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    masasi9991

    @masasi9991

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    masasi9991

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    道流さんのドラマを見てるタケルと牙崎漣の道タケ漣

    ##道タケ漣

    言を食まず 一眠りして起きたのに、チビがまだ同じモンを見てた。
     寝る前と全く同じ体勢だ。テレビの真ン前に陣取って、ちゃぶ台の上に両手を組んで前のめりに見ている。オレ様が居るのにもキョーミねーみたいだ。
    「よくそんなつまんねーもん見れるな」
    「は?」
     急に話しかけられて一瞬ビビったように目を丸くしたが、すぐに落ち着いてめんどくさそうにオレ様の方を見た。
    「今いいところなんだ。邪魔すんな」
    「どこがだよ」
     返事の代わりにチッと舌打ちをして、視線をまたテレビに戻した。
     らーめん屋がいる。テレビの中にだ。いつものマヌケ面じゃなくて、変な顔だ。マジな顔。それが画面いっぱいに映っているから、やっぱそれはマヌケだ。囁くような声でセリフを言う。それをチビが必死に見てる。
     バカバカしくて目をそらした。
    「こんなの演技だろ」
    「わかってる。勉強になるから見てるんだ。円城寺さんの演技も、相手役の方も……」
     チビの言葉に釣られてまたテレビに視線を戻してしまう。……キスシーン、だ。多分。もうらーめん屋と女の腕しか映ってねーけど。
    「それだけじゃねーって顔してるぜ。チビはガキだな! 顔赤くなってんぞ!」
    「なってない。だいたいオマエにだけは言われたくない。オマエは他人のキスシーンすら直視できなかっただろ」
    「んなの覚えてねェな。どっちにしろ演技なんざどーでもいい。チビはガキだからヤキモチ焼いてんだろーけど!」
    「あ!?」
     ズボシだったのかチビがちゃぶ台を勢いよくぶっ叩いてオレ様を睨んだ。目線が揺れている。その狼狽えた目でチビは盗み見をするようにテレビへ視線を泳がせたが、そのときにはもうとっくに次のシーンに移っていてらーめん屋も女もいない。
    「……嫉妬じゃない。少し変な気分なだけだ……。オマエはなんとも思わないのか……」
    「だって演技だろ、あんなのは。らーめん屋、あんなこと言わねェし、しねェし」
    「今回の役、結構円城寺さんの素に近い気がする。セリフも表情も自然体だ……そう見えるってことは、円城寺さんの演技がこれまでよりさらに進化してるってことかもしれないけど」
    「知らねぇ。意味わかんねー。普段のらーめん屋はあんなんじゃねーよ」
    「さっきのセリフ、言われたことあるだろ」
    「ハァ? さっきっていつの」
     言いかけて、慌てて口を閉じた。嫌な予感がする。
    「『愛してる』」
     似てねぇ。腹立つ。でも似てても、ムカつく。
    「寝てたからンなの知らねーし」
    「俺は言われたことある」
    「ア!? だから何だっつーんだよ! オレ様はンなキメェこと言われたことねー!」
    「ある。俺は聞いた」
    「勝手に聞いてんじゃねぇ!」
    「聞こえる距離だったんだよ! オマエでもそのぐらいわかるだろ! だって、だいたいいつも一緒に……してる」
    「ああいうときにらーめん屋が一人でごちゃごちゃ言ってることなんざ覚えちゃいねぇ」
    「じゃあさっきのドラマの円城寺さんのセリフが演技かどうかオマエにわかるはずがないだろ」
    「ハ、ハァ? ああいうのは全部演技だって下僕が言ってたし、ソレ以外も全部いつものらーめん屋と違ェだろーが! らーめん屋はあんな服着てねぇ」
    「でもキスの前のセリフはこの間オマエに言ってたのと同じだった」
    「あれはあんなキメェ言い方じゃなかった! らーめん屋はもっとウッゼェ顔でグダグダグダグダ一人で喋ってたっつーの!」
    「……覚えてんじゃねーか」
    「?」
     しまった、と思った。静かに呟いたチビが上目遣いにオレ様を睨んだ。……いや、だから何だっつーんだ。別に、らーめん屋が言ったこと覚えてんのも、それをチビに知られたのも、どーでもいい。
     そのはずなのに頭が熱い。
    「俺の気持ち、わかっただろ」
    「なんでそうなるんだよ。知らねーし……。つうか、だったら見なきゃいいだろ」
    「オマエだって、寝てるふりして聞いてたんじゃないのか」
    「ンなわけねえ! オレ様が寝てるふりなんかするわけねーだろうが! 勝手に決めんなバァーカ!」
     ムカムカする。テレビの中ではらーめん屋がまたわけわかんねぇセリフを言っている。つまんねー、退屈なドラマだ。らーめん屋の言ってたこと思い出すのもムカつくが、わざわざこれを見続けてるチビにもムカつく。
     腹立つから無視して寝てやろうと思って、もう一度畳の上に倒れた。
     だがそれから、目を閉じる前にガチャガチャとドアの鍵が開けられる音がした。やっぱり嫌な予感しかしねぇ。



