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    masasi9991

    @masasi9991

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    土蜘蛛さんと小さい大ガマさん出会ったばっかりの頃

    ##妖怪ウォッチ

    居候


     さてその姿になってから、幾日か過ぎた。
     これが見た目の通り只の大蛙ではなく、妖怪か、はたまた別の何かであるのか、それについては薄々感ぜられていたことではあるけれども、あの日このような姿に変わってからは疑いようもなくなった。
     妖怪である。人の子の姿に化ける。どこにでも居るものではないが、驚くほど珍しいというわけでもない。化け蛙だ。
     正体がわかれば不思議でもない。得体の知れぬ蛙にいつまでも居座られるのはどうにもこうにも納得がいかぬものであったが、こちらと同じ妖怪となれば少しは気が許せる。
     とはいえまだ幼いこれには、小難しい話も通りそうにないが。
     しかし、突如として人に化けたものだから、未だこちらが慣れぬ。当人はまだ蛙のつもりらしく、朝起きると吾輩の額の上に腹を乗せて寝ていたりする。それが只の大蛙であるならヒンヤリとするだけで大した問題でもない。しかし実際は、五つか六つか、そのくらいの童の姿なのである。ズシリと重い。鼻も口も息が詰まる。目を開けようにも開けられない。寝惚けながら振り落とし、起き上がってみると見慣れぬ童が、まんじゅうのように丸まって座敷の上に転がっている。吾輩が振り落としたために、畳の上をころんころんと転がって……まだ眠っている。唖然。
     未だ慣れず、朝のたびに唖然とする。ややあって、あの大蛙だ……と思い出し、寝惚け眼を擦って見れば、「ゲコゲコ」などという寝言を呟いていたりする。
     まだあちらも慣れぬ姿で、声ばかりは本性を隠すことができないらしい。
     ここのところ、朝も早くからこのような調子だ。日が昇りこれが目覚める頃になれば、さらに騒がしいことになっていく。
     追い出さぬのか、とあちらこちらから問われはする。特に長く吾輩に付き従う者たちが、ときに呆れて、ときに笑いながら、問うてくる。
     そうしても好いが、そうせずとも好い。
     この勝手に住み着いた居候が害となることはそうそうあるまい。それに面白くもある。吾輩の座敷に入り込んで、ただ昼寝をしているだけの妖怪なんぞ、ついぞ出逢ったことがない。
     だがただの蛙だ。家主に断って住み着く蛙も居らぬであろう。そういうものだ。
     さて今朝も吾輩は一人、寝床から起き上がって一通り驚いた。そして子蛙はいつもと同じく床の上をごろんごろんと転がりながら夢うつつに眠っている。
     今日は吾輩の枕元まで転がり戻ってきたようだ。そして仰向けになって、手足をだらんと大の字に伸ばす。これは春の陽気のせいだろうか。これまでは腹を内側にして丸まっていたが、それは昨日までの激しい寒さを凌ぐためだったのかもしれない。すると吾輩の額へ乗り上げていたのも? 他にやりようがあるであろう。
     などと考えていると、仰向けの子蛙の目が急にパチクリと開いた。
    「起きたか」
     声をかけると、喉をごくりと鳴らす。ゲコ、と高く一声鳴くかと思ったら。
    「つちぐも!」
     なんと今日は言葉を発した。無論、妖怪だ。妖怪なら、話しもするだろう。これまでも耳に聞く分だけは、判っていたようだったから。
    「どこで喋ることを覚えたのだ?」
     訊ねてみると、口をつぐんで尖らせた。目は至って真剣である。しかし喉で、グ、と思わず鳴き声を漏らしていた。
     どうやらまだ練習が必要だということだ。


    (了)
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