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    抹茶と塩豆大福

    リンリバ最推し本命ですがリバ受けなら大抵見るのは好き
    イーガ団も好き
    pixivに生息してますがあっちはマイピク限定
    現在190くらい作品マイピクに置いてます
    こっちのポイピクは
    幹部×構成員の話と
    ネタのメモや書きかけを置いていく予定です。
    pixivの方ではリンリバをマイピク限定で投稿してますので、気になる方はリンゴ回復派のプロフをご覧の上申請どうぞ🍎
    あまり全体公開はしてません。
    御用の際はそちらにメッセージください

    パスのヒントはスッパ様の所属する組織名
    i●●団
    ヒントも何もバレバレですねー🤣
    死ネタとかそういったものになるので自己責任でご覧ください

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    抹茶と塩豆大福

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    CP色は少なめ。
    イーガ団に入団する団員の殆どは王家や騎士に恨みがあるものや居場所をなくしたものか厄災信仰者。しかし中には全く違った理由で入団を決意する者もいる。この話はその少数派の理由で入団したまだ少女といわれる娘のお話。
    末端構成員の立場について触れたお話です。
    なんか気に食わないから後半書き直すか没にして消すか…しばらく考えよう。

    #イーガ団
    eegaGroup
    #幹部
    (executive)Staff
    #構成員

    咲き誇る花の行く末この世界ってすっごい不条理だよな
    どんなに頑張ったって結果が出なかったり
    どんなに願ったって叶わなかったり
    どんなに愛し合ってたって簡単に引き裂かれて

    俺はさ、神様なんかいないって思ってるけど
    真っ二つにされたやつに縋って泣き崩れてるこの子見てたら
    奇跡くらい起こしてやれよって
    ほんと、マジでそう思ったよ



    【イーガ団であるために】




    俺の所属する暗殺組織イーガ団には大体こんな奴らが集まってる。
    王家に恨みがあるもの。行き場所がないやつ。厄災を信仰してるやつ。
    殆どがそのどれかを理由にイーガ団なんてのをやってるけど、たまにそれ以外の理由で組織に入団してくる奴がいる。
    今回の話はそんなそれ以外の理由で入ってきた、まだ少女って言えるくらい可愛らしい女の子の話。

    そいつの名前は、というか呼び名は花構成員。いっつも俺のBARやら研究室、医療室や噂ではコーガ様や筆頭幹部の部屋にも花を飾りにいってるらしくて自然とそんな呼び名がついた。
    花構成員はもちろん変身術でひょろ長の俺たちと同じ男の姿をしてるけどれっきとした女だ。と言っても正式にそれを知ってるのは同期と履歴を知ってる医療班と指導班。コーガ様や筆頭くらいなもの。
    あとはまあ、話し方がそのまま女の子だから周りも察してるくらいだ。
    今日もきっと大量の花を抱えて俺のところにやってくるだろう。

    俺がBARの開店準備をしていたら、ベルを鳴らしながら扉が開き噂の花構成員が大量の花に埋もれながらよろよろと歩いてきた。

    「お花お届けにきましたー!」

    「お、おお。また今日は多いな。このあとまだどっかに届けんのか?」

    花を受け取りひとまずバケツに突っ込むと、花構成員は一仕事終えたような清々しさで額の汗を拭う動作をした。

    「はい!あとは医務室だけですが。今日は霞草もたくさん取れたのでかさばっちゃって」

    「今日は墓参りにも行くんだろ?廊下で転ばねーようにしろよ」

    「指導員ほど私足腰よわくないですよー」

    「俺も何もねえとこで転ぶほど弱くねえわ」

    互いに笑いながら適当に話をして、そろそろ行きますね!と元気に駆けていく姿を見送ると今まで気配を消していた後輩幹部が部屋の奥から現れた。

    「別に隠れなくてよくねえか?」

    「あまり彼女が得意じゃないんで」

    人付き合いが苦手なコイツは彼女の明るさがどうにも苦手らしく、あからさまに目の前にいる時避けたりはしないが隠れられる時は極力こうして隠れている。
    別にお子様じゃないから仲良くしなさいとか言わねえけどさ。

