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    こむき

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    こむき

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    ⚠️少し嘔吐表現あり
    すんごい中途半端
    仮タイトルでとりあえず書きかけだけでも上げます。完成させて清書したら支部の方にあげたいです

    段落構成もぐちゃぐちゃだしたぶん誤字脱字に表現間違いもある

    カフェインには注意「おかしい…」

    いくらなんでも早すぎる。

    時空院がシロップ漬けにして生クリームをこれでもかと乗せたトーストを頬張るいつもの朝の光景の中、燐堂は冷蔵庫の中を覗いて呟いた。

    有馬や燐堂は朝食の時や作業をする際にコーヒーを飲むことが多いため冷蔵庫の中から切らさないよう常にストックを用意するようにし、昨晩も新しいものを入れたはずなのだが、、、ここ最近減りが早すぎる。
    冷蔵庫を覗き込んだ体制のままちらりとキッチンを見るとそこには水で濯がれ、ラベルまでご丁寧に剥がされたコーヒーのペットボトルが置かれていた。

    こういうところ意外にまめなんだよなぁ

    燐堂は冷蔵庫の扉を閉め、ダイニングで寝ぼけ眼のままコーヒーを啜り、煙草を吸う人物の元へ向かった。

    「…はよ」
    「おはようございます有馬さん。一応聞いてみるんですけど…新しいコーヒー全部飲んじゃいました」
    「あなんで、」
    「いや、最近コーヒーの減りが早すぎるんですよ!そんなにかぱかぱ飲まれるとコーヒー代が馬鹿にならないんです!ただでさえ資金不足なんですから…」
    「そんなケチケチすんなって、別にいいだろうが」
    眉にしわを寄せながらどこか上の空な視線を寄越してきた。
    「別に安いコーヒーだったら僕だって何も言いませんけど、有馬さん変に拘るから安いのだと文句言うじゃないですか!大体、あの時に時空院さんと有馬さんがちょけなければ5億手に入ってたんですよ!そしたらお高いコーヒーだろうがなんだろうが買い放題だったんですから!」
    資金不足の元凶その1であるはずなのに本人が全く気にしていないことに燐堂はぶすくれた声を出す。
    「もう!…とにかくもう少し飲むペース落としてくださいね」


    「ついでに煙草も控えろ。」
    ここ最近の有馬はコーヒーだけでなく煙草も見るからに吸う量が増えていて、ベランダの植木鉢の受け皿やリビングに置いてある灰皿には常にこんもりと灰が盛られていた。
    後ろに体をひねりながら白銀の瞳がまっすぐとこちらを捉えて言い放った。谷ケ崎は口数が少ないゆえ顔で感情表現をすることが多く、今だって『心配して言ってるんだ』と言わんばかりの顔でこちらを見つめていた。その真っ直ぐな瞳に有馬は弱い節があった。
    「そうですよ有馬くん。私のナチュラルオーガニックなアガベシロップ要ります糖分は身体にいいですよ」
    どこから現れたのか目の前ににょきりと生えてきた黒い影は有馬の目の前でぷらぷらと瓶を振ってきた。あまりのウザさに寝起きの膜が張ったような意識が一気に鮮明になり時空院に一発お見舞いするべくポケットの中の愛銃に指を掛けた瞬間、
    「お前もだ丞武。糖分控えろつったよな、体壊すぞ」
    「飛び火ですかぁ」
    谷ケ崎の小言の矛先が自分に向いたとわかった瞬間内ポケットに瓶をしまい込み時空院はそそくさとその場から離れ燐堂の横に並んだ。
    「とーにーかーく!次の依頼でまとまったお金が入る予定なのでそれまでは皆さん贅沢できないと思ってくださいね!」
    隣に並んだ時空院から1歩横に離れた燐堂は先生よろしくパチリと手を鳴らし言い放った。
    「…へーへーわかりましたよ。」
    なんとなく居心地が悪くなって襟足をぐしゃぐしゃと乱しながら返事をした。







