戀我が本丸の小竜景光は、感情の起伏が控えめで、表情の変化が乏しい個体であった。
通常の小竜景光といえばーー基本的には人当たりの良い笑みを浮かべている。飄々としていて、自由で、掴みどころがない。喜怒哀楽の表現ははっきりしている方で、話し方は快活で、派手な色彩の装束も相まって出立ちも表情も華やかな刀剣男士だ。
しかし、つい数日前に顕現した小竜景光は笑うどころかほぼ無表情だった。話しかけたら相応の受け答えはするものの、演練で見かける余所の小竜と比べるとその話し方も声も随分とおとなしい。前述のとおり感情面も控えめなため、そもそも口数が少ない。
凪いだ海のような。あるいは精巧に作られた人形のような。なんとも物静かな男であった。
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