    「それにしても、だいぶ元気になったようですね」

    「んー…どうだろな。人の心なんざ誰も見えねえから」

    花構成員は少し特殊な事情で入ってきた奴だった。ある村で諜報活動をしていた団員が花構成員に惚れてしまい、ついには結婚の約束までしてしまった。それ自体は問題ない。家族になってもバレなければいい。
    けどそいつは結婚する前にそれがバレてしまい、花構成員を切るか自分が切られるかの2択を突きつけられた。
    それを知った花構成員は、なら自分もイーガ団に入るといいそいつが止めるのも聞かずに構成員試験を受けた。
    無謀だと思われたその行動は意外にも花構成員の能力を開花させ正式に入団。
    丸く治ったと思われた矢先、花構成員を置いてその団員は騎士に無惨に殺されて戦死した。

    亡骸に縋りながら泣きじゃくるあの姿は。今でも目に焼きついて離れない。
    結局、誰が死のうがイーガ団に入れは死ぬまでイーガ団であり続けるしかない。花構成員も同じ、ここで生きるしかない。

    「ま、空元気でも元気なことに越したことはねえからな。俺もあいつ見習って仕事するかね」

    「俺も今日から二日ほど支部の方へ任務がありますので。俺がいない間にウッカリ死なないでくださいね」

    「ウッカリで死なねえよ。お前ら俺のこと舐めすぎだろ」

    ドロンと消えた後輩幹部くん。
    寂しいとかはねえけど今夜は1人かーなんて思いながらバケツに入れたままだった花を抱えあげる。
    花に興味はないが綺麗だなとは思う。
    今日はどこに飾るかなと彷徨きながら、俺はまた準備を始めた。


    ここまでは花構成員がまだ構成員だった頃の話。
    まだまだか弱い可愛い少女らしかった頃の話。

    あの頃からさらに日が経ったある日、花構成員は幹部試験を受けると言い残して姿を消した。
    幹部試験は過酷な試験で、幹部の許可が得られるレベルでないと受けることすら許されない。
    その内容は秘匿されているが、無事に戻ってきたものは皆最初は医務室送りにされてくる。
    そして、ただの怪我ならばさっさと完治して出ていくが
    精神に異常をきたしたものはさらにその病室でケアを受けることになる。
    何日も、下手したら何年も。

    何があったかなんか知らない。一度だけ後輩幹部くんに聞いたことはあったが「最初はまあ、過酷なサバイバルのようなものです。ですが…後半は思い出したくもないような心を抉る試練です」と言葉を濁して詳しく知ることはできなかった。

    そんな試練を乗り越えて帰還した花構成員…いや花幹部は満身創痍で帰還し、病室の一つで膝を抱えて過ごすようになった。
    俺は手伝いの時もあるが義手のメンテナンスのために定期的に医務室に行くため、義手を外して待機してる間になるべく花幹部の部屋に見舞いに行くようにしていた。
    妹なんかいたことねえけど、妹みたいなやつをなんだかほっとけなくて。
    花を持って部屋に行ったら花幹部は大抵ぼんやり飾られた眺めていて、俺はその花を差し替えて話しかける。

    「今日の花はなんと後輩くんが詰んできた花だぜ。似合わねえだろー?俺はまだ見た目キュートだから似合うけどな。一生懸命選んだらしいからよ、マッチョな後輩くん想像しながら癒されてくれや」

    花幹部からの返事はない。ただ虚な目で花を見つめるだけ。
    聞いてるのか聞いてないのかそれすらわからない。けど俺は近くの椅子に腰掛けていつも話しかけた。
    だって、こいつまだ10代だぜ?ぼんやり寝たきりなんて似合わねえだろ。

    俺は身振り手振り色んな話をしてくだらないだろ?っていつも笑った。
    こんなくだらなくて楽しい毎日が待ってんだって教えてやりたくて。いっそ幹部になんかならなけりゃこんなことにならなかったかもしれねえのに。コイツは一体何を抱えて何を思ってたんだろうな。