    「進捗は」
    「六割といったところですかね、そこまで時間は掛からなさそうなのでちょっと休憩しててもいいですよ。」

    本日の依頼は随分と報酬が高かったためどれだけの危険があるのやらと全員が勘ぐっていたが、どうやら金を積めばなんでもやってくれるという噂を聞いて依頼しただけのようで、脱獄犯の小遣い稼ぎ程度の認識だったらしくデスペラードとしての概要は知らない様子だった。
    一通り仕事を済ました頃、データを盗んで最後破壊するため燐堂はUSBメモリを接続してめぼしい情報がないか目を走らせ、有馬はシャッターのそばにしゃがみこみ煙草をくゆらせていた。
    「時空院と谷ケ崎さんからも連絡来ました、首尾は上々だそうです。あと五分ほどでこちらに到着するみたいですね。」
    凄まじいスピードで流れる情報を取捨選択し今後使えそうな情報を仕入れつつ有馬に声をかける。
    「…………」
    いつもならいくら面倒くさくても一言は返事をしてくれる有馬だが煙草片手にしゃがんだまま微動だにしない。
    「有馬さん」
    パソコンに向けていた目を離し再度声をかけるも返事がない。流石にこれはおかしいと思い立ち上がって有馬の元に向かい隣にしゃがむ。
    「有馬さーん聞いてますか」
    いつもならそろそろキレ始めるのに、と顔を覗き込もうとした瞬間
    有馬の身体がゆらりとスローモーションに傾き燐堂のもとに倒れ込んできた。
    「うわあ!…え…ちょっと有馬さん!大丈夫ですか!しっかりしてください!」
    尻もちをつきながら 慌てて身体を受け止め顔を見ると意識は無く、血の気がひいたように顔色は青白くなり、冷や汗をかきながら浅く荒い息を繰り返していた。軽く抱き起こしている燐堂にまでバクバクと心臓が大きな音を立てているのが伝わりさらに、触れている身体が妙に冷たいことによって思考がパニックに陥る。
    自分が気づかない間にどこか怪我をしたのかもしれないと思い全身をくまなく見るもその様子は無い。
    慌てて時空院と谷ケ崎たちに連絡を取ろうとするとばたばたと何者かがこちらに走ってくる音が聞こえる。

    「おい!燐堂何があった!」
    「燐堂くん一体どうしたのですか!」

    時空院と谷ケ崎が燐堂の声を聞きつけて駆け寄ると燐堂に抱き抱えられた有馬が目に入った。
    「有馬さんさっきまでは普通に話してたんです!でもっ!でもそれが急に倒れ込んで…僕が気づけなかったせいで……」
    パニックに陥り過呼吸気味になる燐堂の肩を安心させるためぽんと叩き子供に言い聞かせるように、
    「燐堂くん、有馬くんは大丈夫ですよ。取り敢えず貴方はそこの道まで車を持ってきてくれますか。その間、私と伊吹でちゃんと見ていますから。」
    と言った。
    ぐいと袖口で目元を拭った燐堂はぱたぱたと走り車を取りに向かった。

    「丞武、有馬は大丈夫なのか」
    いつの間にか脱いだベストを有馬の肩に掛けた谷ケ崎が問うた。
    「ええ、おそらく有馬くんのこれはカフェイン中毒だと思います。ほら、ここ最近もコーヒーを飲みすぎだって燐堂くんに怒られていたでしょう」
    「⋯⋯しばらく有馬は煙草とコーヒー没収だな」

    「時空院さん!車停めました!後ろ開けてるので有馬さん運んでください!」
    そう話している内に燐堂が車を持ってきてくれたため時空院は有馬を揺らさないよう横抱きにして運び、後部座席に乗り込む。
    「私は有馬くんと後ろに乗るので伊吹は助手席で燐堂くんのサポートをお願いしますね。」
    「分かった」

    運転席には燐堂が、助手席には谷ケ崎、後部座席には時空院が膝枕をする形で有馬を横たわらせていた。
    「先程伊吹とも話していたのですが有馬くんが倒れたのはカフェイン中毒によるものだと思います。今朝もですがブラックコーヒーをかぱかぱ飲んでいまして…一応注意はしたんですけれどね、」
    「やっぱり…だからあれ程飲みすぎるなと言ったのに!体調が治ったら有馬さんにはお説教が必要ですね」
    少し赤く目を腫らした燐堂は有馬が回復した暁にはお説教を喰らわせなければとずびりと鼻をすすりアクセルを踏んだ。






