ハロウィンの準備「ボクって何を着ても似合っちゃうからさ」
「だから?」
「何にしよっか迷ってるんだよね。レッドはどれがいいと思う?」
言葉だけで選んで! って言ってもどうせどれもピンと来ないとか言い出しそうだから、ボクは先手を打って持ってきた衣装をよく見えるようにベッドの上に並べ始めた。さすがに目の前にあれば、これとかあれとかぐらいは答えるだろう。ボクはレッドのことよーくわかってる。
「なんだこいつは? どこから持ってきた」
「ハロウィンの仮装だよ。ほとんどレッドアラートのみんなのお下がりだけど、これは新しく買ったやつ! これが一番似合うと思わない? かっこいいし!」
「ハロウィン。そうか」
「いや、そうかじゃなくて」
完全に忘れてた、みたいなのはいいとして、なにか思いついたみたいなその顔は? 選んでって言ってるのにやっぱり聞いてなくて、ボクとたくさんの衣装を置いといて棚の中を探り始める。何? と思ったらすぐに戻ってきて、
「ほら、手を出せ」
「ん?」
言われた通りに両手を出したら、その上にコロンと飴玉が落ちてくる。
「なにこれ」
「ハロウィンだ。いたずらはするなよ」
「ハロウィンは十月三十一日! 今日じゃないよ!」
「お菓子が欲しいならいつだっていいだろうが」
「良くない! しかもそこに置いてるお菓子なんてなんにもなくてもいつも食べてるやつじゃん! もっとちゃんとしたお菓子が欲しい! ボクが当日仮装してトリックオアトリートって言いに来るから、そのときまでに準備しといてくれないとヤだ!」
「注文が多すぎる」
「そーでもないよ。まずこの中からボクに着て欲しいのを選ぶ! そのあとハロウィンにボクにくれるお菓子を買いに行く。そしてそれを当日までボクに見つからない場所に隠しておく」
「注文が一つ増えたな……」
「気のせいだって。ほらほら、早く選んで」
ここまで催促してやっと重い腰を上げた。全く世話が焼けるんだから。とりあえずこの飴玉はもらっとこ。