    「なあ花幹部。前に店に持ってきてくれた花、挿木にしたら葉が増えてきたんだ。今度見にきてくれよ」

    いつかまた笑ってこれるようになったら。

    そんないつかを願って病室を出ると、後輩幹部くんと医療班のオネエ幹部が何やら話し込んでいた。
    珍しい組み合わせだなって声をかけたら2人ともどこか険しい雰囲気をしていた。

    「どうしたんだ?」

    「あ、指導員ちゃん。今この子から聞いたんだけど足抜け団員が複数名本部に侵入してきたみたいなのよ。アタシも呼ばれたから行かなきゃならないんだけど、ここ施錠しとくからしばらく留守を頼める?」

    「そりゃまあ構わねえけど。こっちまで来させんなよ?俺秒でやられる自信しかねえからな」

    「あらら。ふふふっここの扉はアタシが蹴っても壊れないくらい頑丈だから大丈夫よ」

    見事な美脚…と言ってもみんな同じ体型だけど。赤いピンヒールから伸びる脚を見せて笑うこのお姉さまは筆頭にパイルドライバー仕掛けられるほど強いお方なのでここの扉の頑丈さは折り紙付きというやつらしい。

    「腕くっつけてもらうまでどうせ動けねえし、さっさと始末して帰ってくださいな。なんかあったら幹部呼び笛吹くんで」

    後輩幹部くんにもヨロシクと手を振り見送ると外から施錠される。
    1人になると流石にする事も話すこともなくなり、診察室のベッドにごろんと寝そべると、不意に重看病室から悲鳴が聞こえた。

    ここは花幹部みたいに心を傷つけちまた奴らが廊下の奥の病室で過ごしてる。悲鳴くらいはたまに聞こえてるけど、これはそんなんじゃない。
    直感でそう感じて俺は一応持ってたクナイを手に握ると悲鳴が聞こえた方へ急ぎ向かった。
    病室特有の消毒液に混じって臭うのは嗅ぎ慣れた鉄の匂い。
    潜んだって意味はない。匂いを辿りいっきに扉を開け放つと首を刈り取られて動かなくなった幹部が一名と病人用の室内着を着たおそらく侵入者。

    「最初から侵入してたのかよ…っ!」

    侵入者がこちらを見た瞬間腕が鞭のように振るわれて握られていた幹部の頭がこちらに投げつけられた。
    仏さんには悪いが受け止めてやる余裕も腕もマジでない。
    壁に叩きつけられたそれはゴロゴロと廊下を転がり、それに目を向ける暇もなく侵入者が俺に飛び込んできて拳がギリギリ鼻先を掠めた。

    「ちょまっ…っ!分身!」

    札を数枚取り出し分身を作り出すけど、こんな狭い場所じゃすぐにどいつも追い込まれて切り刻まれて紙屑になった。

    「クソっ」

    片腕しかないので飛び出した先の廊下にさっきの生首みてえに転がって首借り刀を避け、来た道を戻るけどその先は行き止まり。この部屋は病人が勝手に出歩かねえように外からしか解錠はできない。
    逃げ道のない場所で俺は再び分身を呼び出して距離を取ると、首から下げていた真っ赤な笛を咥え一息に息を吹き込んだ。


    ピィィィイ!!


    耳を劈くようなこの音は幹部達の持つ特別な飾りに共鳴している。これを鳴らせば一番近くにいる幹部が転移で呼び込まれ、仲間達も共鳴に気づいて駆けつけてくれる。
    どの幹部が来てくれるかわからないけど少なくとも時間稼ぎくらいはしてくれるはずだ。

    期待を胸に抱いてクナイを構えていると、しかし小さな破裂音と共に現れたのは肩を落とし膝を抱えた見慣れた幹部の姿だった。

    「花幹部!?」

    幹部は幹部だけどよりによって!?そういえば幹部になった時の装備を今日部屋に届けたから共鳴飾りも入ってたのか。
    こんな状態で戦えるわけがない。

    「ぐっぁ…っ!」

    花幹部に気を取られてる間に侵入者の首刈り刀が間近に迫り、避けきれなかった刀身が俺の肩口を斬りつけた。
    何もない方の肩だからよかった。と思うが事態が好転したわけじゃない。
    結局相変わらず弱小下っ端構成員の俺の前にはおそらく幹部だった足抜けやろうがいてジリジリ迫っている。