    頭がいたい。息が苦しい。

    肺に水が溜まったかのように息ができない。遠くから誰かが話す声が聞こえるが耳に薄膜がはられたかのようにぼやけて聞き取ることができず、視界も水中にいるかのように滲んで輪郭を捉えられない。ぐわんぐわんと揺れる頭と視界に身体が何処かに引っ張られ流される気がして、身の前の温もりにただひたすらしがみついていた。そんな中、頭を撫でられる感覚がし頭の痛みが和らいできたところでまた意識は遠のいていった。


    燐堂の運転によって帰路を急いでいた道中、有馬の唸る声で3人の会話は止まった。息が苦しいのか胸元の服をぐしゃりと握りしめながら浅い呼吸を繰り返している。
    「結構辛そうですね。燐堂くんあとどれ位で着きそうですか」
    「近道をしているので2つ先の信号をすぎたらもうすぐ着きます。」
    苦しげな有馬を少しでも落ち着けるため時空院は頭や背中を撫でていると車が揺れたタイミングで有馬がお腹にぎゅうと腕を回し抱きついてきた。普段ならば有り得ない光景に驚き一瞬手が止まってしまったが回された手が少し震えていることに気づき、時空院は有馬の長い襟足に指を入れ撫でる手を再開させた。

    「皆さん着きましたよ、谷ケ崎さんは先に降りて鍵を開けてきて貰えますか時空院さんもそのまま有馬さん家まで運んじゃってください。僕は車を停めてきますね」
    燐堂は谷ケ崎と時空院に鍵を渡すと、2人が降りるやいなやピピピとドアを鳴らしながら車を発進させた。
    残された2人はカンカンと鉄の階段をのぼり家を目指すと振動が伝わったのか有馬が薄く目を開いた。
    「おや、有馬くん体調はいかがですか」
    それに気づきた時空院は顔を覗きこませて様子を見る。依然として顔色は青白いままであり、焦点も定まらなく虚ろな瞳がゆらゆらと揺れていた。そこで時空院は有馬の喉が引き攣って動いていることに気づいた。
    「じくっ⋯いん、、は、きそ⋯っ」

    ━━━これは急がなければまずい。


    「伊吹!先に鍵を開けてきてください!」
    異変に気づいた谷ケ崎は階段を数段飛ばしで一気に駆け上がりガチャガチャと音を立てて鍵を開ける。
    いつもは片足ずつ脱ぎ靴の向きも揃えるが今回ばかりは気にしてられない。トイレの扉を開き有馬をおろす。
    「私達はリビングにいるので何かあったら呼んでくださいね」
    有馬は時空院に比べ小柄とはいえ、成人男性2人がトイレにこもるのは些か無理があるため谷ケ崎とともにリビングに戻りしばらく様子を見ることにした。


    リビングに戻ってからも谷ケ崎は心配なのかソファに座ったり立ったり、部屋の中を行ったり来たりと繰り返していた。そんな様子を見ていると、
    「丞武、俺でもしてやれることはあるか」
    歩き回っていた谷ケ崎が立ち止まり問いかける。
    「そうですね…戻して胃の中がからになっているのであとでお腹がすいてしまうかもしれませんね、なので一緒にお粥を作りましょう」
    「俺は粥なんか作ったことねぇぞ」
    ソファの隣にちょこんと座った谷ケ崎が顔をこちらに向け言った。
    「簡単ですしちゃんと教えるので心配ないですよ。今後もこうして誰かが体調不良になることがないとも言えません。覚えておいて損は無いです。それに、調子が良くない時に食べる誰かの手料理と言うものはとても嬉しいものですしね、」

    そう言うと何かを懐かしむようなそぶりを見せた谷ケ崎はぽつりと話し始めた。

    「……俺がガキの頃に風邪をひいた時、1度だけ兄さんが飯を作ってくれたことがあった。しょっぱいし米は硬いしで食べられたもんじゃなかったが…でも幼いながらに嬉しかったことは覚えてる」

