とある令嬢の目論見(ガ清)「はぁ……」
ティーカップを片手に、彼女は周りの令嬢にも聞こえるように溜め息をついた。
この場に茶会と称して集めった令嬢はみな同じ理由で困っている。
家族から、魔界王ガッシュ・ベルを骨抜きにして王妃の座につけと命じられてしまった。
魔界の王を決める戦いを経て、ガッシュが王となってからもう数年。彼は逞しい青年へと成長している。王としてのあり方に甘さはあるが、民を守る姿に心打たれる者は多い。
令嬢たちとてガッシュという王を好ましく思っているのだが、王妃として横にいれるかと言われれば厳しいものがある。
「これはもう家族を説得した方が早いでしょうね」
令嬢たちはガッシュをよく観察し、アプローチを仕掛け、気付いた。
無理。無駄。無謀。
「陛下と彼の婚姻をいち早く祝福、手助けをして御目に止まるのが精一杯かしら」
ガッシュには想うものがいる。
王の補佐官、幼少時には落ちこぼれと有名だった現王と戦い抜いた赤い本の持ち主、高嶺清麿。
「そのようです」
王が彼を好いているのは見ていればわかる。家族にはどれだけ説明しても理解して貰えなかったが。
「……陛下の骨を抜いてこいを言われましたが、抜くのも無理ですし、骨を抜いたところで無駄でしょう」
周りの令嬢も目線だけで頷いてみせる。
「きっと陛下はお身体がどうなろうと、彼と共にありたいと思っているのでしょうし」
引き離そうなんて野暮もいいところ。