    もしかしたら部屋の外には幹部達が集まりつつあるかもしれねえけどまだ突入する様子もない。
    せめて花幹部だけでも庇おうと前に立つと、俺の腰のベルトに重みを感じた。

    「…め…だめ…ダメ…しなないで。死なないで死なないで」

    震える指先で俺のベルトを掴むこの手は何を掴んでるんだろう。きっと本当につかんでるのは俺じゃない。
    俺を通して見てるのはきっと花幹部の過去だ。

    花幹部の弱々しい声とカチカチと歯の触れ合う音が聞こえ、俺は頭を掻きむしりたくなった。後輩幹部くんもそうだけど、ほんとここの幹部どもはただの下っ端に無茶言うよな!

    「わかったわかった!死なねえよバーカ!死んだら後輩くんに殺されっから俺はまだ死ねねえんだよ」

    俺はダメ元で花幹部から距離を取り足抜け野郎の懐に飛び込むと笛を再び咥えて力一杯吹いた。

    扉の前に幹部が誰かいたらこい!

    体当たりのように相手に突っ込んだため押し倒すように馬乗りになったがそもそも俺に抑え込む力量もなければ物理的に腕がない。
    時間を稼いでる間に応援が来たらと期待しながら押さえ込んだ身体は軽く蹴り飛ばされ、俺は壁に叩きつけられ咽せて吐きそうになりうずくまった。
    やっべ、動けねえ。

    ここまで侵入してきたやつがそれを見逃すはずもなく、足抜け野郎は俺の方に首刈り刀を振りかぶると勢いよく投げつけその切先は目前に迫った。

    あーやばい。俺死んだかも。
    なんて呑気な頭で考えてたら再び札が舞い散り目の前に見慣れた赤が現れた。

    「何また死にかけてるんですか」

    「後輩くん…ナイス」

    投げつけられていた刀が現れた後輩くんによって弾かれ乾いた音を立てながら床を滑る。
    冷静ながらも怒ってる後輩くんが来たからにはもうあとはこちらに負ける要素なんてない。
    俺からしたら脅威のやつも後輩幹部くんからしたらただの獲物で、俺が瞬きしてる間にアイツは足抜けやろうを蹴り付けて長い刀を突き刺していた。
    後輩幹部くんが刀の血を振り鞘にしまうのを見届けると、俺はズルズルと壁に身体を預けながら床にへたり込んだ。

    流石に今回はマジでヤバかった。花幹部より後輩幹部くんが近くなけりゃ今頃救援間に合わずお陀仏だった。
    この笛便利だけどそういう微調整必須だって研究班に伝えとこう。

    「先輩。弱すぎて心配なので今度一緒に鍛錬しましょう」

    「仮にもコイビトに言う言葉がそれかい?」

    座り込んだ俺にため息を吐きながらそんな悪態をつく後輩幹部くんは全くの無傷でぼろぼろの俺を睨め付けた。
    ま。冗談なのはわかってる。だってコイツ座り込んだ俺に差し出してる手震えてるし。
    全く…心配で気が狂いそうでしたくらい言えば可愛げあんだけどな。
    人前だとクールぶるから俺が余計ヘタレに見える。

    後輩幹部くんの差し出した手を掴み立ち上がると、離れた場所で膝を抱え震えてる花幹部の姿が見えた。
    そういやこっちがまだ解決してなかったな。
    俺は口の中に溜まってた血を面を外して吐き捨てると、不思議そうに俺を見る後輩幹部くんに口出すなよと指示して変身術を解いた。

