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    masasi9991

    @masasi9991

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    事後の土ガマ

    ##妖怪ウォッチ

    赤裸の肌を覆う

     ふと、目覚めれば朝であるらしい。既に開け放たれた縁側から白い陽光と風が座敷へと入り込んでいる。我が糸を張り巡らし網の巣へ、何んの遠慮も知らず入り込んで来る様が、あれによう似ておる……などと栓もないこと、陽の光にまでそんなことを考える阿呆らしさ、まだ己は寝惚けているらしい。つらつらとめどなくしようもなく考え、最後に一体誰がそこを開け放ったのか、という疑問へと至った。
     至ったが、すぐに答えを思い出した。あれの他には居らぬではないか。
     天井ばかりを見つめた頭をふと傾けて姿を探す。縁側から差し込む陽に長い影が差し挟まれている。
     起き上がろうか。億劫だ。まだどうにも気怠い朝。横に寝返りを打ってどうにか少し上体を起こし、立てた片肘に頭を乗せた。
    「あんたがそうだらしねぇのは、珍しい」
    「うむ」
     我ながら寝惚けた返事だ。しかし此れも大した話はしておらぬのだから、別に構いはせぬであろう。
     吾輩に背を向け、庭を眺めていた大ガマが、首を傾け振り返る。真っ白の陽に当たって白く輝く頬が透けて見える程だ。瞳は、笑っている。しかしすぼめた唇からは、薄っすらと白い煙を吐いている。
    「借りてるぜ」
    「似合わんな。お主のような若造では様にならぬ」
    「そうかね。これでも粋で通った男だぜ」
    「どこをだ?」
     ぷっと吹き出す。思わず鼻で笑ってしまった。しかし此れも機嫌は良いと見えて、同じ様につられて肩を震わせ笑っている。
     その背中、差し込む陽の影、灰色の影に覆われた金襴の羽織が、揺れて金糸を瞬かせる。
    「だが其れは、似合っておる」
    「あん? 此れか」
     相槌。あぐらの足をほどきつつ、くるりと周ってこちらを向き、座敷に膝をついてにじり寄る。
     握った煙管は縁側に置かれた盆に戻して、煙の香る吐息を吐いて吾輩を見た。
    「借りてるぜ、こっちも……。此れには文句は言わねえのか」
    「お主の着物を引き裂いたのは吾輩であるからな」
    「ああ、ちゃあんと覚えていやがったか。貸しにしとくぜ。後でどうにか返してくれよ」
    「その羽織をくれてやろう」
    「昨日あんたが着てたモンだ」
    「よう似合うておる」
     裸に羽織を一枚、袖を通し、前も締めずに肌を晒し、寝床に転がる吾輩をおかしそうに見下ろしている。赤地に金襴の文様が眩しく、青白い肌に映えている。赤裸に布地一枚では馬子にも衣装というわけでもないが。
    「勘弁してくれ。これだけじゃ帰れねえよ」
     ゲコゲコと本性を露わに笑う様、やはりよほど機嫌が良いらしい。


    (了)
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