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    M_D_210

    @M_D_210

    SSまとめ

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    M_D_210

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    ミラドル27話がマジで神回すぎたので自分なりに小説の形にしてみました

    ⚠️幻覚
    ⚠️過去とか色々捏造
    ⚠️知らんボスがいます

    ミラクルドクター☆ルイ一ジ先生 27話「ッ……」
     アジトの廊下、不気味な光が照らす廊下の壁に手をついて、黒い白衣を纏ったドクターマリオはフラフラと歩いていた。
     あの時。高熱を出して足元さえ覚束無いような状態でも尚立ち上がるドクタールイージに、ドクターマリオはとどめを刺すことができなかった。何故なのかは自分でもわからない。兄弟の情なんてもうどうでも良かったし、奴は倒すべき敵なのに。
    「く……」
     瞬間、酷い目眩に襲われて立ち止まる。最近このように身体を上手く動かせないことが増えた。寒気が酷い。それは彼の体がウィルスを拒絶しているからに他ならなかった。
    「………」
     立ち上がらねば。もう一度ドクタールイージの元へ行って、今度こそ確実に始末しなければ。そう思えば思うほど身体の気怠さは増し、ただ壁に手をついて次第に酷くなる目眩に耐える。
    と、突然廊下に声が響いた。

    「見ーちゃった」

     振り返ればそこにいたのはいつもの3匹、赤青黄のウィルストリオだった。
    「オマエ、ドクタールイージのこと見逃したんだって?」
     ニヤニヤと笑うレッドに、ドクターマリオは顔を顰めた。見られていたのか。
    「ウラギリだ〜、いけないんだぁ」
    「ボスが知ったらどう思うかな?」
    「待てよ、コイツがいなくなったらオレたちが幹部になれるかも?」
    「言いつけちゃおうぜ〜!」
    目に痛い原色と畳み掛ける声が頭を揺らし、マリオはさらに顔を歪める。
    「アレ?アレアレ?」
    「オマエ、もしかしてアタマ痛いの?」
    「やっぱりニンゲンだから?」

    「黙れ!!」

     ニヤニヤと笑いながら顔を覗き込んできたウィルス達を感情的に怒鳴りつける。耐え難い頭痛に思わず真っ黒なカプセルを投げつければ、ウィルストリオはワッと慌てて散っていった。
    「…そうだ、私ならウィルスの力も使いこなせる筈だ…なのに何故…!」
     日に日に身体を蝕む異変に、ドクターマリオの身体は既にボロボロだった。それでも植え付けられた忠誠心を支えにどうにか立ち上がる。

    「……!」

    ──突然、辺りを闇が覆った。
     黒い靄のような、酷く邪悪な雰囲気のする何かが…ドクターマリオの身体を取り巻いた。
     黒い靄はドクターマリオを咎めるように、ゆっくりと広がっていく。なぜドクタールイージを逃がした、と。言葉は発していないのに、そう言っているのがわかった。
    「それ、は……」
     ドクターマリオが言葉に詰まった瞬間、ド、と身体を針のような感覚が貫いた。はじめに流し込まれた時よりずっと多く、強く、早く、ウィルスが体内で増殖していく。

    「ぐ、あぁぁぁぁぁっ!!!」

     身体を丸ごと作り替えられるような苦痛に、ドクターマリオは絶叫した。

    ──────


    「やっと下がった…!」

     ドクタールイージは体温計を見て安堵の溜め息を吐いた。
     先日敵の攻撃をまともに食らい発熱して以来、しばらくは高熱で起き上がることもできなかった。何故あの日戦えたのか不思議なくらいだ。寝込んでいる間は患者さん達にも随分と心配を掛けてしまった。届いたお見舞いの山を見て思わず笑みを零し、後で何かお礼をしなきゃな、と思ってから…すぐにその表情は曇る。
    「兄さん……」
     前に戦った時、ドクターマリオは随分と苦しそうにしていた。洗脳の拒絶反応が出ていたのかもしれない。当然だ。彼は人間で、ウィルスではないのだ。
    『(大丈夫ワン!マリオはきっと帰ってくるワン!)』
    「オバ犬くん…」
     膝に飛び乗ってきたオバ犬に励まされ、ドクタールイージは大きく頷いた。
    「…うん、ボクが落ち込んでちゃダメだよね。ありがとう、オバ犬くん」
    『ワン!』
     もしあの時攻撃をやめたのがドクターマリオの意思だったのなら、完全に自我が消えてしまったわけではないのだろう。それならきっと助ける方法もあるはず。ドクタールイージは持ち前の前向きさで表情を明るくし、オバ犬の頭を撫でてやる。気分転換に日差しでも浴びようとカーテンを開けたが、今日は生憎の雨だった。けれどドクタールイージの気持ちは揺らがない。今日こそ兄さんを探しにいこう、そして説得するんだと決意した、その時。
    『(…!!マリオだワン!)』
    「え!?」
     突然ピンとしっぽを上げたオバ犬に思わず大きな声を上げてしまう。けれど驚いている暇は無い。街の方で大きな音が鳴り響き、ドクタールイージはビクリと肩を震わせた。
    「兄さん…!!」
     着替えもそこそこに、ドクタールイージは街へ向かって駆け出した。

