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    小島🐬

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    以前ワンライ用に書いてみたけどボツにしたやつ

    #及菅
    andKan

    手と手 本当に付き合ってんのかな、俺が?あの及川と?とバスに揺られながら菅原は思う。
     恋人らしいことは何もしていないので未だに実感がわかない。これから二人で会うということすら、なんだか信じられないような気がする。
     それでも及川は、毎回ちゃんと待っている。バス停の横にまっすぐ立って、笑顔で手を振っている。真冬の暗い夕方に不釣り合いな存在感を放って。
     カフェでたわいない話をしているだけで時間はあっという間に過ぎて、さっきのバス停の向かい側に並んで座ってバスを待つ。暖房のよく効いた店内とコーヒーの温もりはとうに消え失せていた。
     辺りは真っ暗で静かで、自分の隣にいるのが誰なのか分からなくなるような変な気分になる。俺ってまだ及川のこと全然知らないなと思う。
     寒すぎて自然と身体を寄せ合うと、手と手が触れた。
    「手冷たいね」
    「心がホットだからな」と、どこかで聞いたような返しをする。もっと気の利いたことが言えたらいいのに。
     及川が温かい指を絡めてくる。その動作はごく自然なのに、少し照れくさそうな横顔を見るとたまらないような気持ちになって、黙って二人の手ごと及川のコートのポケットに無理やり突っ込んだ。
     「なに」とそっけない言葉とは裏腹に、ポケットの中で絡めた指をきつく握ってくる。
    「痛いんですけど」と笑うと、「スガちゃん冷たあ」と言って、こちらに顔を寄せてくるその声、その瞳が熱を帯びている。それで菅原は他のことを何も考えられなくなる。刺すような寒さも、明日のことも。
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    slow006

    DOODLE第15回 菅受けワンドロワンライ、「映画・特別」及菅で参加させていただきます。
    映画は「フォレストガンプ」です。面白いので良かったら見てください。1994年だと「天使にラブ・ソングを2」もおすすめです。
    第15回 菅受けワンドロワンライ「映画・特別」―― My momma always said,”Life was like a box of chocolates. You never know what you’re gonna get.”

    スクリーンに文字が流れ切ると一瞬、視界が真っ暗になる。それから一拍ほど置いて照明がつき、同時に静まり返っていた劇場内は賑やかになった。同行者と話し始める人、荷物の整理を始める人、足早に席を立つ人など、さまざまだ。菅原と及川は席に座ったまま、人が捌けるのを待っていた。

    菅原がときおり訪れる映画館では、名作映画を週替わりでリバイバル上映している。上映される映画は、菅原が生まれるより前のものであったり、まだ幼く映画館に訪れることがなかった時期のものだったりと、古くても目新しいものがほとんど。なかには、昔から映画番組で何度も観たことのあるものもあったが、テレビで観るのと、映画館で観るのとでは、没入感や臨場感、ストーリーの理解度が段違いだった。要は映画にしっかり向き合えるのだ。この週替わりの上映を菅原は気に入っていて、めぼしい映画をチェックしては、映画館に足を運ぶ。この日観た映画は、アメリカのヒューマンドラマ映画で及川と菅原が生まれた1994年に公開されたものだ。たまたま上映日と及川の帰国が重なり、菅原は及川を誘って映画館にやってきた。
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