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    baribariqflove

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    baribariqflove

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    ベッターに載せてたやつ
    テストでこっちにも。

    アラチャを書きたかったけどアラチャにならなかったやつ※アラスター女体化人間化注意。アラスター視点。
※クールで格好の良いアラスターはいない。あまり紳士では無い上に、ちょっと不憫。
※Ep8の少し後くらい。ほんのり僅かにアラチャ気味。ギャグを目指したい気持ちはあった。
※書きたい妄想だけ書きなぐった。かなりのご都合主義なので設定は合ってるとは限らない。
※口調が迷子なので脳内で補完して下さると嬉しいdeath☆










    その日はいつもと同じく平穏で、
    たわいもない1日が始まったはずだった。

    前回のエクスターミネーションから暫く経ち、
    それぞれの生活が少し落ち着いてきた頃。

    ホテルの改築も終わり、
    運営再開の準備も整いつつあった。

    それなのにまさか、こんな直近で
    あまりにも耐えがたい屈辱を
    再び味わうことになるとは…。

    まぁ元はと言えば、
    多少こちらにも非はあるのだが。

    きっかけは些細な
    取るに足らない事だったが、
    あれから頻繁にチャーリーの様子を見に来る
    あの邪魔な親j…、もといルシファーを
    本気で怒らせてしまったのがまずかった。

    侮っていたわけではないが、
    普段の腑抜けた様子から、
    奴が地獄の王であることを
    多少なりと失念していたのかもしれない。

    奴は相変わらず私がチャーリーのそばに
    いることが気に入らないようで
    チクチクと嫌味な態度を取られることが多く、
    顔を合わせる度に
    下らない小競り合いをする事はよくあった。

    その日も普段通り
    上手く躱していたつもりだったのだが
    その態度すら気に入らなかったのか、
    散々言い合いをしたのち
    ついには
    「そういえば
    この間の騒ぎの時には
    何もかも終わってから現れて…
    顔も見かけなかったが
    一体どこに尻尾を巻いて逃げていたんだか!?」
    などと言われてしまったせいで
    流石に柄にもなく頭にきてしまった。

    恥ずかしながら手負いだったもので…、
    チャーリーにも心配をかけてしまって
    本当にすまなかったね、
    などと心にも無い事を言いつつ
    奴に見せつける様に
    引き寄せたチャーリーの真っ赤な頬に
    キスまでしたのが余程癇に障った様だ。

    彼女のガールフレンドからも
    清々しい程の殺意を向けられたが、
    あのパパはそれ以上に
    怒りを爆発させていた。

    今思い返してもあの怒った顔は
    最高に笑える。

    「貴様っ!よくも私のチャーリーに
    この地獄の王を本気で怒らせた事、
    死ぬ程後悔させてやる」

    「パッ…パパ!駄目よ、待って!!」

    呆気に取られていたチャーリーが
    焦って止めるがそれも焼け石に水。

    本人も協力したであろう
    改築が済んだばかりのホテルを
    まさか愛娘の目の前で破壊しないだろうと
    高を括っていたのだが、
    不覚にも気がついた時には奴が放った光線が
    全身を包み込んでいた。

    「アラスターッ!!」

    チャーリーの叫び声と共に、
    ボワンと些か間の抜けた爆発音と
    爆煙に撒かれたが、
    直ぐに煙が引いたホテルの内装は
    壊れた箇所は無い様に見て取れた。

    だがそれと同時に未だかつて
    感じた事の無い違和感を全身に感じる。

    「なんだっ…はぁ?!」

    自身の口から出た声は
    いつもの己のものとはかけ離れた、
    やや甲高い…

    聞きなれない女のソレだった。

    「一体…何が?…」

    思わずルシファーから目をそらし、
    自身の身体を見やると
    何故か全身血塗れで、
    血を浴びたと言うよりは
    自身の身体の方から
    滲み出ている様だった。