     思った通りだ。うるせえ。
    「そんなに真剣に見てくれてたなんて、照れるな。自分で見てもかなり新しいことに挑戦できていた、とは思う」
    「真剣にっつーか、むしろ逆……じゃないか。さっきも言った通り、下心というか……なんっつーか……」
    「どんな理由であれ、のめり込んでくれてたんだろう?」
     何がおかしいんだか、らーめん屋はそのうるせえ声で上機嫌に笑った。
     チビはバカだから早々に見てた理由を白状しちまっている。恥ずかしくねーのか? ああ、らーめん屋にとって笑えんのは、そうかもな。チビのヤキモチなんて、チビらしく小さすぎて笑えるぜ。
    「それに、妬いてくれるのも嬉しい。こんな自分を器の小さな男だと思うか?」
    「いや……それはこっちのセリフだ。円城寺さんが迷惑じゃないなら、よかった」
    「あはは。だけどお芝居はお芝居だぞ。いつもお前さんたちに言うのとは、全然違っただろ?」
    「頭ではわかってんだ。でも円城寺さんの演技を見てると、理屈を飛び越えて本物に見える瞬間がある」
    「褒め過ぎだ」
     いつまで同じ話してんだ。いい加減聞き飽きた。そう思ってたら、急にチビもらーめん屋も黙りやがった。ガサゴソ音がする。布が擦れる音。
     うぜぇ。鳥肌が立ちそうだ。
    「タケル、あー、あの、……なんだ」
    「円城寺さん?」
    「えっとな……いや、演技と本気の違いを実践してみせようと思ったんだが……そんな理由で口にする言葉ではないな。それに演技じゃなく本気で言う方が、緊張する」
    「円城寺さん……」
     また、コイツラ黙りやがった。つうか、音が。寝てるオレ様の横で何、やってんだ。音だけじゃわかんねぇ。目ェつむってるから見えねぇ。
     どーでもいいけど! コイツラさっさとどっか行かねぇかな。クソ、ここがらーめん屋んちじゃなけりゃァなァ。
    「こんなに、お前さんたちのことをかわいいと思っているのに、いざきちんと口にしようと思うとなかなか出てこない。演技では言える、ベッドの上でなら言える……というのは、ちょっとよくないな」
     何がベッドだよ。いっつもタタミか布団じゃねーか。
    「自分はもっと、ちゃんと言葉にすべきだった」
    「俺は……いつも充分、言葉にしてもらってると思う。なのにこれ以上円城寺さんにそういうこと言われると、ど、どうにかなりそうだ……」
    「自分が言い足りないんだ。タケル」
     ああクソ、何言ってんだ。らーめん屋がうぜぇ囁き声になって、よく聞こえねぇ。そうだオレ様は何も聞いてない。コイツラのことなんか無視して、寝てる。そんだけだ。
     さっきのドラマの演技なんかより、ずっとゾワゾワする。らーめん屋のそういうセリフ、オレ様が言われてるワケじゃねェのに……。
     ゾワゾワすんのは、チビの方にもだ。チビがらーめん屋となんかやってる。どーせキスか、なんか、だ。音だけでわかる。クチャクチャクチャクチャ、ずっと、そういう音が聞こえる。喋ってんのよりうるせぇ。合間に聞こえる、セリフにもならねー息の混じった短い呻きも、うっとうしい。
     チビがなんか言われてなんかされて、荒い息を鳴らしているのを聞いてると、どういうわけだかオレ様の身体も同じ反応をしそうになって、たまらなくゾワゾワする。
     ぜってーオレ様は言われたくねーしされたくない。ゾワゾワすんのがおさまらなくなるんだ! それでらーめん屋は喜んでんだから、ムカつくぜ。チビの言ってたどーにかなりそうってやつ。
