けていた。その光は成長と共により明るさを増す。未来永劫愛し、愛される人生を送るのだろうと、誰もが確信していた節がある。
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