    そう嬉しげに話す谷ケ崎の横顔を時空院は見ていた。







    潤んだ視界の中、秒針が空気を揺らす広い部屋に置かれた大きなベッドの上で自身は横になっていた。熱に浮かされた頭でぼんやりとした思考のまま窓の外に思いを馳せていると控えめなノックの音が鳴り響くとともに高くやわらかな声が聞こえてきた。
    「入りますね」
    蝶番が軋む音を立てながらゆっくりと扉が開かれると、黒いワンピースを着た栗色の緩い巻き毛の女性がしとやかに歩き、食器を乗せたトレーを持ったまま自身の眠るベット横までやってきた。カチャリとトレーをサイドテーブルに置くと、
    「具合は良くなりましたか」
    細く白い手が伸びてきて汗で張り付いた前髪をよけるとピタリと額に手を当てて、優しく声をかけた。
    「お腹が空いていると思ってご飯を作ってきたの」
    そう言うと、目の前にふわふわと湯気がのぼるお粥が置かれた。ふんわりとしたやさしい匂いにつられて起き上がり木製のスプーンを手に取るとひとくち、またひとくちと夢中で食べ進め気がつけば皿の中身は空になっていた。粟色の女性はベット横の椅子に座り、両手で持ったマグカップの中をすすりながら口元に笑みを浮かべてこちらを見ていた。

    お腹もくちくなり満たされた身体はぽかぽかと暖まって、睡魔が顔を覗かせ始めた。
    再び横になるとそろいの粟色の髪を撫でられる。開かれた窓から流れ込む爽やかな風と額に感じるひんやりとした手が心地よくそのまま眠りに落ちた。





    「丞武も作ってもらったことはあるのか」

    そう声を掛けられた所で時空院の意識は引き戻された。



    「……それはどうでしょう。まあ私が体調を崩した時にあなたがた3人が食事を作ってくれたら、それは素直に嬉しいものですよ。」
    こう時空院が答えるまでに少し間があったことに違和感を感じたのか谷ケ崎はこてりと首を傾げてこちらを見る。

    「さあ、そろそろ準備しましょう!まずは材料の確認をしなければ。足りないものは燐堂くんに買ってきてもらいましょうか」
    谷ケ崎の視線に対して笑みで答えると台所へ向かった。



    ━━━思い出されたのは幼い頃の記憶。もう両親の顔さえよく覚えていないのだけれど。



    二人台所に並び、料理に不慣れな谷ケ崎に一から粥の作り方を教えていると玄関の方から鍵を回す音が聞こえてきた。

    「ただいま戻りました!遅くなってすみません、色々必要なものを買い足してきたら思ったより時間かかっちゃいました」
    ガサガサとビニール袋の音を鳴らしながら台所に入り、手を洗って買ってきたものを冷蔵庫に詰め始める。
    「有馬さんの調子はどうですか」
    燐堂が被っていた帽子を取って机の上に起きながら目を向ける。
    「そういやもう10分ぐらいは経ってるよな」
    とんとんとおぼろげな手つきでネギを切っていた谷ケ崎は手を止めて顔を上げた。
    「そうですねえ、少し様子を見に行った方がいいかもしれませんね。」

    使っていたコンロの火を止めて様子を見に行くべく三人は有馬の元へ向かった。




    「有馬さーん大丈夫ですか」
    声をかけながらコンコンとノックをし扉に耳を近づけるも返答は無い。
    「中入っていいんじゃねえか」
    谷ケ崎の言葉にうんと頷き鍵を外側から開けて中に入る。
    「ちょっと中入りますよ」
    ガチャりと開けるとそこには便器に凭れかかったままの有馬の姿があった。
    「ちょっとこれほんとに大丈夫なやつですかね」
    顔色が悪くトイレに突っ伏す有馬を見て燐堂はすぐさま隣にしゃがみこみ背中をさする。そうしているうちにまた波が来たのか有馬が嘔吐きはじめた。

