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    ayaka_0824_5

    @ayaka_0824_5

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    ayaka_0824_5

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    オバブアスランから生まれた産物のアスカガ
    ⚠️アスランが過呼吸になるシーン有
    ⚠️モルゲンレーテの中などは捏造描写

    .




    「アスラン・ザラです。本日はよろしくお願い致します」
     オーブ式の敬礼をビシッと決めると、目の前にいる強面の男はふっと口角を緩めた。アスランとしては毎度背筋が伸びる思いだ。
     彼ーーレドニル・キサカを前にする度に、アスランの中で緊張感が走り抜ける。口の中が乾き始めたのを唾を飲むことで回避しながら、「あの……」と切り出した。
    「本当に自分が教官役を務めても良いのでしょうか?」
    「そんなに臆することはないだろう。きみは優秀なパイロットだ。我がオーブ軍の戦力の底上げとして、やはり実績を積むのが一番だからな」
    「……それは、そうですが」
     アスランとしても、キサカの言うことは理解できる。軍人に最も必要なのは経験で、その経験を積むには実戦が一番なことも。そしてできれば自身より強い相手に挑むことで、今の自分に何が足りたいのかを実感できるだろう。
     そんじょそこらの相手に負けるつもりもないが、アスランは一佐とはいえオーブ軍に所属している歴は浅い。他にも優秀なパイロットはいるだろうに。例えば、目の前のキサカでは駄目だったのか。彼はナチュラルとは思えないような身体能力をしていて、指揮官からパイロットまで幅広く活躍できる。
     なのに口下手で、人付き合いの苦手なアスランに旗が上がるとは思わなかった。
     以前ミネルバにいた時、自分はとことん教官など向いていないのだと感じたことがある。シンだけではなくルナマリアにまで「アスランて教え方下手ですよね?」とさえ言われたほどに。
     アスランとしては思ったことを口にしたまでなのだが、それがどうも駄目らしい。
     カガリには「もっと人の輪に入れ」と背中を思い切り叩かれたこともある。彼女のように明るくも社交的でもないアスランは、笑うカガリを見て曖昧にうなずいた。
     自分がもっと上手く人とコミユニケーションを取れたら、カガリは喜んでくれるだろうか。この身をオーブとカガリの為に捧げると誓った。ならば同じ志を持った仲間たちとも、少しずつ打ち解けていかなくてはいけない。
     今日の教官役は、実はと言うとカガリ直々のお達しだった。
     ターミナルからの出向を一時的に終えたアスランの、ーーオーブ軍人としての久々の実務。
     その一発目が、パイロットの実技教官である。
     代表首長である彼女の命令は、一軍人であるアスランにとっては絶対だ。渋々ながらも本日指定されたアカツキ島ドッグへと足を運んだアスランは、先に来ていたキサカと合流を果たした。
    「きみの腕を一番信頼しているのは、カガリだ」
    「!」
    「ようやく一人前の代表に成長したと思ったら、モビルスーツのパイロットについては口を開けば「アスラン」ときみの名前ばかりさ。本人から聞いていないか?」
     どこか楽しげに語られるキサカの話に、アスランは顔に熱が集まっていくのを感じる。まさか自分のいないところで、カガリがそんなふうに話してくれていたなんて。
     戦闘以外で予想外の対応をするにはまだ難しく、アスランは言葉を探すように口を開いては閉じる。うなじの辺りがやけにむず痒い。否定的な意見を返したところで、それは照れ隠しの類だとバレるがオチだ。ならばどう返そうかと必死に思考を巡らせながら、答えを探してみる。
     結局ぐるぐると考えた割には、出てきた答えは実に味気ない一言。
    「……カガリからは、何も」
     ボソボソと小さな声で返してしまったせいか、キサカから豪快に背中を叩かれてしまった。もっと自信を持てということらしいが、カガリからの賛辞だけは上手いこと咀嚼できない。
     アスランにとってカガリはそれだけ特別で、誰に代わることのない人。
    「さ、パイロットスーツに着替えて来い」
    「は、はい」
     促されるように更衣室へと赴き、一人になったアスランは深く息を吐いた。
     まだ心臓が騒がしい。中々落ち着いてはくれず、どうにか深呼吸を繰り返すことで徐々に体の熱も引いていく。
     カガリに期待されているというだけで、体から自然と力が湧いてくる。
     生半可なことは元より好きじゃない。オーブ軍の戦力を上げるためなら、アスランの持てる知識と技術をいくらでも注いでやる。パイロットスーツに着替えると、視界に入った赤い石の存在に口角が緩む。
    「……きみの力になるよ」
     その為に自分は、この国にいる。石を手に取り掬い上げ、アスランは触れるだけの口付けを祈りのように捧げる。
     いつもより輝きを増した気がして、アスランは胸の中に大事にハウメアをしまい込んだ。



