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    taegatai_

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    メモ帳掘り起こしたら出てきた宮高小説(導入)
    2016年

    予定の1時間も前に待ち合わせ場所に着いちゃって、どうやって時間を潰そうかなんて考えながらスマホを尻ポケットから取り出そうとした俺は、待ち合わせ場所近くのベンチに座っている色素の薄い髪の男に気がついた。
    「早…⁉︎ まじかよ…まだ1時間もあるし…」
    座ってても高身長なのがわかる。あれは紛れもなく宮地サン。気持ちの良い風がそよそよと吹いて、薄茶の柔らかそうな髪が緩やかに揺れていた。あんな風にムボウビにベンチに座ってたらいかがわしいスカウトなんかに捕まんねーのかな、なんて考えながら、俺はゆっくり後ろからキャラメルリボンのような頭の宮地サンに近付いてった。遅い!なんて怒鳴られて一発殴られるのを覚悟しながら(相当理不尽だ)、恐る恐る声をかけた。
    「み、宮地サン!おはようございまっす!」
    ひょこっと宮地サンの視界に入るように挨拶しながらにっこり高尾スマイルをかますと、宮地サンは怒鳴るでもなく殴るでもなく、予想外の反応をした。ほんとにムボウビすぎ。
    「…?あ、高尾、早いな」
    「……遅いって殴ったり怒鳴ったりしないんすか?」
    元々相当イケメンの宮地サンは小首を傾げて(こんなん誰がやられても瞬殺される…!)、
    「いや…俺が着くのが早すぎただけだし、まだ1時間もあるから別に怒んねーよ」
    と頭の後ろをぽりぽりと掻きながら、携帯の画面を切った。さっきまで携帯で何か見てたらしい。
    「じゃあ、早いけど行くか」
    宮地サンはそう言って、すっと立ち上がって下ろしてたバックパックを肩に掛けた。すごくサマになってるというかなんというか。かっこいい。座っててもわかるほどの身長の高さは、立ってる状態を見ると余計に思い知らされてしまう。
    「は、ハイ」
    脚が長くて歩調の早い宮地サンはスタスタと進んで行っちゃって、俺はカバンの紐を握りしめて「宮地サンはや!」と大声を上げながら追いかけた。

    俺らの乗り込んだ日曜日の電車内は私服のお父さんや小さい子供なんかがわんさか乗ってて、男子高校生な俺と宮地サンは勿論人混みの中に揺ら揺らと立っていた。
    「あの、宮地サン」
    「ん?」
    薄茶色の瞳に見下ろされる。瞳と同じ色の髪は窓から差し込む光をキラキラと反射させていて眩しかった。
    「今日、アキバ行って何するんすか?」
    そういえば予定を何も言われてないなー、と思って単純に気になったのを聞いただけだったのだが、
    「着くまで内緒」
    と人差し指を口に当てる仕草をされ俺は見惚れてしまっていた。あーもう、宮地サンかっこいい!こんなイケメンがドルオタだなんて、まさに天は二物を与えず、なのか?でも宮地サンは頭も良いし顔も良い、ほら、天は二物を与えてんじゃん。運動神経も良いし、背も高い。…ん?話が逸れちゃった。兎にも角にも、キラキラと輝いている宮地サンは心なしかいつもよりもキラキラ度が高い気がして、俺は少し嫌な予感がした。



    「ほら、着いたぞ」
    高尾を連れて徒歩数分、着いたのはアイドル関連のグッズが売ってあるホビー店。みゆみゆのグッズを買う為に何度か(本当に数回!別に通ったりはしてない!)だけ訪れたことのある店だ。
    「アイドル…ホビーショップ?」
    手開きの狭い扉を引き開けてスタスタと入っていくと高尾は「わ、まって宮地サン!」とキョロキョロしながら着いてきた。
    「しょっちゅう来てるんすか?」
    「2、3回来たことあるだけ」
    ふ〜ん、と少々口角を上げて頷く小さい後輩は可愛いがムカついた。ポカッと軽く丸い頭を殴ってやるとワァと頭を抱えて大袈裟に痛がった。
    「いっだー!宮地サンひどい…今日は何を買いに?」
    「内緒、あっち行ってろ」
    質問を重ねてくる後輩が面倒くさく思えて、俺は高尾を適当にあしらって目的のものを買いに店の奥へと進んで行った。
    そう、目的の、例のモノ。
    この店はメジャーなアイドルからマイナーなアイドルまで、様々なアイドルのコーナーが店内に設置されている。ブロマイドやうちわ、プレミアの着いたサイン入りのチェキ等々、他にもコスプレコーナーにはそのアイドルが来ている衣装と寸分狂わないようなコスプレ用の衣装やアクセやウィッグなんかも置いてある。
    そう、俺が今回目当てだったのはこの、みゆみゆがとあるアルバムのジャケットで着ていた衣装と同じコスプレ衣装だ。これを高尾に着せてやろう、これを着せて写真でも撮って…と考えている内に、俺は手早く会計を済まして出口付近で待たせていた後輩の方に戻った。



    「あー!宮地サンおかえり!この辺のブロマイドってあの、宮地サンがよく言ってる…」
    「これがみゆみゆだよ」
    「やっぱり!そーだ宮地サン、何買ったんすか?」
    「内緒」
    えーまた内緒?とわざとらしく上目遣いで宮地サンの顔を覗き込むと、宮地サンはニヤ、とイケメンで不気味な笑みを浮かべた。
    「えーこわ!何!?」
    「ちょっと着いてこい」
    「おわっ!」
    腕をぐいと引っ張られて着いたそこは、ただのトイレだった。宮地サン、トイレに行きたかったのかなぁ、とぼんやり考えていると
    「ほら、こっち来て」
    と何故か多目的トイレの方に一緒に連れ込まれてしまった。…いや、待って?多目的トイレに男2人ってやばくね?
    「え、ちょっと宮地サン?」
    「なーに」
    「いや、なーにじゃなくて…」
    宮地サンの応える声はいつもよりも楽しそうな笑いを含んでいて変に不気味だった。
    「高尾」
    「は、ハイ」
    「これ着て」
    ガサ、と渡されたのは、さっきのアイドルホビーショップで買ったらしきものの入った紙袋だった。嫌な予感的中。中身はもう想像できるわ。俺もそんなに馬鹿じゃない。
    「き…着る?俺が…?」
    「おら、さっさと着替えて。3分待ってやるから」
    どこかの誰かのような台詞を言う宮地サンは本日サイコーにキラキラと輝いてて、俺はもう逃げられないと悟った。
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