    本当はあまりこういうことしたらダメなんだけどな。

    「おい花幹部こっち見ろ」

    今にも泣きそうな、そんな大男に俺は一枚の札を懐から取り出して額に貼り付けた。
    すると花幹部の術が解け煙と共に年若い娘が俺の前に姿を現した。

    「俺はお前の旦那じゃねえ。同じ姿形してようが構成員一人一人こうして本当の姿を持ってる」

    掟の事もあり基本的には術を解かないので、この姿を見せたことがあるのは後輩幹部くんをのぞけば医療班とマット構成員くらいだ。
    その稀有な姿を晒して何が伝えたいかっていうとイーガ団としては当たり前のこと。
    当たり前の教えをちゃんと聞かせなきゃならない。

    「その一人一人がイーガ団の構成員である以上俺達はただの駒で無くなれば簡単に次の駒が使われる。けど俺達下っ端構成員達はそれぞれ成し遂げたいものがあってそれを受け入れて戦ってる」

    幹部とは違って下っ端構成員達の死亡率は高い。いつ死んでもおかしくないしいつ死んでもいいとさえ思ってる。
    これを言ったら後輩幹部くんは怒るけどさ、幹部達だって一度は構成員の道を通ったんだから理解してるはずだ。

    けど花幹部は違う。守りたいものがあってイーガ団に入った。そんでそれを失って自暴自棄になって、下手に能力があったから幹部試験なんか受けて傷をさらに負って。

    そんなんじゃ俺より強いくせに簡単に殺される。
    そんなのを見過ごせるほど落ちちゃいねえし、何より俺は指導員だ。
    迷って悩んでるやつを導くのが仕事だ。

    「俺たちはみんな互いの顔を知らねえし名前も知らん。お前の旦那の顔も俺は見たことない。けどお前はソイツの顔を知って名前も聞いたんだろ?だったらその名前と顔をちゃんと死ぬまで覚えて駒として壊れたソイツの生きた証になってやれ」

    駒の死なんて一瞬だ。俺だって今回あの刀が俺を串刺しにしてたら何も考える間もなく死んでただろう。
    考えられるのは生きてるやつの特権。生きてる俺はなんとなく花幹部には生きててほしいって思ったし、名前までは明かさねえけど俺の顔や言葉を覚えててほしいって思った。
    力強く生き残って、ついでに俺の復讐もしてくれたらスッキリするな。そんでたまにあんな奴いたなって思い出してくれたら報われる気がした。

    花幹部の旦那がどう思ってるかは知らねえ。そんなのは死人に口なしだ。
    けど生きて笑っててほしいって思ってんじゃねえかな。惚れたやつに思うことなんか大抵みんな同じだろ。

    「指導員……」

    「ん?」

    俺を呼んだ花幹部は結局そのあと何も言わずにポロポロ涙をこぼし、やがてわんわんと子供みたいに泣き始めた。
    俺にしがみついて必死に耐えるように。
    後ろで後輩幹部くんが所在なさげにしてるけど今回は構ってやる余裕はない。
    そりゃ女の子優先すんのはできる男の勤めだからな。
    花幹部はオネエ幹部が慌てて部屋に飛び込んでくるまで、今までずっと笑顔の裏に隠していた涙を洪水みたいに溢れさせ続けた。



    その後はまあ大変だった。
    部屋に突入してきたオネエ幹部は俺の肩の傷を見て悲鳴をあげるし、花幹部はようやく落ち着いてきたのか俺の血まみれの傷見て腕がないって青ざめてるし。
    そういや義手だって言ったことなかったか?
    パニくる2人に病室に戻された俺は拷問のような治療を受けることになり悲鳴をあげることになった。
    片口の傷は義手をつなぐ神経に関係するからすごく痛いわよ。と脅されいざ試してみたらマジで痛いのなんの。
    痛くて痛くて後輩幹部くんの腕握ってたみたいだけどスッゲェ青あざになってた。
    三日も熱出して寝込むことになったけどこれは俺が弱いからじゃない。
    三日間は動かないようにって後輩幹部くんを監視につけられたけど、こんなの動けるわけがない。
    熱にうなされ夢現に見たのは病室に花を生ける花幹部の姿。泣きじゃくってスッキリしたのかあれからすぐに重病患者室から出た彼女は今まで通り変わらず花を生けて回ってるらしい。

