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    現パロ すれ違い サウ
    少しずつ書き足していきます(24/4/19加筆)

    タイトル未定買ったばかりの時はあんなにはしゃいで喜んで使っていたこのベットも、今は寝心地が悪くってしょうがない。最後に二人で寝たのっていつだったっけ。寝具に染み付いたかすかなデス・ライトの香りも、眠気を著しく妨害してきやがる。夜は調子が出ない。暗いことばかり考えてしまって、視界が狭くなる。おれをいつも奮い立たせてくれる勇ましきキャプテンの精神は、どうやら日中限定での活動だったようだ。気づいたら身体が芋虫のように丸まっていた。サンジは虫が嫌いだから、芋虫になったおれを見たら嫌われるかも。人間が虫になるなんてあり得ないのに。でも、サンジに嫌われたくなんてないな。今どこにいるんだよ。明かりもつけない部屋で一人広いベットに寝ていると、どうしようもない寂寥感に苛まれる。それもこれも、みんなサンジのせいだ。最近帰りが遅いし、せっかくのデートだって他の女と楽しそうに話すから。俺の話なんて上の空で、俺にも言ったことないような甘い言葉を、今日会ったばかりの見ず知らずの人間にかけるから。あまつさえ「君がいてくれたら何もいらないくらいだ」なんて。じゃあ、おれは。おれは一体どうなるんだ。彼女がお前のそばにいたら、おれはもういらないの?おれはこんなに好きなのに。おれってお前のなんなんだよ。そういえば、サンジから好きと言われたことも、愛してると囁かれたこともなかった。恋人になれたと浮かれていたのは、おれだけだったんだ。そりゃそうか。だって、相手がおれじゃあな。必死になって眠りに入ろうとしていた身体はいつのまにか起き上がって、リサイクルショップで買った能天気な柄のトラベルバックに荷物を押し込んでいた。彼とお揃いのキーホルダーは見ないことにした。

    最低限の着替えと、財布と、あとはスマホ周辺機器。おれの服ってなんでこんなにカラフルなんだよ。今の気持ちとまるきり真逆で、おれじゃない人間が買ったんじゃないかと錯覚する。この鮮やかな青色のシャツなんて、見ろよこれ。仕立てのいい生地に、胸元には名の知れたブランドのロゴが刺繍されていた。結構着回してるけど、質がいいからか全くと言っていいほど傷んでいない。このシャツは数ある服の中でも特にお気に入りで、これを着て彼と出かけるのは毎回楽しみで仕方がなかった。なんてったってこの服は、おれが初めてサンジからもらった誕生日プレゼントだったからだ。これ着ていろんなところに行ったな。一番最初は水族館で、水槽と服の色が合っていて良いなと、照れくさそうに褒めてくれたのを覚えている。それが嬉しくて、おれも誕生日に同じような青いシャツをプレゼントしたっけ。あの時、彼はどんな言葉をおれに伝えたのだったか。表情すら朧げで思い出せない。おれは彼の笑顔がなによりも大好きなはずなのに、ほんとうの笑顔を向けてくれた日なんてなかったんじゃないかと頭が重くなった。嘘つきのおれだって、人を傷つける嘘がよくないことは理解してるつもりだ。でも、あの時会った女への表情。おれはあんな笑顔向けられたことなかったと思う。いや、少しはあったのかもしれないが…今はどっちだっていい。ぐるぐる考えているうちに、おれの足は故郷行きの電車へと向かっていた。

    時間帯が中途半端なせいもあって、電車は人がまばらに乗ってる程度だった。誰も乗っていない車両まで歩き、手すり脇の端の席に座る。一度眠りを諦めた身体はなんとなく怠さがあって、このまま寝たら寝過ごしそうだった。忘れないように、トラベルバックは膝の上に乗せる。おれの故郷まではここから3時間もあれば着く。乗り換えは2回。次の停車駅まで時間があるので、少し眠ることにした。最悪寝過ごしてもなんとかなる路線だ。太ももにバックの重みを感じながら、おれはそこに顔を埋めるようにして眠った。