    血の染み込んだ服は
    確かに今まで着ていたままだが、
    腕や身体までもが見慣れぬ
    女のものだと見て取れる。

    そう。

    非常に理解し難いが、
    どうやら俺の身体は
    女に変えられてしまったらしい。





    キュ、とシャワーの蛇口を捻ると
    その音が響くシャワールームで、
    頭から熱い湯を浴び
    全身にこびり付いた血の様なものを
    洗い流していく。

    排水溝へと流れていく赤黒い泡とお湯。

    どう見ても血塗れに見えたが
    見たところ目立った外傷どころか
    この身体には傷一つないのだから
    一体この赤い液体はなんなのか?

    ある程度落としたところで
    再度鏡に映ったその姿をまじまじと見る。

    腰ほどもある栗色のロングヘア。

    やや褐色気味の肌。

    華奢な体つきではあるが、
    出るところは出て
    締まるところは引き締まった
    健康的な女性の身体。

    身長はおおよそ
    チャーリーと同じくらいか。

    目の前の顔は目鼻立ちも良く、
    一般的に見ても美人と言われる方
    なのかもしれない。

    そしてダークレッドの瞳。

    見たことも無い女の身体や髪、
    声すらも別人のものなのに、
    間違いなく初めて見るはずのその顔には
    自身の面影がバッチリ残っていた。


    この姿は…。


    暫く見ていなかったが、
    そう、まるで人間。

    姿形は女性のソレだが、
    生きていた頃の自分が
    そのまま女になった様な外見だ。

    手足の指も5本ずつある。

    そこはかとなく視力も悪い。

    自身の中の魔力も幾分か感じるが薄く、
    まだ試してはいないが
    果たして使い物になるかどうか…。

    あの忌々しい契約の力も感じる事から、
    他の誰かの身体と入れ替わったと言うのも
    やや考えにくかった。

    「アラスター、大丈夫?」

    突然シャワールームのドアの向こうから
    チャーリーの心配する声が聞こえ
    意識が引き戻される。

    シャワーの音ですぐそこに来たのも
    気が付かなったのか。

    「ぜ〜んぜん大丈夫ですMy Dear。
    外見以外はなんとも無さそうですから。」

    身体を洗いつつ彼女の声に応えると、
    更に申し訳なさそうな声が続く。

    「その、パパが、
    ホントにごめんなさいアラスター。
    まさか、こんな事まで出来るなんて…。
    一応パパの家にも行ってみたんだけど、
    案の定と言うか、やっぱり戻ってなくて…」

    まぁそうだろう。

    あの後なにやら
    捨て台詞の様な言葉を吐き捨てながら
    飛んでいってしまったルシファーを
    チャーリー達が探しに行ってくれた様だが、
    彼女に直ぐに見つかる所にいるとも思えない。

    油断したとは言え
    全く、忌々しい。

    その場に居合わせたヴァギー、
    ハスクやあのポルノデーモン、
    爆弾魔(ボマー)の女も初めは驚いて
    引き攣った顔をしていたが、
    次第に堪えられなくなったのか
    苦笑いが向けられて。

    チャーリー以外の他の連中には
    いい笑い者だった。

    まぁ他人事だったなら
    腹を抱えて笑ったかもしれないが…。

    元に戻ったら覚悟しておくといい。

    「貴方が謝る様な事ではありませんから
    気に病まないでくださいチャーリー。
    私も後で直接探しに出てみますよ。」

    「そ、そうね!
    私もパパを探すの手伝うし、
    見つけたら元に戻す様に言ってみるから!
    それよりシャンプーとか大丈夫?
    一応コンディショナーと
    トリートメントも持ってきてみたわ!」