    「自分で吐けないなら我々で手伝うしかないですね。伊吹、私が指示しますから有馬君のお腹を押してあげてください。」
    唾液のみがぽたぽたと垂れて水面にマーブル模様を作り嘔吐する気配が見えなかっため、時空院は有馬の背後に回り鳩尾辺りで手を組むように谷ケ崎に指示をする。
    「伊吹、押す時は組んだ腕を自分の方に引き上げるようにするんですよ」
    立て膝の姿勢で足を開きながら後ろに回った谷ケ崎は腕まくりをし、鳩尾にあたる部分で手を組み位置を確認すると「有馬、我慢しろよ」と言い、腕を上に引き寄せた。
    「っぐ、、う゛え、......んぐ、...っはぁ…は、けねぇ」
    びくびくと身体が波打つように動きしきりに喉も上下しているがタイミングがずれていたらしく口元から絶えず唾液が垂れ水面を揺らしていた。
    「タイミング合わせてもう一度やりましょう。有馬さんもうちょっと頑張ってください!」
    押す時はちゃんと声をかけてあげてくださいね。という燐堂の声を聞き「有馬いくぞ。」と声をかけ先程と同じように腕を引き寄せるとぐぽっと喉が鳴り、
    「っ、ぅぐ、!はぁっ、ぐぅ…ぇっ、」
    戻したものが水面に叩きつけられる音がしたため回していた腕を解いた。そのまましばらく嘔吐していたがある程度戻せたのか息を荒らげ壁にもたれかかった。
    「吐けましたかね…とりあえずお水持ってきたのでこれで口ゆすいで下さい」
    燐堂がキッチンからペットボトルの水を持ってきて有馬に渡す。
    「私は有馬くんをベッドまで連れていくので伊吹はさっき教えた通りにご飯を仕上げていてください」
    時空院は有馬の肩を持ち、ペットボトルを燐堂に渡すとそのまま寝室まで歩いていった。
    「とりあえず僕達も戻りましょう。僕もご飯作るの手伝いますよ」
    ボタンを押してトイレを流した後、窓を開け2人はリビングに向かった。





    「完成だな」
    「結構美味しそうにできたんじゃないですかこれ」

    2人して鍋を覗き込む。谷ケ崎さんが時空院さんに教わったというお粥は初めて作ったという割には上出来で、目の前にはふわふわ湯気を立てた卵がゆが置かれている。ちゃんと彩りも考えられ小口切りにされたネギが上には乗っており、湯気に乗ってふわりと優しい香りが立ち込める。
    「伊吹っ!戻ってきましたよ、1人で作れました」
    普段は糖分糖分と鳴き声のように発しているのに家庭的な一面もあるもんだなと謎に関心していると時空院が戻ってきた。
    「ああ、燐堂に手伝ってもらった」
    初めてご飯を作ったという達成感なのかいつもより表情が明るい谷ケ崎が目に入る。
    「手伝うって言ってもそんな大層なこと僕してませんよ。ほぼ谷ケ崎さんに教えてもらいましたし…それより有馬さんは大丈夫そうですか」
    ひと仕事終えたとばかりにゴクゴクと糖分摂取をする時空院に問いかけると、シロップでつやつやと光る唇をぐいと手で拭って言った。
    「吸収されてしまった分は仕方ないですが、ある程度はさっき出せているはずなので大丈夫だとは思います。カフェインは脱水症状を引き起こすのでとにかくこまめに水分補給をさせましょう。一般的に成分が完全に抜け切るのが12時間と言われていまが、。さっきよりだいぶ落ち着いているようですし、寝て起きる頃には回復してると思いますよ」
    時空院のその言葉に燐堂は酷く安心した。




    あの時、倒れ込んだ有馬に対して時空院と谷ケ崎が合流するまでただ取り乱すことしかできなかった。 仲間や信頼なんて眉唾物、砂上の楼閣だと思っていたはずだったのに…。仲間を失うかもしれないという可能性にただ恐怖を覚えていた。
    自身の不甲斐なさに涙が滲み今にも流れ落ちそうになるところを間一髪、袖の余った手でぐいと拭う。きっと昔の僕が見たらぬるくなったものだと笑うだろう。
    「おかゆ僕が持って行ってもいいですか」
    燐堂の赤く染まった眦は気づかないことにして谷ケ崎と時空院は頷く。
    よそったおかゆとコップに注いだ麦茶を用意したトレーに並べて最後に有馬用のお箸をぱちりと置く。これは脱獄後の車中泊を経てセーフハウスを転々としていた最中ある日突然谷ケ崎が4人色違いのお揃いで買ってきたものだ。共同生活が続くなか気づけば揃いのものが目につくようになり、それを当たり前のように受け入れている自分がいた。声には出さずともきっとほかの3人も同じはずだ。
    トレーを持ち寝室へ向かった燐堂の姿を谷ケ崎と時空院は見ていた。
    「変わりましたねぇ、あの子も我々も」
    「…ああ」




























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