もうお布団の中「珍しいな、グランツ。おまえがおとなしくお布団に入っちゃうなんて」
「その言い方だといつもおれが暴れてるみたいじゃないか」
お布団に潜っていたグランツが、ひょいっと顔を出して含み笑いをした。ニコニコの口元からこぼれそうな笑顔がとてもいい。寝る前だというのに、おれはとっても元気いっぱいになってしまう。
「確かに、グランツは暴れたりしないな。むしろ……」
「むしろ?」
「いや、なんでもない!」
むしろ暴れてるのはおれの方じゃないか? なんてことを口に出しそうになって、ちょっとお恥ずかしくて慌てて口を結んだ。
反省……してはいるのだ。いつもいつも。反省を次につなげよう。
「デグダス」
「おっと。お邪魔いたします」
グランツがポンポンっとお布団を叩いて呼んでいる。今なんだか変なことを言ってしまったかな? 吹き出してしまったグランツをちょっと押しのけて、いや決してあっちに行って欲しいわけではなく、このベッドはお二人用のダブルベッドのはずなのにどうしてかちょっとばかり狭いので、どうしてもよっこらせどっこいしょとばかりに間を詰めて入らなければいけないのだ。
そうしておれがよいしょよいしょとグランツを抱きかかえつつ寝る姿勢を整えている間にも、おれの胸のところでグランツはクスクスと笑っている。洗いたての髪がもしょもしょしてくすぐったい。しかしおれの胸毛もグランツのお鼻のあたりをもしょもしょしていそうなのだが、大丈夫だろうか。
「よし、寝るぞ。お休みの時間だぞ」
と声をかけても、まだまだクスクス笑っている。肩を抱いてポンポン。それから頭をよしよし。しかしまだ笑いがとまらないらしい。
「いったいどうしたんだ? 思い出し笑いか? 今日は、なにがあったかな」
「フフッ……思い出し笑いというか、ふふ」
「今日……ウーン、今日はアイスがおいしい日だった。あっ」
「ンフっ。どうした?」
「アイスを落としてしまったんだった……。コーンの上から、コロンッと」
「あはは。思い出しがっかりなんてしないでくれよ。おれのを半分あげたからいいじゃないか」
「おまえが選んだアイスもおいしかった。しかし、落ちてしまったアイスに申し訳なく」
「ふっふっふっふ。明日もアイスを買いに行こうか」
「そうだな、そうしたい! 明日もきっとアイスにふさわしい日だろうしな」
「明日は落とさないように気をつけよう」
「もちろん!」
「ふふ。そういえば、あの店で」
ニコニコのグランツが何かを思い出して、また思い出し笑いが始まった。おしゃべりが楽しくてなかなかおやすみなさいの言葉が出ない。もうお布団の中だというのに、夜ふかしの予感がする。