    「別に必要ありませんよ。」

    「あら、駄目よアラスター。
    そんなに長い髪だし
    シャンプーだけじゃ絡まっちゃうわ。」

    確かに。

    「…では、遠慮なくお借りしても?」

    応えるとそっとシャワールームのドアが開き
    僅かな隙間から
    チャーリーの細く白い腕だけが
    コンディショナーやらのボトルを置いて
    往復するとすぐさま引っ込んだ。

    変身した直後は
    なんで!?どうして?!と騒ぎながら
    散々穴があきそうなほど見てきたくせに、
    これ以上汚れが染み込む前にと
    服を脱ぎ始めたあたりから
    妙な気の使われ方をしている気がする。

    こんなところで脱いじゃダメと
    慌ててここに連れてこられたが、
    どうやら裸は極力見ない様に
    してくれているらしい。

    「チャーリー。」

    「!
    なあに?
    他に困った事があったら言ってちょうだい?」

    いつも親切が過ぎる彼女には
    つい意地の悪い事を言いたくなってしまう。

    「先程から何をそんなにコソコソしてるんです?
    堂々とドアを開けてもらっても
    私は別に構いませんよ?」

    「え!?」

    「どうせ見られたって、
    今は、同じ女性同士でしょう?
    遠慮せず好きなだけ
    見ていってくださぁい♪︎」

    己の顔は見なくとも
    いつものニヤついた表情なのは分かる。

    声は違えど
    普段通りの口調で続けると
    焦った声が返ってきた。

    「…や、やだアルったら!
    ((小声)それに女同士じゃ
    それこそもっとヴァギーに
    怒られちゃうじゃない!)」

    「え、なんて?」

    いやに女扱いされている気はしたが、
    本当に女だと思っているのか…?

    なにやら気恥しそうな、
    でもどこか喜んでいる様な声で
    どうやら怒っている様だ。

    彼女の感情は本当に忙しい。

    直ぐにコロコロ変わって
    見ているだけでも本当に飽きない。

    彼女がその場から離れたのを感じつつ、
    血の様なものでパサパサになっていた髪を
    洗い上げていく。

    ロングヘアーの女性は
    本当によくこんな面倒くさい事を
    やっているものだ。





    「…チャーリー?
    My Dear?
    いませんよね?」

    返事は無い。

    気配がない事は分かっていたが、
    念の為ドアの外にまた
    彼女が居ない事を確認してから
    シャワールームを出る。

    脱衣所には彼女が用意してくれたであろう
    バスタオルが積んであり、
    その1枚を腰に巻きつつ見回すと、
    謎の血塗れ汚れが
    恐らく一番少なかったであろう
    自前のジャケットが畳まれて置いてあった。

    とりあえずこれを着るしかなさそうだ。

    もう1枚のタオルで髪の水気を拭きつつ
    汚れ具合を見ようとジャケットに
    手を伸ばしたその時。

    「アル?呼んだかしら?」

    パッと脱衣所のドアが開き
    覗き込んできたチャーリーと
    今度はバッチリ目が合った。


    上裸姿で。


    「…あ、aaaAAAAAA…////
    ままままま、まだ、シャワールームかと!
    ごっ…ごめんなさいアラスター」

    バンッと勢いよくドアを閉め
    茹でダコの様に真っ赤な顔で
    チャーリーは逃げていってしまった。

    女の裸なんて見慣れているだろうに…。

    そんな反応されたら
    こっちこそ気恥しい様な
    複雑な気分だ。

    ついいつも通り
    腰にタオルを巻いたのが悪かったか。

    普段はそこにない
    思いの外たわわなサイズの乳房を
    空いた片手で揉みあげつつ
    本当に見られてしまったなと
    一人笑いを零してしまった。





    上半身はダボダボの割りには胸のせいで
    無理に前ボタンを留めたジャケットを、
    下半身はバスタオルと言う
    なんとも情けない格好でロビーまで戻ると、
    ハスクとエンジェルダストの二人が
    新しいバーカウンターにいるのが目に留まる。

