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    masasi9991

    @masasi9991

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    冬眠前の大ガマさん 土ガマ

    ##妖怪ウォッチ

    晩秋に


     夜にもなると少し冷える。夏は終わって、秋はあっという間に過ぎる。もうそろそろ冬の足音が聞こえるようだ。
     こう寒いと神経が鈍くなる。オレはどちらかというと夜に強い方なので、こんな冷える夜でも目ばかりは覚めているのだが。
     ぼんやり見上げる月が真っ白だ。十五夜はもうふた回り前になる。今夜の月は、冷えた空気の中で強く白く光っている。その強い眩しさに、どうしても頭に思い浮かべてしまうのは、あいつのことだ。どうにも似ているような気がする。土蜘蛛に。
    「大ガマ」
    「ゲコっ」
     急に声が聞こえて、びっくりして後ろにバタンと倒れた。天井でLEDの真っ白いライトがまるで昼間のような光を放っている。その中ににゅっと、土蜘蛛の顔が割り込んできた。
    「いつから居たんだ?」
    「なに、今しがただ。珍しがっておるようだな。たまには吾輩の方から、驚かしてやろうと思ったまでよ」
     と少し早口に弁明めいたことを言って、咳払いを一つ。
    「勝手に人の屋敷に上がるのは、日頃ならばお主のやることだが」
    「オレが来るたび、あんたは驚いてくれてたのか?」
    「いつも驚き呆れておる」
    「なんだ、素直じゃねえなあ」
     顔を見るのは久しぶり、ということもない。一日と日を置かず、顔を合わせる仲だ。しかし近頃夜がこの寒さだから、昼間に逢うばかりで閨からいささか遠のいていた。
     生来のオレの質だ。冬は、動けない。
    「オレが逢いに来てくれると嬉しいし、近頃は来ないから寂しい。と素直に言えばいいじゃねえか」
    「そのような理由で来たわけではない」
    「なんだ?」
     問いかける。が、間がある。もったいぶって答えない。
     仕方がないから起き上がって、この意地っ張りを問い詰めてやろうかとも思ったが、身体を動かすのも面倒だ。まだ今夜は動けないほどの寒さではないが、面倒臭さのほうが勝った。
     上体だけ起こして、床を這って、すぐそこの、寝っ転がっていたオレの枕元で偉そうに正座して、腕を組んでふんぞり返っているやつの、膝の上に頭を乗せる。腰に腕を回してしがみつく。逢いに来てくれたこいつに、大サービス。
     にしても、今夜はこいつの人間じみた体温の熱が、ことさらありがたい。
    「そろそろお主が眠るころであろう」
    「ん、そうか。そういうことか。せっかちな野郎だな」
    「は?」
    「寝るにしたってもう少しロマンチックな誘い方ってもんがあるだろうよ。それか酒でも手土産にさ」
    「そういうことではない、のだが」
    「わかってるよ」
     土蜘蛛の背中に、しがみついて、のろのろと、起き上がろうと試みる。そのオレの背中を土蜘蛛が抱きかかえて、支えて起こす。優しいところもあるじゃねえか。
     くんずほぐれつ、とまではいかない。しかしお互い薄着の、肌と肌が擦れあった。ゆるい帯紐で縛った襦袢がずれた。冷たい夜風が肩に触れる。
    「もう少し起きていたいんだよ、ほんとは」
    「しかしお主の本性のためならば仕方あるまい」
    「まあな。でもこうして逢いに来てくれりゃ、ちゃんと相手はしてやるぜ。そのときばかりは起きてやるから」
     むっつり黙って返事をしない。当然だとでも思っているのか、それともオレの健気さに心を打たれているってことか?
     ともかく冬ともなればこんな調子だ。開けっ放しの窓から冴え冴えしい月が見ている。今夜はこれからもっと冷え込みそうだ。しかし今から身体も熱を持つなら、丁度いいだろう。


    (了)
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