幸せの重量 どしん、とベッドが重く沈む瞬間が好きだ。
「今なんだか怪しい音がしなかったか!? み、みしん、みしんみしん……と!」
「あっはっはっはっは! ミシミシって? ちょっと軋んではいたけど、大丈夫じゃないか? このビレッジに引っ越してきたときに新調したばかりのベッドだぜ」
「むむ……そうなるともう何年も前か……」
「あれ? もうそんなに前になるのか。キミと一緒だと時間が経つのもあっという間だ。とはいえベッドの寿命にはまだ早すぎるんじゃないかな」
「そうだろうか。そうだといいんだが」
柔らかいマットレスがキミの重みでずしんと沈む。先にベッドに入って待っていると、後からやってきたキミの方にころんと転がる。
こんななんでもないちょっとしたことも、キミと一緒に居て幸せを感じる瞬間の一つ。
「キミの心配性は大好きだが、それがベッドにまで向けられているかと思うとちょっと妬けてしまうな」
「だって寝ている間にベッドが壊れてグランツが怪我をしたら大変だろう!」
「あはは、そうなったら話のネタとしてかなり面白いな」