    こちらに気がついたエンジェルダストが
    せせら笑った様な声で言った。

    「お、噂のスターのお出ましだな。」

    それに反応したハスクがこちらを見た途端、
    苦虫を噛み潰した様な顔で声をかけてくる。

    「お前なんつー格好で…」

    「ヒュー♪︎セクシー♡」

    「仕方がないでしょう?
    今はこれしかないんですから。
    それに爆弾魔(ボマー)のお嬢さんの私服よりは
    布の面積は多いと思いますがね。」

    茶化す様なエンジェルダストは
    無視しつつ応えると、
    ハスクの目の前のカウンターへ歩み寄る。

    「それよりハスカー、
    君はどう思います?」

    「あぁ?」

    「私の、この姿ですよ。」

    訝しげな表情でこちらを睨むと
    上から下までジロジロと
    眺めてくるハスク。

    どうやらこちらの意図は
    伝わっている様だ。

    「まぁ…きっとお前なんだろうな。
    生前(昔)の。」

    「え、マジ?」

    「君から見てもやっぱりそう思いますか?」

    「俺の知りうる限り
    女じゃぁなかったがな。」

    グラスを磨きながら
    ぶっきらぼうに答えるハスク。

    肉体的な性別は違えど
    自分だと窺える容姿にも関わらず、
    普段の見た目とは
    肌の色や髪の色は全く違い、
    まさに生前のそれに近いもので。

    こんな事は彼の様な
    昔馴染みでも無い限り
    知り得ない事だ。

    では何故こんな姿に?

    いくらルシファーと言えど
    罪人ごときの生前の事まで
    一人一人把握などしているとは
    到底思えない。

    奴の趣味で意図的に
    作られた姿とも思い難いし、
    やはり自分の身体なんだろうか…。

    悪戯にしては趣味が悪い。

    いや、
    相当怒っていたからな、
    悪戯どころではないのかも。

    いずれにしても、
    とにかくまずは服だ。

    「ところで、
    ニフティは今どちらに?」

    「丁度買い出しに出たところだ。」

    「それは残念。」

    服を買いに行くまでに何か
    間に合わせに頼めたら良かったのだが…。

    するとチャーリーの部屋の方から
    なにやら騒ぎ声と共に
    チャーリーとヴァギーが
    こちらにやってきた。

    「ちょっとチャーリー!待ちなよ!」

    「別にいいじゃないヴァギー♪
    どうせ今だけなんだから。
    って、アラスター!?
    そんな格好で出てきちゃ
    ダメじゃない!!」

    慌てて駆け寄ってきた彼女の腕には
    白いシャツと黒のスラックスが。

    「遅くなってごめんなさいアラスター。
    これ私のなんだけど、
    背丈も近そうだったから着られるかと思って。
    服を用意するまでの間に
    もし嫌じゃなかったらどう?」

    彼女が拡げたそれは
    カフスに黒色が入った白シャツと
    裾の赤色がポイントの
    サスペンダー付き黒いスラックス。

    この服は、

    「貴方と初めてお会いした時の服ですね。」

    「え!…確かにそうかも。
    覚えてたの?」

    「HAHAHA〜、
    あの日の事は忘れようにも
    忘れられませぇん!」

    「どう言う意味よ。」

    「それほどまでに衝撃的だったと言う事です。」

    それはこちらの台詞だと
    言わんばかりの苦い顔のチャーリーの頭を
    ポンポンと軽く叩きつつ服を受け取とると、
    わかり易くコロッとした笑顔に戻る。