    サンジと出会ったのは、高校2年生の頃。共通の知人を通して行われた飲み会で、たまたま席が隣になったのがきっかけだった。
    はじめはそれぞれの知人と交わしていた会話も、料理の取り分けやら不規則な席の移動やらで少しずつ彼とも言葉を交わすようになり、気付いたらすっかり意気投合していた。おれがふざけながら話した内容に、あいつが軽く野次を飛ばすような軽快なやりとりが、初めて会ったとは思えないくらいの心地よさだった。まるで、長い間一緒に生活していたかのような安心感。こいつになら何を言っても返してくれると思えるような距離感。いつのまにかおれたちは昔からの親友のように、隣に並んで肩を組み合っていた。楽しい時間はあっという間で、友人たちへの挨拶もそこそこに二人で店を後にした。大人だったらこのまま二軒目とか行くんだろうな。おれたちはまだこどもで、それぞれの家族が我が子の帰りを家で待っているはずだ。名残惜しいけど、もう帰らなきゃ。でも、おれんちはどちらかというと放任主義だから、正直まだ帰らなくても何も言われない。こないだ同じ部活のメンバーと夜まで遊んだ時なんかは二つ返事でそいつの家でのお泊まり会に了承してくれた。残してきた友人たちを思い、一緒に連れ出せばよかったかなと考える。そういえば、サンジの家はどうなんだろう。もしまだ時間が許すというのなら、もう少しだけ一緒にいてもいいなあ。門限とかあるのかな。今日隣で飯を食うサンジを見ていて気付いたが、彼はなんだか所作に品があった。実は良いとこのおぼっちゃんだったりして。言葉遣い相当荒いけど…。フリルをたくさん纏った洋服を着てダンスパーティをするサンジを想像して吹き出しそうになった。傑作だ。おれの金持ちに対するイメージどうなってんだよ。

    「なあ」
    くだらないことを一人で考えていたら、突然サンジから声をかけられた。
    「へっ、何」
    「おれんち行くか?」
    思いもよらない提案に、おれは少し驚いた顔をした。
    「なんだその顔。難しい?」
    サンジのプライベートにさっそく興味を持ち始めていたおれは、驚き半分、嬉しさ半分という感じだった。もちろん行きたいに決まってる。
    「もちろん行く!」
    こういう時のおれは正直者なので、思ったことをそのまま口にした。サンジは唇を一瞬固く結んだと思ったらすぐに笑って、「すぐそこだから」と先に歩き出した。お前こそなんだその顔。笑いを堪えきれなくて、明らかに嬉しそうな顔をしていた。
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    タイトル未定買ったばかりの時はあんなにはしゃいで喜んで使っていたこのベットも、今は寝心地が悪くってしょうがない。最後に二人で寝たのっていつだったっけ。寝具に染み付いたかすかなデス・ライトの香りも、眠気を著しく妨害してきやがる。夜は調子が出ない。暗いことばかり考えてしまって、視界が狭くなる。おれをいつも奮い立たせてくれる勇ましきキャプテンの精神は、どうやら日中限定での活動だったようだ。気づいたら身体が芋虫のように丸まっていた。サンジは虫が嫌いだから、芋虫になったおれを見たら嫌われるかも。人間が虫になるなんてあり得ないのに。でも、サンジに嫌われたくなんてないな。今どこにいるんだよ。明かりもつけない部屋で一人広いベットに寝ていると、どうしようもない寂寥感に苛まれる。それもこれも、みんなサンジのせいだ。最近帰りが遅いし、せっかくのデートだって他の女と楽しそうに話すから。俺の話なんて上の空で、俺にも言ったことないような甘い言葉を、今日会ったばかりの見ず知らずの人間にかけるから。あまつさえ「君がいてくれたら何もいらないくらいだ」なんて。じゃあ、おれは。おれは一体どうなるんだ。彼女がお前のそばにいたら、おれはもういらないの?おれはこんなに好きなのに。おれってお前のなんなんだよ。そういえば、サンジから好きと言われたことも、愛してると囁かれたこともなかった。恋人になれたと浮かれていたのは、おれだけだったんだ。そりゃそうか。だって、相手がおれじゃあな。必死になって眠りに入ろうとしていた身体はいつのまにか起き上がって、リサイクルショップで買った能天気な柄のトラベルバックに荷物を押し込んでいた。彼とお揃いのキーホルダーは見ないことにした。
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