     早く終われ。
    「円城寺さん、さっきのその……かわいいってやつ、俺、かわいくはねぇから腑に落ちないんだけど……嫌、ってわけじゃなくて」
    「いいや間違いなくタケルはかわいい! 漣もかわいい! ファンは皆そう思ってるぞ。何より自分にとっては、世界で一番だ」
    「そういう円城寺さんの方がかわいいと俺は思う……。でもそれ、起きたらコイツにも言ってやってくれないか。コイツもいじけてたみたいだったから」
     ハ? チビ、今なんつった。
     起き上がってぶっ飛ばしてやろうかと思った。だがあまりにも意味わかんねーチビの発言に、頭が一瞬凍りついていた。だからまだ殴ってねぇ。今からでも泣かすか?
     だが、そうすると……。
     目を閉じて、動かないまま考える。オレ様は今寝てる。寝てるんだ……。
    「漣、起きてるんじゃないのか?」
    「さっき、『オレ様が寝てるフリなんかするわけねーだろ!』って叫んでたから寝てるはずだ」
    「あっはっはっはっは」
     ンだよ今の笑い方! 何がおかしいんだ。チビもチビのくせに余計なこと言いやがって!
    「れーん。そうか、漣もヤキモチ妬いてくれてたのか。嬉しいな」
     やめろ。だんだんらーめん屋の声が近づいてくる。それだけじゃない、暑苦しさでも、わかる。
     そもそも最初ッからオレ様の隣に座り込んでやがったんだ。そこに居るだけで暑い。近づかれると、さらに確実に暑くなる。
     オレ様の横に腕を付いて覆いかぶさるように見下ろしている。そういう気配がする。
     寝返りを打って躱す。
    「漣になんて言おう」
    「それ俺に聞くのか? ……まあ、だから、かわいいとかでいいんじゃねーか。かわいくねーけど」
    「そういうところが漣もタケルもかわいいんだ。はは、もちろんそれ以外の部分もな」
     ホントに意味わかんねーな。オレ様は何も言ってねぇっつーの。
     とにかく、転がって避けてもらーめん屋のヤツが付いてくる。なんでこの部屋こんなに狭いんだ。これ以上回転したらチビにぶつかっちまう。
    「ソイツ、円城寺さんにあんまそういうこと言われねーって拗ねてた」
     言ってねえ! なんでそうなるんだよ! 好き勝手言いやがって。
    「だって漣、あんまり言わせてくれないんだ」
    「今なら完全に寝入ってるみたいだからちょうどいいんじゃないか」
     チビのくせに、何がおかしくて笑ってやがる。それも大声出してバカみてェに笑うならまだしも、その、なんだ、その、クソ、どーせしまりのねぇ寝ぼけたような顔してやがんだろ!
     らーめん屋はどんどん近づいてくる。気配がうるせえ。
    「漣」
     耳元で囁かれた。低い音の振動と、暑っ苦しい息が神経に触れて全身にゾワゾワが走り抜ける。いてもたってもいられない。ンだこれ、どうすりゃいいんだ。いつもわかんねぇ。いつも、わかんねーでいるうちに、らーめん屋が勝手に。
     クソもうどーでもいい! 勝手にしやがれ! あとでやり返してやる。
    「漣、普段伝えきれていないけど」
     同じこと何回も聞いてるっつーの! むしろ多すぎるんだよ。
     オレ様は寝てるから、何かにしがみつくワケにもいかねぇ。しょうがねーからタタミに爪を立てて、らーめん屋のうぜぇ話を聞いている。
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