    「では有難く。」

    するとチャーリーの後ろで
    不機嫌そうにしていたヴァギーのしかめっ面が
    さらに険しくなった様だ。

    なるほど。

    チャーリーの無茶ぶりに合わせて
    常日頃から本心を噤みがちなヴァギーだが、
    面白い程に彼女も実にわかり易い。

    騒いでいた原因はこの服。

    仕方ないとは言え、
    分かっていても私に
    これを着られるのが嫌なのだろう。

    直接文句は言ってこないが、
    私だってチャーリーのその服に
    袖を通したこと無いのにっ!!
    と思いっきり顔に書いてある。

    まぁ上着ならともかく
    彼女とチャーリーでは背丈が違い過ぎる。

    嫉妬深くて実に宜しい。

    そんなヴァギーを尻目に
    ふと意地の悪い事を思い付いたので、
    チャーリーの肩を抱き寄せ
    耳元で囁くように声を出す。

    「ですがチャーリー。
    先程から色々お気遣い頂いて
    有難いのですが、
    まさか、
    貴方のラブリ〜な下着まで
    貸して頂けるなんて言いませんよねぇ?
    ダーリン?」

    「!?」

    「…アラスターアンタ、」

    物凄い形相でご自慢の槍を振りかざし
    今にも襲いかかってきそうなヴァギーと、
    勢いよく腕を伸ばして
    こちらを押し返してくるチャーリー。

    「しっ、下くらいは自分ので大丈夫でしょ!?
    自分のを持ってきてちょうだい!!」

    こちらが距離を取る前に
    ヴァギーを止める様に彼女が抱きついたため
    物騒な槍はこちらには届かなかったが、
    チャーリーも顔を赤くして流石に怒鳴っている。

    からかい過ぎたか。

    「HA!冗談ですよ、
    そんな事までされても私の方が困る。」

    「コイツっ!」

    「ヴァギー、ちょっと落ち着いて!」

    ホント失礼な奴っ!と怒りながらも
    チャーリーに抱きしめられ満更でもないのか
    大人しく彼女の腕に収まる事を選んだようだ。

    お節介なチャーリーが
    これ以上私物を私に差し出さない様
    わざわざ意識させてやったと言うのに
    失礼だなんて。

    ヴァギーにはむしろ感謝して欲しいものだ。

    「でも確かに、下はともかく
    その感じじゃブラは必要よね…」

    先程の上裸を思い出しているのか
    苦いほど真剣な顔で胸を凝視され、
    思わずブッ、と吹き出してしまう。

    「ゴホッ、いやチャーリー、別に大丈夫d…」

    「駄目に決まってるじゃない!
    こっちだって目のやり場に困っちゃうんだから
    流石になんとかしないと…。
    でも、いくらなんでも
    アラスターに貸す訳にも…」

    う〜ん、と唸りつつブツブツ言いながら
    考え込み始めるチャーリー。

    このままでは本当に女性物の下着を
    着させられてしまう。

    さっさと自室に戻って着替えようと
    背を向け歩き出そうとすると、
    危惧していた事よりも
    更に恐ろしい言葉をかけられる。

    4本もあるその腕で、
    未だに仲良くくっついていた
    チャーリーとヴァギー2人の肩を抱き、
    傍観していたはずのエンジェルダストが
    楽しそうにこう言った。

    「お嬢さん達、
    それならオレ、丁度いいモノ
    い〜っぱい持ってるよ?」





    地獄の中では比較的
    賑やかな商店街。

    目的の店までの街路を足早に歩いていると
    この見た目のせいか
    すれ違った悪魔達から好奇の視線が
    チラホラ向けられるのが分かる。

    チャーリーやロージーの様に
    中には比較的
    人の姿に近い悪魔も少なくは無いが、
    やはり生前のそれとの違いは多い。

    まさかここまで人間の姿をした者が
    こんな所を歩いているとは
    夢にも思わないのかもしれないが、
    わかり易く禍々しい殺気を
    撒き散らしながら歩いている為か、
    意外にも食べてやろうと
    声をかけてくる者はいなかった。

