―目が覚めると、そこはイタリアだった。
こんなCMがたしかあったな、なんて呑気なことを思いながら見慣れないレンガの道を歩く。
(私の夢にしたら、すごい再現率だ。)
凍えてしまうほどの冷たい風も、空を差す太陽の暖かさも、脚に感じる緩やかな疲労も…まるで現実であるかのように身体にじわりと染み付いていく。
…今いるここがなぜイタリアなのだと分かったのか、正直不思議でならない。ここは人の子1人もおらず、薄暗い上に標識が全くない路地裏で一見どこにいるのかの判断材料は何一つとしてない。それでも何故か『ここはイタリアである』と、そして『ローマである』と頭では理解していた。
―まるでここに来たことがあるかのように
(…といっても、気のせいだよね。きっとローマって判断したのはあの子が好きな漫画のワンシーンだったとかでしょ。…寝る直前になに読んでたのかな。)
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