リビングからの物音で道門が目を覚ます、今日はアイツがあっちで寝ている日だからトイレか何かに起きたのだろうと特に気にもせずまた瞼を閉じる
すると足音がこちらの部屋に近づいてきて扉を開けてベッドまで近づいてくる
なんだなんだと思い様子を伺っていると、そのままベッドに上がり布団の中に入りこちらに背を向けて横になりだした
「ねぇ、寝ぼけてんの?今日は君はあっちでしょ」
そう声をかけると小さい声で「わるい」と返される
その声色から何か不安げな様子が読み取ることができた
「え、もしかして泣いてる? あ〜〜、怖い夢でもみた??」
それは面白い!と言わんばかりに笑い混じりに後ろから旬の顔を覗き見ようとするが、旬が布団に包まって顔を隠すので見ることができず不満を漏らす
「おーーい?なんか返せよ、つまんないな」
「…っ」
無理やり布団を捲ってやろうかと考えたが力勝負では旬に敵わないことはわかりきっているので早々と諦めて文句を言ってやる
「えー勘弁してよ、そんなに家族恋しいなら家帰ればいいじゃん」
「……っいまは、まだ、やることが残ってる…から…」
「……それで?」
「…ちょっとだけでいいから」
そう言って布団を掴む指に力を込めて背中をさらに丸めて居座ろうとする旬を試しに押してみてもピクリとも動かず
追い出すのを諦めた道門は溜息をつく
(これは重症だなあ)
「はぁ…御守りとか柄じゃないんだけど今回だけ特別ね」
情けない顔を見れないのは残念だが普段の生意気な態度と違い弱りきった姿に少しだけ気分が良くなったのでこの可哀想な奴を受け入れてやることにする
布団から少しだけはみ出ている旬の髪を指で梳かすように撫でてやるとそれに驚いたのかピクリと震えて身じろぎをする
触れた髪は汗でしっとりしていて相当酷く魘されていたというのが分かった
構わずにそのまま撫で続けているとその状況に気恥ずかしくなったのか小さな声で「やめろ」と抗議される
先ほどよりも落ち着いた声色にもう充分だろう思った道門は、撫でていた旬の髪を今度は無遠慮に揉みくちゃにしてポンポンと軽く叩いてからパッと手を離す
「…満足したならとっとと寝な」
いつもの物言いに僅かながら柔らかさを感じる声でそう言い終えると旬に背を向けて横になる
しばらくすると背後の旬がもぞもぞと動き、揉みくちゃにされた髪を軽く整えたあとに、ほんの少しだけ道門の方へ体を寄せて、また丸くなる
先程までの強張った雰囲気は感じられず大分落ち着いているように感じられた
(朝目が覚めたらいじり倒してやろう……)
(世話の焼けるヤツだ…… )
そう思いながら背中に伝わってくる温もりに眠気を誘われて道門は瞼を閉じた