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    masasi9991

    @masasi9991

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    いちゃいちゃを我慢するデググラ

    ##デググラ

    口移しチョコレート


    「はい、あーん」
    「うぶわ」
    「んっ、プフッ」
     チョコレートで口を塞がれたキミの一言……いや、言葉にもなってない困惑の唸り声みたいなのが、あまりにもかわいかったので吹き出してしまった。ここが小洒落たレストランでなければ、腹を抱えて笑っていたかもしれない。
    「ンワわわ、ンワワ、わなわな?」
    「フッフッフッフッ。ふふ、いや、それはキミのだから、ンフフ」
     大声で笑うのを堪えていると、どうしてもおかしな含み笑いになってしまう。これじゃ少し、いやらしい声みたいになってないかな? 周囲に訝しがられるほど騒がしくはしていないつもりだけど、でもキミのかわいいところを見つけたってのに、こっそり笑わなければいけない状況はいつも苦しい。
    「ムムム………」
     キミは不服そうに口を結んで、ついでに目も閉じてムムと唸りながら口の中いっぱいのチョコレートを咀嚼した。モグモグ、なんて擬音が浮かんで見えるほどしっかり噛んで食べている。
     キミの口で大きかったんだから、多分さっきのチョコレートは一口で食べるようなものじゃないな。一口で食べさせたのは、おれだが。キミが口いっぱいに食べ物を含んでいるのが好きだから。
    「キミが注文したコースのデザートだそうだ」
    「うーむ。とってもうまい! グランツの分は? いいのか?」
    「おれのコースはデザートなしだ。かなりお腹いっぱいになったから大丈夫だ」
    「むむ……」
     悩むデグダスの前に置かれたプレートには、まだしっかりかなりの量のチョコレートが乗っている。もしかしたらデザートの方がメインだったのかもしれないな。そんな気がしてくるほど、たくさんのチョコレートだ。そういえば最近、バレンタインやホワイトデーとかいうイベントが流行っていたから、その余り物だったりして。
     とはいえキミがこの量を食べられないというのは考えられない。元気そうだし。
    「またあーんしてやろうか?」
    「お! あー……や、それもいいんだが」
    「いいのか」
    「ウム。やっぱりな、おいしいものを前にするとな、はんぶんこ……したい」
    「半分?」
     キミの非常に深刻で重要なつぶやき。なるほど。つまりこうして、フォークで切り分けて。
     さっきあーんしたときと同じように、向かい側のデグダスの前のプレートまで手を伸ばしてみる。チョコレートの一粒をフォークで半分にカットしようとしてみたが、丸く磨かれたオニキスのように輝くそれは、ツルッと滑って皿の端まで転がっていってしまった。
    「これはちょっと難しいな」
     フォークを突き刺すぐらいならできるんだが、そこから割ろうとしてもやはり硬い。こんなに大きいのに、困ったチョコレートだ。
    「しょうがない。あーん」
    「あーん……」
     素直に開いたデグダスの口に、二個目のチョコレートを放り込む。すると口に入れたチョコレートを指差して、キミはまた何かを訴え始めた。
    「んワわ、ワワを、わわワんな?」
    「え?」
    「わなワワあ」
    「そうだな、ここではできないな。家でだったら、もらってた」
    「ンムンム」
    「おいしいかい? そうだ、持ち帰りに包んでもらおうか」
    「ン!」
     モグモグ、ついでに大きくうなずき、ごくんと飲み込む。満足そうな笑顔を顔いっぱいに広げて、チョコレートを味わいながらさらにもう一度うなずいた。
    「ムフフ。そしたらはんぶんこだな!」
     キミが嬉しそうだとおれも嬉しい。キミがおいしいと喜んでいるから、きっとこのチョコレートはとてもおいしい。楽しみだ。
     店員を呼び止めて、包んでもらう。そう時間はかからないだろうが、待つ時間もどかしくてソワソワする。いや、家に持って帰るまで、お預けだけど。
    「なあ、これってつまり、家に帰ったらキスしてもいいってことかな?」
    「ん? そんなの当たり前じゃないか。おれとおまえの仲だぞ! もちろん全てオッケーだ!」
    「ふっ、あははっ。そっか、じゃあさっきしておけばよかったな」
    「いやいや流石にここで口移しというのはいけないぞ。机が間にあって届かないからな」
    「そんな理由だったのか? フフッ、仕方がないな。ちゃんと我慢するさ」
    「よしよし。おれもそうする」


    (了)
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