手と手 本当に付き合ってんのかな、俺が?あの及川と?とバスに揺られながら菅原は思う。
恋人らしいことは何もしていないので未だに実感がわかない。これから二人で会うということすら、なんだか信じられないような気がする。
それでも及川は、毎回ちゃんと待っている。バス停の横にまっすぐ立って、笑顔で手を振っている。真冬の暗い夕方に不釣り合いな存在感を放って。
カフェでたわいない話をしているだけで時間はあっという間に過ぎて、さっきのバス停の向かい側に並んで座ってバスを待つ。暖房のよく効いた店内とコーヒーの温もりはとうに消え失せていた。
辺りは真っ暗で静かで、自分の隣にいるのが誰なのか分からなくなるような変な気分になる。俺ってまだ及川のこと全然知らないなと思う。
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