    ──────


    「やあ、来たな。ドクタールイージ」
    「兄さん…!」

     やっと見つけたドクターマリオは、街外れの森に立っていた。
     ここに来るまでに体調を崩し倒れていた人々を思い出し、ドクタールイージはやりきれない感情で顔を歪める。
    「兄さん、お願い…正気に戻って。兄さんは皆を苦しめて喜ぶような人じゃない…!」
    「はぁ…またそれか。私はもう人々を治すなんてくだらないことはやめたんだ。人間はウィルスの餌となり住処となるための存在だ、そうだろう?」
    「っ……!」
     その酷く冷たい声色には、前回の動揺は全く残っていない。どこか寒気を感じて、ドクタールイージは言葉を続けることができなかった。
    『(とにかくマリオを止めるワン!ルイージ、変身だワン!)』
    「うん…!」

    「“ドクター・ミラクルチェンジ!”」

     カプセル型のアイテムを開いて叫べば、溢れ出した緑色の光が辺りに広がる。白衣が身体を包み、額帯鏡が現れ、カラフルなカプセルが衣装を形作っていく。やがて光が収まり、ミラクルドクターに変身したドクタールイージが地面に降り立つ。
     変身した姿を見たドクターマリオは嘲るように笑って言った。
    「今日は私が直接相手してやろう」
    「……!!」
     ドクタールイージは身構える。ドクターマリオは強い。それでもどうしても止めなければいけない。助けなければいけないのだ。
    『(気をつけるワン!今のマリオはなんだか今までと違う気がするワン…!)』
    「えっ…!?それってどういう…うわあぁっ!?」
     次の瞬間、ドクタールイージは大きく吹き飛ばされていた。間髪入れず襲ってくる次の攻撃をどうにか避けて体勢を立て直す。
     速い。前に戦った時とは比べ物にならない速さだ。ドクタールイージは続けざまに飛んでくる攻撃を防ぐので手一杯だった。反撃の隙が無い。
    「その程度か?」
    「!!ミラクルカプセルっ…!」
     すぐさま大量の黒いカプセルが襲いかかってくる。咄嗟にカプセルをぶつけて打ち消すが、落としきれなかったカプセルがドクタールイージの身を打った。
    「ミラクルバンデージ!」
     長い包帯がドクターマリオに向かって伸び、その手足を捉える。
    「お願い兄さん、話を…うわっ!?」
     ドクターマリオが軽く腕を引けば、ドクタールイージの身体が浮く。反対に包帯に引っ張られ、ドクタールイージはそのまま地面に叩きつけられた。
    「うぐ…!!」
    「弱いな。私への攻撃を躊躇っているのか?」
    「っ…ミラクルカプセル!」
     咄嗟に放ったカプセルも、ドクターマリオの手元に現れたシーツによって呆気なく跳ね返される。

    「うわあぁっ!!」

     自分の放ったカプセルがドクタールイージに降り注いだ。ドクタールイージはどうにか躱して距離を取ったが、既に体力はかなり削られていた。駄目だ。普通の攻撃じゃとても歯が立たない。
    『(ルイージ!浄化するワン!)』
    「うん…!」
     ドクタールイージの手元に大きなカプセルが現れる。ウィルスを浄化するための力だ。これでドクターマリオのウィルスを浄化できれば…!

    「“ミラクル・ヒーリング!!”」

     カプセルから溢れ出した美しい光がドクターマリオを包み込む。
    「…ははは、」
     光の中でドクターマリオが薄く笑う。

    ──次の瞬間、その力は跡形もなく散っていた。

    「っ……!?」
    『(そんな、ミラクル・ヒーリングが効かないなんて…どうしたらいいのかワン…!?)』
    「もう終わりか?」
     力を使い果たしたドクタールイージは膝を着く。それを見たドクターマリオは失望したように息を吐いた。
    「はぁ、呆気ないな。君ならもう少し楽しませてくれると思っていたんだが。」
     ドクターマリオが一歩ずつ歩み寄ってくる。と、ドクタールイージは異変に気づく。足元が覚束無い。よく見れば目の焦点すら上手く合っていないようにも見える。
     ぞわり。不意に恐ろしい可能性が浮かび、背筋を冷たい汗が伝った。
    「ミラクルスコープッ…!」
     腕を伸ばしてそう叫ぶ。現れた巨大な聴診器は、普段なら敵の弱点を見つけるための道具だが…今は。