     模擬戦は互いに量産機であるムラサメ改を使用しての戦闘だ。エリカ・シモンズの指示により、アスランは戦闘を終える毎にOSを書き換えながら行っていた。様々な戦闘データやパターンを取りたいと事前に言われていたこともあり、今度は片腕を動かさずの戦闘だ。
    「次の者、前へーー」
     アスランの声を聞き、また新たにムラサメ改が進み出る。
     これで四機目か、と胸中でつぶやく。三機ともが違った戦い方をしてきたが、どの機体もアスランの乗るムラサメ改に傷一つ付けることができなかった。ちなみに三人ともがナチュラルのパイロットではあったが、腕は悪くない。それぞれ戦闘終了後にアスランが注意点を一言添えてやれば、誰もが真面目にうなずいてくれた。きっとまだまだ腕は伸びるだろう。
     やり甲斐のある模擬戦に、いつしか心は高揚しつつあった。
    「それではザラ一佐、次をお願いします」
    「了解です」
     エリカの「始め!」という掛け声と共に、相手のムラサメ改が一直線に機体を突っ込んでくる。
    「!?」
     ギョッとしてアスランが操縦レバーを後ろに引き、距離を取ろうと試みる。だが相手は予めそれを読んでいたかのように腰から模擬戦用のビームサーベルを抜き取り、思い切り腕を振った。
    「っ、なんて豪快な戦い方だ……!」
     こちらは片腕を使えない状態だ。思ったより四人目のパイロットは腕がある。油断していれば足元を掬われてしまうだろうと、アスランは突っ込んで来る相手の動きを利用しようとギリギリまで間合いを窺う。そうして相手のムラサメ改が再びサーベルを振りかぶったのを見計らい、腰を低くしてスライディングを決めてみせる。上手いこと足元をすり抜けられたアスランは、背中を見せたムラサメ改の後ろを取ろうと自身の腰からサーベルを抜き取った。キンッ、と甲高い音が響き、エリカの「そこまで!」という制止の声が場に響いた。
     どっと体から抜けていく緊張感に、アスランも気を緩める。間一髪のところで一本を取ったが、あのまま続けていたら万が一という場合も有り得た。いくらハンデを所持していたとはいえ、負けるつもりはなかったのだ。それが相手の大胆不敵な行動に、ついペースを乱されかけた。
     どんな相手だったのだろうと気に掛けたところで、相手のムラサメ改のコックピットが開く。
     ヘルメットを取った瞬間、視界に飛び込んできた金色にアスランは目を見開いた。
    「よっ!」
     ふわりと咲き誇る笑顔。しかしそれは、この場では最も見たくない顔である。
    「アスラン、おまえやっぱり強いよなぁ!ハンデたもあるし、いけるかなって思ったけど駄目だった!」
     カラッとした笑顔で豪快に笑うカガリ。悔しそうにこうすれば良かったと拳を握りしめるが、アスランはそれどころではない。
     カガリがいるなんて聞いていなかった。思わずエリカを睨み付けそうになり、冷静になれと頭を振る。
     大丈夫だ、見たところ怪我の一つもなさそうで、カガリはピンピンしている。今にもムラサメ改から下りてきてしまいそうなカガリに、そこでじっとしていろと叫びたくなった。
     どうして国家元首であるカガリが模擬戦に。仕事はどうした。護衛は付いてきているのか。きみがモビルスーツに乗る必要はどこにもないんだ。
     言いたいことは山ほどある。今すぐカガリの元に乗り込んで、叱ってやりたいほどだ。しかしアスランの脳裏には、とある記憶がフラッシュバックしていた。
     あれは第二次戦の、オーブ領海にて。
     カガリの乗る新型モビルスーツーーアカツキと交戦するシンのデスティニー。彼と対峙するカガリを見付けた瞬間、心臓が絞られるような痛みを感じた。
     後一歩のところでキラが駆け付けていなければ、アカツキは、カガリは、デスティニーに撃ち落とされていた。
     カガリを失いかけた恐怖に、体は素直に硬直した。怪我をしてモビルスーツもないアスランは、己の無力さをとくと思い知った。もしかしたらあの時何もできないまま、大切な人がいなくなる未来があったかもしれない。万が一にでもそんなことになっていたら、アスランは自分自身を悔やんでも悔やみきれなかっただろう。
     温もりのある世界が当たり前ではないことを、誰よりも知っていたはずなのに。それからのアスランは、カガリがモビルスーツに乗ろうとしたがるのを必死に止めてきた。腕が訛ってしまうとくちびるを尖らせては文句をぶつけられたが、そう易々と戦場に出てもらっては困る。
     今までは目を光らせて注意していたのに。
     こんなにも呆気なくアスランの指先をすり抜けるカガリに、鼓動はドクドクと嫌な音をたてる。
     カガリを失いたくない、絶対に嫌だ、戦場には出なくていい、ゲームじゃないんだ戦場は。
     呼吸が浅くなっていく。上手く整えようと試みるも、カガリが撃たれかけた場面が頭を過ぎる。
     もうあんな思いは二度とごめんだ。俺からカガリを取り上げないでくれーー!!
    「はぁ、はぁ……っ、はぁ……」
     鼻呼吸から口呼吸へと変わる。止まらない呼吸の速さに目の前がグラつき、上手いこと視線を定められなくなっていく。このままではマズイと理解しているのに、苦しさが上回り思考がまともに働かない。
    「アスラン!?おい、どうした!!」
     異変に気付いたらしいカガリの切羽詰まった声が、かろうじて耳に届いた。
     しかし涙で濡れ始めたアスランの視界には、カガリの姿は映らない。揺れ動く世界の中、アスランは必死にカガリへ向かって手を伸ばす。
    「おれ、おれはーー……」
     きみがいないと、ーー。
     プツンと途切れたアスランの世界。
     色のついていた景色が、真っ黒に塗り潰された。