    ようやく軟禁が解けたのはあれから5日後。義手もうまく馴染み、戦闘や訓練はまだダメだなんて言われたけど普通に生活する分には構わないと言われたから今夜は久々にBARを開くことにした。

    医務室を出る時にその話をオネエ幹部にしたら「あら、じゃあ今夜は呑みに行くわ」と言ってたのできっと仲間を呼んで騒ぎにくることだろう。

    日にちが空いちまったから色々ダメになってる食材もあるだろうなー。点検して廃棄しょりもしてそれからー。
    ぶつぶつやる事を口にしながらBARの倉庫に入り漁ってると、手伝いながら様子を伺っていた後輩幹部くんが俺に質問を投げかけてきた。

    「なんであの時転移の札を使用しなかったんですか」

    ま、いつかは聞かれる気がしてたけどな。
    本当は病室でも聞きたそうにしてたし。
    転移の札ってのは現在試作段階で作ってる移動のための札だ。緊急時近くの幹部を1人呼ぶための笛とは違って使用者を1人転移させるための札で実用に向けて研究班が実験的に一部の構成員達に渡してる。
    俺もその被験者だから一応一枚持ってるわけだけど。

    「これは外部に情報が漏れないように今は使用者が固定されてる。花幹部を逃すにゃ使えねえんだから無意味だろうが」

    「花幹部の使用が無理でも先輩は使えたでしょう」

    「構成員の俺が幹部を置いてけって?本気で言ってんなら新人共ともっかい講習受け直してこい」

    本当は理解してんだろうけどな。
    面越しでもわかる。めちゃくちゃ苦虫潰したみたいな顔してるわコイツ。

    「俺達が守るべきはコーガ様だ。そしてそのコーガ様を一番守れるのが筆頭幹部さまとお前ら幹部集団。俺ら末端構成員は緊急時コーガ様ならびに幹部の命を身を挺して守るように言いつかってる。花幹部にも言ったが構成員はただの捨て駒だ。いい加減それをしっかり覚えろ」

    ピシャリと言い放って話は終わりと背を向けると、後輩幹部くんの視線を痛いほど背中に感じた。
    気持ちはわかる。こいつは俺が死ぬほど好きだし死んでもらいたくないって常に思ってるし伝えてくる。
    俺だってそれにはなるべく答えてやりたいが、この道を選んだ時点でオレの命は薄氷に立つより危いものになっている。
    こいつがスイスイ歩いて行ける場所も、俺にはイバラどころか道ですらない道を探りながら行くしかない。

    どんなに頑張ったって、イーガ団内での俺の立ち位置は代わりようがねえんだ。
    けどー

    「まあ、でも。別に俺だって今は死にたいわけじゃないし?…だから。もっと便利な道具を研究班と開発できたら、俺の生存率もこれから上がるかもしれねえな」

    結局俺ができるのはそんなことくらい。決まりは変わらないし俺の実力だって今更そう変わらない。
    けどそうやって少しでも努力して生存率が上がっていけたら、俺ももう少しこいつと並んで未来ってやつを歩けるのかもしれない。

    すっごい勢いで後ろから抱きしめられて、無言で頸に顔を埋めてきた後輩くんは、何も言わなかった。
    多分それが正解。
    過度に期待をされても困るし、だからといって無理だろと言われても腹が立つ。

    何も状況が変わってない今だから、俺は精一杯コイツの硬い体に抱きしめられながら今生きてることを何かに感謝することにした。

    「あー、オレも幹部試験受けよっかな」

    「誰も許可しないんで恥かきますよ?」

    「夢くらい見させろよ」

    「そんな夢のない夢なんか見ずに、今夜仕事が終わったら朝まで同じ夢を見てください」

    何やら珍しく気障ったらしい台詞を吐いた後輩くんに驚きつつ、まあたまにはいいかと面をずらしそのお誘いに先約のキスを返した。
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