    「……!!」

     ドクタールイージは思わず絶句する。ドクターマリオの身体は、立っているのが不思議なほどボロボロだった。全身をウィルスに蝕まれ、信じ難い程の高熱が今も彼を苦しめている。
    「兄さん、その身体…」
    「ああ、良いだろう?ボスの計らいでね、新たな力を授かったんだ」
    「新たな力って…まさかウィルスの…!」
    「お喋りはもういいだろう」
     刹那、重い拳が振り下ろされる。ドクタールイージは咄嗟に飛び上がりその拳を避けた。
    「…!はは、まだそんな力があったのか」
    「お願い兄さん、そんな状態で戦い続けたら…!」
     楽しげに笑うドクターマリオに、ドクタールイージは悲痛な声を上げた。
     もう体力は殆ど尽きかけている。けれどまだ倒れられない。このままではドクターマリオは…
    「兄さん!兄さん、お願いもうやめて!死んじゃうよ!!」
    「ははは!余所見なんてしていてもいいのか!?」
     ドクタールイージの必死の呼びかけは、ドクターマリオに届かない。
     高熱、発汗、震え。見るからに異常な状態なのに、ドクターマリオは至って楽しそうに鋭い攻撃を繰り出してくる。
     ドクタールイージは懸命に避けるが、蓄積されたダメージがそれを許さなかった。激しい攻撃に押されて体勢が崩れる。ドクターマリオはその瞬間を見逃さなかった。

    「がはっ…!?」

     電気を纏った掌底が、ドクタールイージの胸に叩き込まれる。ぐらりと意識が揺れた次の瞬間、ドクタールイージは木の幹へ叩きつけられていた。
    ずるり、ドクタールイージの身体は無抵抗に地面へと落ち、水溜まりが飛沫を散らす。顔を上げれば、すぐ傍でドクターマリオが見下ろしていた。
    「諦めろ。お前は私に勝てない」
     黒い電流がドクターマリオの手でバチバチと音を立てている。その声色に、見知った彼の優しさは一切無い。必死に呼びかけるオバ犬の鳴き声が遠くで聞こえる。
    「(こんなの…どうしたら……)」
     圧倒的な力で捩じ伏せられ、立ち上がる気力はもう残されていなかった。ここで倒れる訳にはいかない。けれど、どうしたって勝ち目が見えない。ドクタールイージは絶望に目を閉じた。

    ──ふと、ある記憶が脳裏に浮かんだ。まだ幼かった日の記憶。風邪をひいた時、一生懸命看病してくれた兄の姿。
     拙い知識で風邪の治し方を必死に調べ、少しでも早く良くなるようにずっと付きっきりでいてくれたマリオ。もうルイージが病気に苦しめられないようにお医者さんになると約束してくれて…そして、本当になってしまった。
    そうだ、あの時兄さんがずっと傍にいてくれたから。だからボクも医者になりたいって思ったんだ。

    「諦め、ない……」
    「何…?」

     ぐ、と腕に力を込めれば、ドクターマリオは僅かに動揺した。
     既に全身はボロボロだ。それでも、立ち上がらなければならない。ボクがここで諦めたら、兄さんを助けられない!

    「今ボクがここにいるのは、兄さんのおかげなんだ…!」

     真っ直ぐに上げた顔は、目の前のドクターマリオを救うという強い意志で満ちていた。

    「だから、今度は…ボクが兄さんを治すんだ!」

    ──瞬間、強い光が迸った。

    「なッ…!?」
     眩しさにドクターマリオが怯む。同時にオバ犬が驚いた鳴き声を上げた。
    『(凄いミラクルパワーだワン…!)』
    「……! 」
     眩いばかりの光は、やがて注射器のようなアイテムを形作った。ドクタールイージは立ち上がる。不思議と身体が軽い。

    『(ルイージ!)』
    「…うん!」

     何をすれば良いのかはもうわかっていた。ドクタールイージは注射器を掲げ、そして叫んだ。

    「“ワンダーシリンジ!輝け、生命の力!”」

     巨大化した注射器を七色の光が満たす。ドクタールイージはドクターマリオを真っ直ぐに見つめ、そして叫んだ。

    「“ミラキュラス・リカバリー!!”」

     溢れ出した七色の光が、ドクターマリオを包んだ。
    黒い靄がドクターマリオの身体から飛び出し、次々に浄化されてゆく。
    「ア、アァァァァァッ!!!!」

    ──やがて光は収まり、辺りには静けさが残った。

     …不意に、ドクタールイージの変身が解けた。とうに限界を超えた身体は、そのままふらりと力を失う。
    『(ルイージ!)』
     オバ犬が駆け寄るより先に、がしりとその身体を支える者があった。薄く目を開けたドクタールイージは、心底安堵したように顔を綻ばせる。

    「兄さん…」
    「…すまない、心配をかけたな」

     そこにいたドクターマリオは、間違いなくいつもの兄だった。その手に過剰な熱はもう無く、ただ普段のように温かい手がドクタールイージを支えていた。

    「兄さん、身体はもう大丈夫…?」
    「ああ、お前のお陰でな」
    「良かったぁ……」
     ドクターマリオが微笑んだのを見て、ドクタールイージも心底安堵したように笑った。

    「…ありがとう、ルイージ」

     そのまま寝息を立て始めたドクタールイージを、ドクターマリオは僅かに震える腕でぎゅっと抱き寄せる。

    「すまない……」

     いつの間にか雨は止み、雲の隙間からは光が差し込んでいた。
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