    「アスラン!!」
    「っ……!?」
     ビクッと激しく身体を揺らせば、力強い温もりに包まれる。何が起きたのか分からないまま、衝動的にその温もりを受け入れていた。
    「びっくりさせやがって!!」
    「カ、ガリ……?」
     知っている香りが鼻を擽り、アスランの意識がようやく戻り始める。
     気を失ってしまったのかと、室内を見渡して気付く。ここはモルゲンレーテにある医務室だ。清潔感漂う空気の中、簡素なベッドが二つだけ置いてある。その一つにどうやら自分は寝かされていたらしく、いつの間にかパイロットスーツも脱がされていた。カガリも同様にスーツを着脱しており、首長服の上着を脱いだ状態でいる。臙脂色の着込まれた上着がない今、柔らかな感触が直に熱を通す。平時より体温が高い気がするが、カガリは大丈夫だろうか。ぼんやりとそんなことを考えていれば、体を離したカガリに真正面から顔を覗き込まれる。
    「大丈夫なのか、アスラン」
     硬い声の中に、今にも泣きそうなカガリの感情を掬い取る。ぐっと目元に力を入れて何かを我慢する様子の彼女に、アスランはゆっくりと細い体にもたれかかった。
    「……きみがここにいるから、大丈夫だ」
    「何も言わず模擬戦に参加して、悪かった。医師がアスランを見てくれて、過呼吸を起こしてたって言ったから……」
    「……」
     どうしてアスランが過呼吸を起こしたのか、カガリはその理由を察したのだろう。何も言わずアスランを胸に掻き抱き、もう一度「ごめん」と謝罪を口にした。
    「……だけど、私は守られるばかりは嫌なんだ。アスランにだけ負担を掛けたくない」
    「……うん」
    「でも今は、まだモビルスーツに乗ることはしない。……守りたい人を苦しめることは、したくないから」
     髪をすり抜けていくカガリの指先。優しく梳かれるようになでられて、アスランは心地良さに瞳を閉じた。
     気を失う直前、アスランの世界はモノクロに変化していた。なのに起きた今は、またしっかりと色の付いた世界に戻っている。
     それが何を意味するかは、当然ながら知っている。
     腕の中に抱き留めた存在こそが、アスランの世界で色なのだから。
    「……俺を一人にしないで」
     まるで子供のような我儘だ。それでも決して失いたくない人が、アスランにはできてしまった。
    「しないさ。それに私は、アスランを一番信用してるんだからな」
     確信を持って放たれる言葉は、凍りかけた心に熱を灯す。
     キサカに言われた言葉を改めてカガリ本人から聞けた喜びと、一人にしないよという頼もしさ。一人にしてもらっては困る。アスランが一緒に人生を歩んでいきたいと思ったのは、カガリだけなのだ。
    「……強くなる。もっと、カガリを守れるように」
    「充分強いさ。だけど無茶はするな。……ちゃんと私におまえの弱さを含めて抱き締めさせろ」
     強くなる包容と、心を揺さぶられる言葉の数々。
     カガリのまっすぐな気持ちは、いつでもアスランを救ってくれる。
     きみよりも強くなるのは、まだまだ先かもしれないけど。守らせてほしい、これからも。
     カガリの心音を聞きながら、ゆっくりと呼吸する。
     アスランが落ち着いて呼吸しているところを見たカガリが、優しくほほ笑む。

     そうしてまた一つ、アスランの世界に色が付いた。
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