竜ノ嫁入リ「大般若、小竜の支度が終わったようだよ」
「ああそうかい、知らせてくれてありがとう。今行くよ」
初期刀の蜂須賀から知らせを受け、大般若は審神者の部屋へと向かう。
「主人、入ってもいいかい?」
「大般若だね、どうぞ。今日の小竜、とっても綺麗だよ」
入室の許可を得て襖を開く。室内には審神者と共に、大般若と恋仲である小竜がいた。
「やあ大般若。支度が終わったらキミに一番に見せたくてね。どうだい?俺の晴れ姿は」
恋刀の訪いに振り向いた小竜は戦装束でも内番着でも軽装でもない。
彼はその長身に白無垢と綿帽子という伝統的な花嫁衣装を纏っていて、にこりと笑ってみせた。
「ああ、あんたはいつも美しいが今日は特別に綺麗だよ。まさに三国一の花嫁だ」
賞賛の言葉を述べる大般若の声音はいつもより低く、硬い。常に穏やかで余裕のある表情をしている彼が、今は口元に笑みはなく、眉を寄せ苛立った様子を隠そうともしない。
「予想どおりひどく怒っているねえ」
「当たり前だろう!美しいと思っているのは本心だが、それを堪能する余裕なんか無いよ。ああクソッ、本当に苛々する……逆になんであんたはちょっと楽しそうなんだ……」
女性用の婚礼衣装を着ているにもかかわらず至って普段どおりの態度の小竜。対して大般若は眦を吊り上げ、舌打ちするほど強い怒りを露わにしている。
それもそのはず。これから純白の衣に身を包んだ恋刀が嫁ぐ相手は自分ではなく-おぞましい姿をした化け物なのだから。