    そんなこちらの様子を気にもとめず
    後ろを着いてくるチャーリーが
    声をかけてきた。

    「アル、…アラスター!
    ちょっと待ってったら!
    もうちょっとゆっくり…」

    「別に着いて来なくて良いと
    言ってるでしょう?」

    何度も断ったが心配だからと聞かず、
    結局ヴァギーにホテルの留守を任せ
    彼女だけは着いてきてしまった。

    「でも貴方、
    今そんなだし…」

    「今そんな、だとしても
    自分の身くらい自分で守れますから
    ご心配なく。」

    彼女には目もくれず
    素っ気なくそう返すと、
    気を落としたのか
    しょんぼりした声を出す。

    「アラスター、まだ怒ってるの?
    仕方ないじゃない、
    エンジェルもせっかく貸してくれたんだし…」

    「怒る?私が!?
    別に怒ってなんかいませんよ、
    非っ常に感謝したいくらい!
    一刻も早く着替えたいだけです!」

    いつもの笑顔を保っているつもりだが、
    チャーリーの言葉に
    目がピクピクと痙攣するのが
    自分でも分かる。

    パッと見た姿は
    チャーリーの昔の服を纏っているが、
    まさかこのシャツの下に
    ボンテージ用のスタッズがゴテゴテに施された
    ブラックレザーの下着を着させられているとは
    一体誰が想像出来ようか?

    しかも布の面積も少なく隙間だらけで
    着ている意味あるとかと叫びたくなる。

    これならむしろノーブラの方が
    まだマシではないか?

    好きな物を選べと
    エンジェルダストから見せられたのは
    彼が仕事や趣味で持っている
    大量のセクシーランジェリーの類だった。

    黒や白や赤やピンク、
    金ピカのスパンコールが
    あしらわれた様な派手な物や
    レースやスケスケな生地の奇抜な物も多く、
    紐に布を貼った様な今着ているコレが
    比較的地味な方だとは
    思い出すだけでも頭が痛い。

    中には普段彼が着ているような
    ビスチェなどマシな物もあったが
    布の面積が多い物はサイズが合わず、
    頭を抱えたくなったのを思い出す。

    不可抗力で選んだコレも、
    何やら着ているだけで
    身体を締め付けられてる感が凄く、
    用途通りの役割を果たしている様に感じる。

    何より気に入らないのが
    チョーカーと一体型になっている造りのせいで、
    まるで忌々しい首輪でもされてる様な
    最低な気分だ。

    地獄を歩けば
    むしろこんな下着で歩いてる様な輩は
    どこにでもいるが、
    少なからず己の趣味とは程遠いコレを
    身につける日が来るのだから
    人生死んでからも
    何が起こるか分かったものではない。

    とにかく、
    一刻も早く服を買わねばと
    ズンズンと歩みを進めていると、
    突然チャーリーが驚いた声を上げ、
    ぐっとシャツの背を引っ張られた。

    「え!?うそ、
    アラスター!見て!
    あれパパじゃない!?」

    なんだと!?

    チャーリーの指差す方を
    グリンと勢いよく振り返れば、
    はるか上空をスーッと飛んでいく
    ルシファーの後ろ姿が目に留まる。

    もう服どころでは無い。

    早く奴を追いかけねば。

    闇に熔け移動する方が余程早いと
    普段の様に力を使おうするが、
    薄く感じていた力は
    全身を僅かに光らせたものの
    発動する気配はなかった。

    やはり魔力は無理か。

    ワナワナと震える手を握り
    急いで奴が飛んで行った方向へ走り出すと
    慌ててチャーリーも着いてくる。

    理由は分からないが
    どうやらホテルの方に向かっている様子。

    それなら好都合だ。





    バンと勢い良くホテルの入り口を開け放つ。

    ロビーでヴァギー達と話していた
    ルシファーの姿を見付けると
    そこからは怒涛の様に忙しなかった。

    「お帰りチャーリー♪︎
    おや、随分美人さんと御一緒だな?
    どちら様かな?」と
    今更逃げる気も無いのか
    茶化して言ったルシファーの胸倉を
    自分でも驚く程の速さで掴み上げ、
    「元に戻せ、今すぐ」と
    そのニヤケ顔に顔面を付け合わせて凄むと、
    流石にチャーリーが間に割って入り
    宥めてきた為、
    仕方なし手を離す。

