育むもの ナギニ ケダモノの中には、人間や動物を育てる者がいるという。
その理由は孤独を埋めるためかもしれないし、大きくなってから食べるためかもしれない。
だがしかし、何かを育てるということは、そのケダモノが「親」の役割を持つことを意味する。
闇の森には外の世界に繋がる回廊がいくつかあるが。
その日、本体の姿でのんびりと散策を行っていたナギニは、そんな回廊のうちの一つの傍を通りかかった。
本当に通りかかっただけであり、そのまま通り過ぎるつもりだったが。
ふと、闇の森に似つかわしくない、おぎゃあおぎゃあという生命力に溢れた泣き声が聞こえて。ナギニは這うのをやめると、回廊に近づいて泣き声の元を探った。
回廊の傍には、一人の老婆が倒れていた。老婆からはすえた臭いがしており、瞳孔が開いてだらしなく舌が出ていることから、既にこと切れているのが一目でわかった。
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