店主は根無し草だ。
やがて訪れる大願の成就のため願いを集め、おばけずかんの試練を与える。願いを叶える人間の力と、ときに『おばけ』と呼ばれる妖怪たちの力。それがを集めるのが、店主の使命であった。
願いのためなら、日本全国津々浦々。古本屋を背負子に変え、可愛い相棒である図鑑坊と共にどこまでも。
「ここはいつ来ても変わんないな」
店主がここを訪れたのは二年ぶりだった。特段金を持たない店主の移動方法は基本的に徒歩しかないため、以前訪れた場所に行くのも一苦労だった。
山の中の、岩肌を削ってできた小さな社。今はもう訪れるモノも少ないのか、花が飾られることもない。その横に、地下へ通じる穴がある。人一人が屈んでようやく通れるくらいの大きさの穴で、奥からは湧き水と思われる透明な水が流れ出ている。
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