    「アラスター落ち着いて。
    もう、パパもダメじゃない!
    こんな事して…
    探したのよ?」

    「パパをかい?
    嬉しいなぁ私のエンジェル♡」

    「もー分かったから、
    とにかくパパ、
    アラスターを戻してあげて。」

    「それはソイツの反省次第だな。
    私の可愛いチャーリーに二度と
    手を出さないと誓わせないと、」

    「パパ、手なんか出されてないわ?」

    「キスされてたじゃないか!?」
    (チャーリーの頬をゴシゴシ拭きつつ)

    「挨拶みたいなものじゃない!
    アラスターはホテルの為に本当に
    良くやってくれてるのよ?
    この間の時だって、
    彼がシールドを張ってくれたり、
    アダムの相手をしてくれなかったら、
    パパが来るまで全然もたなかった。
    それをパパがあんな言い方したから…
    それなのにそんな…」

    ホテル中に響きそうな程の
    こちらのギリギリと鳴り響く歯ぎしりが
    コイツらは聞こえないのか、
    ごちゃごちゃと会話を続ける親子に
    我ながらよく待てが出来たと思う。

    異様な雰囲気の中
    あーじゃないこーじゃないと
    押し問答を続ける親子に
    いつ噛み付いてやろうかと見計らっていたが、
    「何をどうやったか知らないけど、ほら」と
    突然チャーリーにぐいと引き寄せられ
    「魔法も使えないみたいだし
    彼の力が無いのは
    彼も、私達も困るの。
    だからお願いパパ」と
    奴の前に差し出される。

    ニィと微笑み返してやれば、
    あからさまに不服だと言わんばかりの
    不貞腐れた子供の様な顔で
    チャーリーとこちらを交互に見やると、
    少し考え込み深くため息を吐くルシファー。

    流石に愛娘に叱られては
    ぐうの音も出ないのだろう。

    「パパ」

    「チャーリー…」

    「パパの事嫌いになりたくないの、」

    「!」

    「お願いよ。」

    慈愛に満ちた瞳でルシファーの頬に
    そっと手を添えるチャーリー。

    その手に自らの手を重ね
    捨てられた子猫の様にうるうるとした瞳で
    チャーリーを見つめ返すルシファー。

    その二人の間に挟まれている私。

    最悪だ。

    「…はぁ…。
    分かった、降参だ。
    チャーリーに嫌われたら
    パパ死んじゃう。」

    やれやれと言った感じで
    ガックリ項垂れたルシファーは
    右腕を軽く上げ指を鳴らした。

    パチン

    と小気味好い音が響くと
    突如全身が光に包まれる。

    身体に魔力が漲ってくるのを感じると同時に、
    再びボワンと間の抜けた爆発がおき
    ルシファーやチャーリーも巻き込み
    煙に包まれた。

    次の瞬間、


    ブチブチ!
    バリッ


    布の破れる音と、
    首や上半身が紐のような物で
    縛り上げられる苦しい感覚。

    煙が引くと同時に
    上半身を見ていた視界に入ったのは、
    あまりにも肩幅が違う為か
    無惨にも前ボタンが引きちぎれ
    前面が派手に破れたチャーリーのシャツと、
    その下に
    元に戻った自身の身体をギュウと縛る様に
    身につけていたボンテージの下着だった。

    目の前には
    ポカンと口を開けた
    ルシファーが。



    「お前さん、
    そんな趣味があったのか?」

    ルシファーからかけられた
    第一声を聞いてからの記憶は
    もう定かでは無いが、
    残念な事に誠に不本意ながら
    改築後のホテルを破壊した
    一番目の悪魔になってしまったのだった。





    ~完~
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